【 サンタクロースの贈り物 】
◆ZIPyTXuL.2
63 名前:No.14 サンタクロースの贈り物 1/2 ◇ZIPyTXuL.2 投稿日:07/12/23 13:28:35 ID:GVoliDZ5
12月24日。この日の夕刻から朝までをクリスマス・イヴとして祝うのだそうだ。
しかし、会社にとってはそんな日などまるで関係ないらしく、私は今日も仕事に追われている。
寂しさを紛らわすためにつけたテレビからは、明日以降の天気が伝えられてくる。どうやら明日は一日快晴のようで、ホワイトクリスマスとはいかないようだ。
12月24日といえば、独身時代はクリスマス・イヴというよりも、私の誕生日の前日という印象が強かったのだが、結婚して子どもが生まれてからは、一児の父として心持が変わったためなのか、クリスマスというものを以前よりも意識するようになった。
まぁ、クリスマスといっても、七面鳥やケーキを家族で囲んで食べ、就寝した息子の枕元にプレゼントを置いていくくらいのことしかしないのだが。
プレゼントといえば、1年に1度のサンタクロースの仕事も今年で5年目になるが、相変わらず息子から欲しいものを聞き出すのに苦労している。
さりげなく尋ねるのだが、「ひみつー!」なんてはぐらかされて、なかなか教えてはくれない。
普段仕事のせいで、あまり一緒に過ごせないため、できるだけ本人の望むものをプレゼントしてあげたいのだが……なかなか難しいようだ。
今年も結局聞き出せないまま、適当な物を買ってしまったのだが喜んでくれるだろうか。少し心配だ。
仕事も一段落して時計を見ると、すでに11時を回っていた。
予想以上に仕事が長引いてしまったようだ。私は「しまった」と舌打ちをすると、急いで会社を後にした。
できるだけ急いだのだが、私が家に到着した頃にはすでに日付は変わってしまっていた。
家に入ると部屋は真っ暗で、妻も息子も先に就寝していた。
テーブルにはラップをされた七面鳥とシチューが『暖めて食べてください』と書かれたメモと一緒に置いてある。
私は「ごめんな」とだけ呟いてプレゼントを息子の枕元に置くと、テーブルの食事には手をつけずそのまま布団へ向かった。
仕事で疲れていたのもあってか、私はすぐにまどろみの中へと落ちていった。
64 名前:No.14 サンタクロースの贈り物 2/2 ◇ZIPyTXuL.2 投稿日:07/12/23 13:29:02 ID:GVoliDZ5
翌朝、私は息子のはしゃぐ声で目を覚ました。
「喜んでくれていたようで良かった」と内心安堵し、布団から体を起こすと枕元に何か置いてあるのに気づいた。
寝起きでぼやけた目をこらして枕元をよく見ると、赤い包装紙で綺麗にラッピングされた横10センチ縦30センチ程度の箱のようだ。箱の上には白い封筒がちょこんと乗っている。
私は枕元に置かれたそれに疑問に感じつつも、おそらく自分に宛てられたものなのだろうと判断し、包装紙をできるだけ破かないよう慎重に箱の包みを剥がした。
箱を開けると中にはエンジ色のネクタイが入っていた。よく見ると、小さなシマウマが刺繍されている。
これを会社に付けていくのは少々恥ずかしいな、などと思いつつ、私は箱に添えられていた封筒をあけ、中に入っていた手紙を読んだ。
「パパ おたんじょうび おめでとう。おしごと がんばってね。おしごとおわったら あそぼうね。――ゆうきより」
手紙にはただそれだけ、拙い文字で書かれていた。
私は胸を締め付けられるような何ともいえない気持ちになり、目頭が熱くなるのを感じた。
すると、先刻まで居間で遊んでいた息子が駆け寄ってきて、
「パパ、どうしたの? プレゼントうれしくなかった?」
などと、心配そうな顔で尋ねてきた。
私はそんな息子の様子を見て「ああ、私の息子なんだな」と思うと、なんだか無性に可笑しくなってきて、思わず吹き出してしまった。
私はようやく笑いを抑えると、困惑した表情で見つめる息子の頭に手を乗せて、
「プレゼントありがとう。すごくうれしいよ」
と、微笑んだ。
ふと窓の外を見ると、天気予報の通り空は晴れ渡っていた。
ホワイトクリスマスでないのは残念だが、我が家のサンタの願いを叶えてあげるのには絶好の天気のようだ。
(了)