【 present serpent 】
◆K0pP32gnP6




105 名前:No.26 present serpent 1/2 ◇K0pP32gnP6 投稿日:07/12/23 23:11:43 ID:hy1aglLm
 十二月二十一日。二〇〇七年度最後の登校日。
 今年最後の授業がある日であった。
 午前中が授業で、午後が終業式。
 『今年も終わり感』に放心していると、
「はい! これあげるー」
 声がした。
 後ろを見るとクラスメイトの森下あゆみだった。
 リボンの付いた赤い立方体を両手で持ってこちらに向けている。
「へ?」
 間抜けな声をあげる俺。
「くりすますぷれぜんとー」
 ひらがな表記のような滑舌で言う。
「あ、ありがとう」
 普段なら「今日は二十四日でも二十五日にでもねーだろ」と突っ込むところなのだが。
 それも叶わないほど、俺は動揺した。
「うん。よろしくねー」
 いまいち意味の分からないセリフを残して、立ち去っていった。

 あの後、トイレの個室でこっそり箱を開けてみた。
 中には赤い毛糸の手袋。
 その手袋をして、俺はうっすら雪の積もった帰路を一人で歩いていた。
「なあその手袋、流行ってるのか?」
 また後ろから声がした。
 クラスメイトの中島。
「な、何を言っているんだい? 中島。手袋だって?」
 俺、動揺。
「いや、そこかしこに似たような赤い手袋をした奴らがいたからさ」
 似たような赤い手袋?

106 名前:No.26 present serpent 2/2 ◇K0pP32gnP6 投稿日:07/12/23 23:11:58 ID:hy1aglLm
 さてさて、その後のリサーチの結果、森下あゆみは、手当たり次第の奴らに手袋を渡し
て、見返りを要求していたそうだ。
「うん。よろしくねー」
 のよろしく、とはそういう意味だったのか。
『なんで俺には渡さなかったんだ!』
 と怒った中島のおかげもあって、森下あゆみが手袋を渡した相手は全員見つかった。

 十二月二十五日に、みんなで手袋でも持って森下あゆみの家をたずねようと思う。
 四十六足の手袋があれば、あのプレゼント魔はしばらく手袋で困ることは無いだろう。


<おわり>



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