【 私からの感謝状 】
◆CoNgr1T30M




40 名前:No.12 私からの感謝状 1/3 ◇CoNgr1T30M 投稿日:07/12/30 23:17:25 ID:Sc9eEBrb
 寒い。冷え込んだ朝、寝不足の頭をゆっくりと起動させて布団から這い出る。他人から見たらその様はきっと芋虫みたいなのだろうな。そんな事をぼんやり考える。
「五時か……。やけに早く起きたな」
 いつも寝坊してばかりの自分にしては珍しく早く起きた。それにしても頭が痛い。でも昨日は酒も飲んだりしていない……。まぁ寝不足だろう。
 まぁ、今日は休みだ。一週間で最も甘美な二日間。独り者の自分は誰に気にする事なくごろごろ過ごす事が出来る。
「せっかく起きたんだから二度寝の前にちょっと仕事でもまとめるか」
 決して私は勤勉ではない。むしろこの仕事は学校でいう補習みたいなものだ。
 歯を磨きながらデスクの上のパソコンを起動。自分は起きたら歯を磨く主義で、それはたとえこれから二度寝するとしても、だ。
 パソコンを起動すると一通のメールが来ていた。別に特別な事ではない。無造作にそのメールを開く。
 そろそろですね。ありがとうございます。……メールにはそう書かれていた。しかも差出人は自分。
 寝ぼけて私のメールアドレスに自分でメールをしたのだろうか。少し不信な物だったが間もなく削除。仕事を終え、再び布団に入る頃にはそのメールの事なんて忘れていた。

41 名前:No.12 私からの感謝状 2/3 ◇CoNgr1T30M 投稿日:07/12/30 23:17:43 ID:Sc9eEBrb
 次に目を覚ました時にはすでに三時頃で、良い子はおやつでも食べている時刻だった。けれど不思議と寝た気がしない。頭はガンガンする。
 そういえば朝も昼もまだだったなと想起し、ガスのスイッチを入れて湯を沸かす作業に移った。
 流石にそれだけでは寂しいと思い冷蔵庫でも漁ろう。取っ手に手をかけると、冷蔵庫の中にメモが入っていた。

 そんな物ばかり食べていると体に悪い。野菜を用意したから食べなさい。

 しかも恐ろしい事にそれは紛れもなく自分自身の字だった。
「ハッ、何だよ……コレ。何の冗談だよ!」
 冷蔵庫の中にはご丁寧に野菜炒めが入っていた。しかも台所のフライパンには野菜くずが残っている。
 かといって誰かが侵入した痕跡もなく、鍵はきちん施錠されていた。
 つまり、この料理を作ったのは……私?
 ピーッと沸騰を告げる合図。けれど自分の体はやかんの方には行かず、デスクの方に向かっていた。
 体が言う事を聞かない。意識だけが独立して手足が勝手に動いている感じ。
 恐怖する事も出来ず、私の腕は、指は、私の意に反してパソコンを起動させた。

42 名前:No.12 私からの感謝状 3/3 ◇CoNgr1T30M 投稿日:07/12/30 23:18:01 ID:Sc9eEBrb
 ワードを起動し、キーボードに何かを打ち込む私の腕。液晶画面に書かれていた文章にはただ驚愕するしかなかった。

 私は貴方のもう一つの人格。言うなれば精神上の双子みたいな物です。しかし精神上、双子というのは俗に言う二重人格。私たちはそれが不完全だった。肉体の支配権のほとんどは貴方にいってしまい、私はずっと眠っていた。
 けれども最近、私は急に力を付け始めた。いやむしろ貴方が日常のストレスの蓄積により精神が衰弱した為でしょう。
 そこで今に至ります。今の貴方なら充分乗っ取れる。いままで体を養い、知識を蓄えてくれてどうもありがとう。

 その感謝状を最後に自分自身の人格はもう一人の私によって封じ込められた。

「さて飯でも食うか」
 私はカップラーメンの中にゆっくりとお湯を注いだ。





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