【 『ごめんなさい』を 】
◆K0pP32gnP6
21 名前:No.06 『ごめんなさい』を 1/1 ◇K0pP32gnP6 投稿日:07/12/29 23:53:21 ID:ZGRKFOJO
うちのクラスでは黒板を消すのは日直の仕事だった。
最右列の最前席に座る俺は黒板の上に備え付けられた時計を眺めた。
四時間目が始まるまであと一分ほど。黒板はまだ消えていない。
白い文字から視線を右にスライドさせ、日直が誰かを確認する。
渡辺コトミ。
さらに視線を左に流して教室をグルリと見回す。
渡辺はいない。
しょうがない。俺が消すか。
黒板消しを手に取り、チョークを半分ほど消し去ったところで、
「あ! 佐藤くん、ごめんなさい!」
教室のドアのところにプリントを抱えた渡辺が立っていた。
「いや、俺がやりたくてやってるだけだから、気にしないで」
というか、謝られるとこっちが申し訳なくなるんだけど。
「ごめんなさい。またわたしのせいで」
色々あって、また謝られた。
『ごめんなさい』を『ありがとう』と言い換えられるタイミングで。
どうせなら後者のほうがいい。
「あのさあ、あやまり癖直さない? 『ごめんなさい』を『ありがとう』に言い換えるとか」
ちなみにこのセリフ、どっかのマンガだか小説からの引用だ。
「ああ……あ……」
慣れないありがとうを言うためか? 言葉に詰まる様子の渡辺。
「あ、そのマンガ、わたしも見た……」
微妙な表情の渡辺が目の前にいた。
気っまずーい!
終劇