【 アウトローですか? 】
◆czxS/EpN86
108 :No.26 アウトローですか? 1/3 ◇czxS/EpN86:08/02/03 23:26:48 ID:sYxQu+th
子供の頃、世界はいつもキラキラと輝いていて、およそ自分にできない事なんて、何にもないと思っていた。
教師だって、親だって、いつも俺たちにそう言っていた。
でも歳月が立ち、成長していくに連れて、あれは良くない、だとか、これは駄目だ、とか言われ始めて。
社会にはルールがある。だから俺たちも、それに従って生きなくてはならないと説かれるようになって。
いつしか、サンタは父親だと言う事を知り。
赤ちゃんは、こうのとりが運ぶわけではない事を知り。
世の中には、できる事と出来ない事があることを知り。
夢を追う事を、馬鹿らしい、なんて思ってしまうような、つまらない人間になってしまった。
かつて自分の信じていた物を否定する事に、何の抵抗も感じなくなってしまった自分を、嘲りながら。
本当に、このまま生きていって、俺は満足なのか?
やりたかった事一つしないで、これで良かったなんて自分に嘘をつくつもりか?
俺の中ではとっくに答えなんて、決まってる。
置き忘れてきた、俺のささやかな夢。
「ふくらみかけの……裸が見たい…!」
ロリコンとしての、ただ一つの夢を。
「はぁはぁはぁ…クソッ、この辺だった…よなぁ…?」
上から下まで黒ずくめの完全武装。そして手ブレ補正つき一眼レフ。
やっぱり思い出は綺麗に残したいよね。
「よし、ここだ、この壁の向こうが…女湯だ…!」
エベレストを征服する登山家ってのは、得てしてこんな気分なんじゃないだろうか。
「目標を…銭湯に入れてウオッチ、目標を銭湯に入れてウオッチ……!」
苦しい、辛い、もう駄目だ。弱音が出そうになる……。
でも、きっと、素晴らしい世界が、俺を待ってるはずだから。
109 :No.26 アウトローですか? 2/3 ◇czxS/EpN86:08/02/03 23:27:15 ID:sYxQu+th
(ええい、退けババァ、見えぬ!見えぬわ!)
大きな問題が二つほど発生していた。
苦労の末壁を征圧した俺、だが、目の前に見えるのは魚屋のおばちゃんみたいな熟女だけだったこと。
もう一つの大問題は、それを見てもう一人の俺がお元気になられた事だ。
特に後者なんて、ついさっきまで事実を認めたくなかったくらいの大失態である。
だがしかし、俺の指は無意識のうちにシャッターを切っている。
高精細画像で記録されていく、熟女From魚屋。
(湯煙が…またいい感じにチラリズムを……はっ!?)
「目の前で見える物に満足するような……俺はそんな男だったのか…?」
いや、違う、俺は違いの分かる男なのだ……NOと言えちゃう日本人のはずだ。
お前が欲しかったのはあんな出荷できそうな肉体か?
否!断じて否!
このままではいけない。
俺はポイントを変える事で、熟女が生み出す連鎖を断ち切ることにした。
(……?)
異変はすぐに訪れた。
目の前には、少女の裸体。まさに生きる芸術。存在自体が奇跡のような、素晴らしい裸体だ。
なのに。
なのに。
どうしてこんなにも物足りないのだ…?
俺は変になってしまったのだろうか?熟女の方がいいだなんて、俺は変態になってしまったのか?
「そうか…分かったぞ…! あの熟女…ただの熟女じゃない…!」
魅了〈チャーム〉の使い手だとか…。
実は変身キャンディで熟女に変装した小学生だったとか。
水につかると幼女に戻るとか!
110 :No.26 アウトローですか? 3/3 ◇czxS/EpN86:08/02/03 23:27:42 ID:sYxQu+th
こ れ だ !
俺はさきほどのポイントに戻る事にした。
これは是非最後まで見届けなくては。
悲鳴をあげる体に鞭を打って、なんとかさきほどのポイントに戻ることに成功した。
「馬鹿な……!?」
先ほどまで熟女だったのが、少女に変わっているではないか。
「そんな……こんなことが…?」
やはり、俺の推測は間違ってはいなかったのだ。
その時である。
変身を解除した少女が、こちらを見たのだ。
(目が合った!)
「きゃぁーーーーーぁっ!!」
まずい!
逃げなければ、逃げなければ!
逃げ……。
ふわっ、と意識が遠のいた。
目が覚めると、そこは警察署だった。
俺はどうやら、逃げ損なってよじ登っていた壁から落下し、そのまま気を失ってしまったらしい。
なんとも締まりの悪い事だ。
落下のショックでカメラは壊れてしまったし、俺は警察に怒られ、銭湯のオヤジさんに怒られ、親に怒られ、
散々怒られまくった。
あの日、社会のルールを破った俺の前に現れた、変身魔法少女(推定)
結局、俺はあの熟女の手のひらで踊らされた、哀れなマリオネットに過ぎなかったのだ。
あれから数年たち、あの銭湯は潰れてしまった。
しかし、少女は今もどこかで、俺のような人間を懲らしめるため、戦っているのかもしれない。
―了―