【 規則破不 】
◆CoNgr1T30M




71 :No.17 規則破不 1/4 ◇CoNgr1T30M:08/02/03 20:35:40 ID:sYxQu+th
 まだ日差しの暑い午後。ようやく不破は約束の喫茶店に到着した。昨日、いきなり電話がかかりこの喫茶店に呼び出された。
 本来なら不躾なことだが電話の主があまりにも意外な人物で、その日は仕事も無かったこともあり、その申し出を了承した。
「久し振りだな不破」
 奥の席には学生時代を共にした城咲が座っていた。
「おお、久し振り。それより急にどうしたんだ」
 二人の再会は実に十年振り、その間二人に交流はなかった。
「ふふ、それよりお前今何してるんだ?」
 城咲の問い。これを不破は誇る様に返す。
「裁判官さ。お前はどうなんだよ?」
 不破は昔から正義感が強く努力家だった。そんな不破は昔から裁判官に憧れていたのだ。
「……いや、今は何も」
 渋い顔をする城咲。自分から仕事の話を振ってきたくせにプー太郎だなんて……。不破は内心呆れていた。
「で、今日は何さ?」
 城咲は学生時代、成績優秀だっただけに不破は期待外れ感を否めない。
「そうだ、本題なんだが。……この国を転覆させないか?」
 不破は意味が分からず惚ける。それを余所に城咲は語り始める。

72 :No.17 規則破不 2/4 ◇CoNgr1T30M:08/02/03 20:36:15 ID:sYxQu+th
「不破よ、確かにこの国は豊かで平和で、世界的に見ても先進国だ。
けれどそれは聖者が唱える"真の豊か"ではないことは明白。例を出すなら国の沿岸には軍隊が常駐し敵襲に備え、貧民街は番地すら与えられず社会的に隠蔽され無法者の楽園と化し、都市の政治屋はこぞって汚職……。
それでも大多数の無知な国民は幸せに暮らしている。残りの国民はというと甘い汁を吸う官僚や高所得者、極貧の社会不適合者、そして疑問を持ちつつも力なき者たち。
お前もその疑問を持つ弱者のはずだ。この強者が弱者を搾取するという腐ったルールを変えないか?」
 演説じみた長い台詞は俺たちならできるという言葉で結ばれていた。
……。不破は呆れつつも少しだけ共感していた。確かに昔、城咲と一緒に正義に燃えていたため気持ちは分からないわけではない。
「なるほど……ところでそれだけ言うなら何か計画はあるのか?」
 城咲は不破のその言葉を是と受け取ったのか概要を話し始める。
「あぁ、もうすでに同志をレジスタンスとして組んでいる。さらに今夜、政治の中枢機関に突撃する予定だ。今夜、革命は成る」
 不破は疑問をそのまま口にした。
「そこまで準備が出来ているならなぜ俺に言う必要があるんだ? そこまでリスクを負って俺を引き入れる意味はあるのか?」

73 :No.17 規則破不 3/4 ◇CoNgr1T30M:08/02/03 20:36:41 ID:sYxQu+th
 城咲は照れくさそうにこう答える。
「お前は優秀で懸命だ。お前が居てくれれば革命後の新政府はきっと成功する」
 城咲の目にはアツい何かがあった。
「けれど俺が警察とかだったらどうするつもりだったんだ?」
 不破は冗談混じりに言う。
「お、おうお前は優秀だったからそれも考えた。だから最初に職業を聞いたんだ」
 だから自分は無職にも関わらず、職を聞いてきたのかと不破は納得する。
「で、どうだ? やってくれるのか?」
「まぁ、そこまで言うならな。組織とかあるんだろ? それの連絡先っつーか教えてくれよ」
 ご丁寧に名刺を渡してくる城咲。本当に革命を起こせるのか心配になってきた。が、武力は申し分なく、国の警備くらいなら軽く破れるそうだ。
「うんうん、不破が居れば百人力。俺が大統領で不破が秘書。あっ、秘書って言っても俺の右腕みたいなもんだからさっ! それで二人っきりの部屋で……不破、好きだ付き合ってくれ」
 唐突すぎる告白。昔からホモっ気があるとは思っていたがまさかガチホモだなんて……年月は人を変えるなぁと思う不破。

74 :No.17 規則破不 4/4 ◇CoNgr1T30M:08/02/03 20:37:15 ID:sYxQu+th
「実はこの計画にお前を誘ったのもこの為なんだ。さぁ、新天地へ行こうか不破」
 流石に尻の貞操が危ない。不破は魔法の呪文なる言葉を言い放つ。
「えー、城咲文哉。国家反逆罪で逮捕します。ついでに強姦未遂? とか諸々で」
 かしゃりと手錠をかける。城咲は釈然としない……むしろ驚きで惚けていた。
「あぁ、俺さ。実は秘密警察なんだ。工作機関みたいなモンなんだよ。だから逮捕ね。OK?」
 前代未聞の国家転覆の大革命計画は運の悪い男の恋心によって静かに幕を閉じた。

 ちなみに社会のルールを賢明に守った不破則規はその後、昇進し、美人の奥さんを貰い。人生の勝ち組としてマイホームを建て子供二人の計四人で幸せに暮らしたとさ。





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