9 :No.03 価値 1/2 ◇pxtUOeh2oI:08/01/26 17:39:35 ID:19pLuUKv
私の胸は、男にしゃぶられていた。
こんな様子を見ていると、男はみなマザコンだということは正しいと感じる。
男は飽きる気配もなく舐め続けていた。
男は三十代、特に太っているわけでもないし、顔も悪くはない。モテモテだとは思えないが、
女に困らない程度の甲斐性はあるように見える。そもそも妻子がいるという話だ。
そんな男がここにいるのは、きっと女子高生好きなのだろう。お金を出してまで、私を買うのだから。
私は、胸をむさぼり続ける男を観察しつつ言った。
「キスして……」
弱々しく感じている声を装い、男を誘う。いつまで舐め続けるのか興味はあったが、
援助交際という仕事の中で、体は唯一の資本である。自由に舐めさせて、変質しては困る。
長いキスを終えた。べとべとになった口を離しつつ見た男の顔は、気持ちよかっただろうとでも言いたげだった。
男は、私の足を広げると、いよいよとばかりに股に顔をうずめる。
「気持ちいい?」
愛液の滲んできたあそこを見て、私が感じていると思ったのだろう。男は鼻息荒く、私に聞いた。
「もっと」
吐息をまじえ言った。答えにはなっていない、だが男の望んでいる言葉であるはずだ。
好きでもない男に舐められ感じるとでも、本当に思っているのだろうか?
濡れているのはただの生理現象であって、なにかしらの感覚を抱くようなことではない。
「そろそろ入れて」
こちらから誘う。これは男に自分が欲されてると思わせる為でもあり、私の為でもある。
前に男の自由にさせていたとき、流れのままにゴムを付けずに入れられそうになったことがあった。
私はまだ子供を産むつもりも、高校を止めるつもりもない。だから主導権を渡すわけにはいかない。
男にゴムを付けることを促す。早く、やさしく、さもその男を求めているように。
10 :No.03 価値 2/2 ◇pxtUOeh2oI:08/01/26 17:40:12 ID:19pLuUKv
男が私の体を覆った。私の体に異物が入る。気持ちが悪い。
「気持ちいいか? どうだ?」
体を揺らし、声を荒げ、男は言った。きっと返答は求めていない。望んでいるのは支配された者の声。
「あッ!」
大げさな声を出し、男にかかった手に力を込める。さも感じているように。
男は体を大きく揺すった。痛い。だがそれを言ってはいけない。まだ代金を貰っていないから。
男を萎えさせるようなことは極力、慎まなければならない。
私はどこかで聞いた言葉を思い出していた。SEXに没頭することはできない。
『つらいから仕事なんだ。楽しいことは仕事じゃない』
そう、これは仕事であり、この男は客、そして私は商品だった。つらいことも我慢しなければならない。
「いいか? いいだろ? んっ?」
「いいっ!」
絞りだした喘ぎ声とは裏腹に、私は、また別の言葉を思い出していた。
学校の担任、まだ若く頼りない先生の言ったセリフ。きっと童貞だと噂されている。
『自分の体を大事にしろよ。援助交際なんてしたら、後で絶対に後悔するからな』
何かの講習のときに言っていた。青いセリフだとしか思えなかった。
「あん、あー」
自分の体の価値がわかるから、この仕事をしているのだ。
繁華街を歩いていた。今日の成果は五万円。一枚はサービスだった。大人は見栄っ張りだ。
この五万円にどれだけの価値があるのか? 新しいケータイ、何枚かの服、ブランドのバッグには足りない。
どこかで百円で救える命があると聞いた、五百人分。それらと同じ価値のある女子高生を抱くという権利。
くだらない。けれども、欲しい人がいるのならば売ろう。どうせ誰にも迷惑は掛からない。
ビルのオーロラビジョンに映画の宣伝が流れた。流行りの純愛映画らしい。
愛ってなんだろうと思う。みんなそれが存在しないことを認めたくないのだろう。
だから本を読み、映画を見る。いつかは自分が主人公になれるようにと願って。子供が魔法の世界に憧れるように。
本屋に入る。入口には若々しく積まれた本が並ぶ。恋愛と青春を推奨するような数々の本。
青春という言葉が嫌いだった。それを終えた大人が、子供に夢を押し付ける言葉だから。
私もいつか大人になる。そのとき私は、今を後悔するだろうか。それとも、戻りたいと思うだろうか。