【 また来よう 】
◆cfUt.QSG/2




9 名前:No.03 また来よう 1/2 ◇cfUt.QSG/2 投稿日:07/12/29 12:47:25 ID:oh7PJKcM
 家から徒歩三分のところにあるコンビニ。受験生の俺にとってここは、ちょっとした物を買ったり気分転換をするのにちょうどよい場所だ。店員が無愛想なのが玉にキズだが、まあそれはどこのコンビニにも言えることだろう。
 集中力の切れ始めた夜の八時頃、俺はいつものように上着を羽織り、コンビニへと向かった。外は寒く、冷たい雨が降っていた。傘をさし、闇の中を一人歩いていく。雨の夜のこの時間が俺は好きだ。雨音が心を落ち着かせてくれる。
 たっぷり五分かけて、コンビニに着いた。店に入ると、レジには見慣れない顔があった。二つ三つ年上だろうか、小柄で、綺麗な人だ。新しく入ってきた人なのだろう、まだ手付きがぎこちない。
 ぐるりと店内を一周し、ガムとチョコを選んでレジへと向かう。空いていた先ほどの新人さんのレジにガムとチョコを置き、財布を取り出した。
「524円になります」
 小銭を出すのが面倒で、千円札を渡す。
「476円のお釣りです」
 無言で受け取ろうとしたが手元が狂い、俺は小銭をばらまいてしまった。

10 名前:No.03 また来よう 2/2 ◇cfUt.QSG/2 投稿日:07/12/29 12:47:38 ID:oh7PJKcM
「すみません!」
 すぐにカウンターを回ってきて、俺が小銭を拾うのを手伝ってくれた。新人さんだと分かっていたなら小銭を出すくらいすればよかったと後悔しつつ、拾い集める。小銭を渡してくれた手は冷たかった。会釈をして、俺は帰ろうとした。
「ありがとうございました」
 笑っていた。いや、微笑んで言う方が近いか。俺に向かって頭を下げたその店員さんには、媚びる様子も嘲る様子もなく、少し照れたような、しかし心からの笑顔があった。俺はあっけにとられながら、もう一度会釈をして店を出た。
 雨はまだ降っていた。心はもう軽くなった。また来よう。俺は傘をさし、歩き出した。



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