【 三角のカタチ 】
◆/YI2FnXeqA




45 :No.11 三角のカタチ 1/3 ◇/YI2FnXeqA:08/01/06 22:07:46 ID:gp3+6sJH
朝起きて、最初に何をしますか?

小学校のころ流行ったプロフィールのまわしあい。親友がまわしてくれた紙の中に、恋をしている自分をみつけた。
『朝起きて、最初に何をしますか?』

高校生にもなって、小学生のころを思い出すように夢を見たのだ。
「おはよう、ねぇ」
「なんだよ朝から電話してきて、今日デートだったっけ?」
「ううん……ちょっと話したくって。声がききたいなー、って。
ところでさ、今日、夢みなかった?」
「見てないよ、お前は」
「……普通に、私とコウ君がデートする夢」
「嘘だろ、お前は何かにつけてデートだな」
「あはは、ごめんね……でも、コウ君のこと大好きだから」
「あっそ、声聴けてよかったな。片思いだったら土曜の朝っぱらから電話できないよな?」
彼はいやみったらしく意地悪を言う。そんなところが可愛い、これは恋人同士の爪を出したじゃれあいなのだ。嘘を付き合ってごろごろする、爪を立てあって愛を確かめている。
「うん、ありがとう、また電話する」
「あっそ、もう起こすなよ」

46 :No.11 三角のカタチ 2/3 ◇/YI2FnXeqA:08/01/06 22:08:10 ID:gp3+6sJH
「……おい、紺野?」
「康介君?おはよう、意外と朝起きるの早いんだね」
「いや、昨日間違えて風呂場で寝ちまったからな」
「小学生みたいで康介君らしいね、授業中は寝てばかりだけど」
「うっせ、女のお前には運動部の辛さなんてわかんねーだろーよ」
相変わらず紺野はコロコロ笑う。こいつ冗談が軽いから話していて気がらくだ。
さっきのアカリの質問、紺野だったらなんて答えるだろうか
「それで、珍しく朝起きてのこの電話はいかようで?」
「あぁ、紺野さ……今日、夢見た?」
「夢?みないけど、どうかしたの?」
アカリだって嘘をついたんだ、俺だって嘘のひとつやひとつくらい、別に悪いことじゃあないだろう。
「じゃあ、紺野だったらどんな夢を見たい?どうせお嬢様はお菓子の家だろ?」
「うーんと、ね。アカリちゃんと二人で手をつないでピクニックにいく。それだけでいいわ、他はなんもいらない」
からかいをものともしないほどに、紺野はいま、夢を見ているのだ。
俺との電話など無いかの用に、アカリとのピクニックを想像して、幸せに浸っている。
「女は妄想で夢を見られるからいいよな、それじゃ」
「ぁ、うん……?じゃあね」

47 :No.11 三角のカタチ 3/3 ◇/YI2FnXeqA:08/01/06 22:08:35 ID:gp3+6sJH
「ねぇアカリ、今電話大丈夫?」
「どうしたのこんな朝早く!何かあった?」
「ううん別に……ただ、電話っていいな。って思って」
「普段は『機械なんて苦手だー!』ってメールも返してくれないくせに」
でも、ちゃんと読んでるからね。
「うん、ごめんね。どうしても、うまく打てなくって」
「そんなの自分から練習しなきゃ上手くならないわ、練習、練習!」
「ところで、あのさアカリ。夢、見た?」
あれ、聞こえなかったのかな。
「ねぇアカリ、もしもし、聞こえる?」
「うん大丈夫、聞こえてるよ」
「じゃあさ、今日、夢見たかな?アカリって普段どんな夢見るのか知りたくて」
「……コウ君が、紺野さんと手をつないでピクニックに行く夢」
アカリは私を、『紺野さん』とは呼ばないはずなのに
「……ううんごめんいまのはう、そ。夢なんて見ないわよ、毎日ぐっすり健康だけがとりえの私だもの!」
「そんなものかな、元気なのはいいことだけど、夢見るのだって楽しいよ」
「紺野はやっぱりお嬢様だもんね、女の子らしいのってうらやましいわ」
……そう、所詮は女の子。
私は女の子だけれど、貴女に夢見たっていいと思う。
「そういえば、小学校のころの紺野のプロフィールを見つけたの」
「懐かしい、よくそんなもの残ってたね」
「だって私たち親友じゃない、ずうっと持っているわ。友達でいましょう」
えぇ、ずっとずっと、友達でいましょう……。



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