99 名前:No.24 地肌はくろくて 1/4 ◇/sLDCv4rTY 投稿日:07/12/23 21:17:21 ID:c+C5rfnh
女の子が麻酔から目を醒ますと、おとうさんサンタさんはその子の顔を覗き込むようにして言いました。
「おはよう、そして、メリークリスマス。それはプレゼントだよ」
今年で七十五歳になる少女のおとうさんは、歳と口髭のせいかサンタさんの赤い服がとても似合っていました。
少女は指をさされた自分の右半身を見て、そこに六本目の右腕が生えていることに気づきました。
そして「わあありがとうおとうさん」と何本もの腕をヨユヨユ振ってうれしがりました。
病室を改造したその少女の部屋は、少女以外すべて真白で揃えられていました。とても清潔で、この部屋でいちばん汚らしいのは少女に思えます。
その汚い少女の肌は「あしか」のように黒くツヤがあり、毛がまったくありませんでした。全身の毛を集めたとしても、それは右腕の数にさえおよびません。
100 名前:No.24 地肌はくろくて 2/4 ◇/sLDCv4rTY 投稿日:07/12/23 21:17:44 ID:c+C5rfnh
じょじょに手足は増えていきます。
その増えた手足はあまり自由に動かすことができず、また感覚もありませんでした。ただ飾りついているだけでオモチャみたいな手足でした。
じょじょに手足はふえていきます。
イログロで、ツルッパゲの少女はベッドに座り、たいていは窓の外を眺めてすごしていました。
そして月日とともに、目、耳、鼻、口、を除いて全ての皮膚を、誰のものかわからないくろい腕や脚がびっしりと埋めつくしました。
その手足らは無意識の内に緩やかにうねり、まるで宿主を食い破ってでてきた寄生虫のようにもみえます。
手足はふえにふえふえきって、ついにはもう生やせるところがなくなりました。
たとえば少し膨らんでいた少女の乳房はぴんくの乳首ごと刈り取られ、今は腕が生え指を「卍」の形に絡ませています。もちろん
ぴんくのマンコからも黒く野太い腕がどっしり垂れています。
101 名前:No.24 地肌はくろくて 3/4 ◇/sLDCv4rTY 投稿日:07/12/23 21:18:07 ID:c+C5rfnh
生やすばしょがない。このままでは生やせない。どうしよう。どうしよう。
そこで考えた末おとうさんは、目や耳や鼻や口の大きさは変えないまま頭部を巨大にし、そうしてできた頭の土地に手足を何本も植えました。
そして、手足を全身にまとい頭部だけが異常に大きくなった少女をまじまじながめ、むかし手足が一本も無く、胴体と頭だけだった頃の少女が
この家に養子として初めて来たときのことを思い出し、「またひとつ人間に近づいたね」と頭をなでながらほほえむのです。
なでてる途中に気づきました。どうしよう。どうしよう。またばしょがない。頭はこれ以上おおきくしたら首モゲてしまう。
というわけで、今度は右目に生やしました。その次のどうしようでは、鼻。さらに次は、耳。あと口もふさいじゃった。
少女は、うれしかった。手足が無いのに障害児なのに養子として迎えてくれた「おとうさん」がすきだった。
そしてボケてしまい、なぜか手足を生やすことに情熱をもったおとうさんに自分の躰をプレゼントすることにした。じゆうにつかってねって。
102 名前:No.24 地肌はくろくて 4/4 ◇/sLDCv4rTY 投稿日:07/12/23 21:18:27 ID:c+C5rfnh
そうして、次は、左目。
白いベッド。黒い少女。黄ばんだライト。おとうさん。いつもの注射。麻酔。
いつものように眠気より早く意識が飛ぶ。時間がすこしたつ。それからまた、すこしだけ時がたつ。目の前には一枚のふやけたくらやみ。意識がもどったのかもわからない。
感覚のない手足はクッションとなって少女の全身を厚く覆い外部から感覚を遮断している。
頬のチューブの感触だけがかすかにあるが口はひらかない声はでない。「みえる」、から「なにもない」、になった。
すこしこわくなる。そしてそれはだんだん加速度を増してふえていき弾け飛ぶ寸前まで膨張した。
おとうさんをさわろうとする。沢山の手は宙を掻くだけでなにひとつ掴むことは出来ない。
叫ぶ少女は一人あたまの中。
そのころおとうさんは、そういやもうすぐクリスマスだなとおもい、つぎのクリスマスプレゼントはどこにはやそうかなあ、と腕くんでうんうんと考えていました。
おわり。