【 君は美しい 】
◆CYR3fna/uw




126 :NO.31 君は美しい1/2 ◇CYR3fna/uw :08/01/14 01:21:21 ID:GNVBbaTt
 ある所に美しい女性と使用人がいた。
その女性と使用人は仲むずましく立場は違えどお互いを愛し合っていた。
無論周囲の反対は凄まじかったが二人は決してそれに負けることなく周囲を説得続けた。
長い間の説得によりようやく父親が折れ二人は晴れて付き合うことが許された。
「ようやく、あなたと一緒にいられるのね」
「ええ、ようやく、ですね」
 二人は喜び抱き合う。
 そんなある日事件はおきた。
家が火事となり女性は巻き込まれる。
命に別状はなかったが顔半分に火傷をおってしまった。
火傷は酷く、皮膚移植しても元には戻らないほどである。
 病院で目覚めた女性はショックを受けて彼が来ても決して合おうとしない。
何度も彼が尋ねるうちにようやく仕切りカーテン越しに会話するようになった。
「大丈夫です、どんなになっても私の気持ちは変わりません」
 彼が何回そう言っても女性は決して受け容れない。
「そんなことはないわ、あなたも私の顔を見ればきっと気が変わるわ」
 枕に顔を伏せて泣く。
それが心配になり彼が立ち上がり仕切りカーテンを開こうとする。
その気配に彼女は勘付いた。
「お願い開けないで、それとお願いもうこないで。今の私は美しかった私じゃない。あなたの愛してくれた私じゃないのよ! だからお願い」
 愛しい彼女の涙声による懇願。
彼は手の爪が掌に食い込まんというくらい強く握り締める。
そしてこれ以上ここにいることが彼女を悲しませると分かるとその場を立ち去る。
 それから何日もして見舞いに来た母親に彼女は告げる。
「ねぇ、彼に私と別れるように言って。私は気にしないから。こんな火傷後の酷い女なんて彼にふさわしくない。私はもういい……」
 元々二人の交際に賛成していた母親は考え直さないかと言ったが彼女は頑なに否定する。
彼女の顔を見ればすでに生気はなかった。
仕方なく母親は家に帰って働いている使用人の彼を呼び止めその事を告げる。

127 :NO.31 君は美しい2/2 ◇CYR3fna/uw:08/01/14 01:21:42 ID:GNVBbaTt
彼は驚き、さらに彼女に生きる気力がない事を知り思案していたことを話す。
「これは奥様や旦那様に迷惑をかけることになります」
 そう言って母親の耳元で声を小さくして話す。
母親ははっとなって彼の顔を見返す。
「私はお嬢様が好きです。そのお嬢様のためなら後悔はしません」
 母親はそれを聞き父親に話す。
父親はそれを聞いて腰を抜かさんばかりに飛び上がる。
だが娘の幸せのためにそれを許可した。
 それから三日後彼が彼女の病室を訪ねる。
いつものように彼女は拒むが彼はそれを物怖じせず仕切りカーテンを開ける。
「お願い、見ないでよ!!」
 ヒステリック気味叫びカーテンの開く音のした反対側を向く。
「大丈夫です、お嬢様私を見てください」
 その声に戸惑いながらも彼の方を向き、彼女は驚愕する。
彼の目の所に包帯がしてある。
「見てくれましたか? 大丈夫です私の中では永遠に美しいままのお嬢様です」
そういって手探りながらベッドに近寄る。
「私は後悔などしておりません、お嬢様の側にいられるのならばこの目は、惜しくない」
 ただただ彼女は涙する。
「だからお嬢様、安心して下さい。たとえみんなが離れてもこの私はあなたの側にいます」
 ベッドに足を取られ、彼は転び彼女のベットに顔を埋める。
その頭をやさしく彼女は抱く。
「馬鹿ね私は、私のためにこんなことして。ホントに、ホントに……」
 彼女は涙を流す。
自分のせいで彼を失明させたことを、そして彼を信じられなかった自分の愚かさに。
「私は幸せ者ね、こんなに醜い顔になっても彼は受け容れてくれる」
 彼女は彼の頭を抱きしめ、彼は彼女の体を抱きしめる。
お互い二度とはなれぬように。



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