【 プレゼント 】
◆atHMc.avFo




22 名前:No.05 プレゼント 1/5 ◇atHMc.avFo 投稿日:07/12/23 01:03:49 ID:UIKf8STW
くるくる。美紀が私を撫で回す。美紀と出会ったのは二年前。でも私は美紀のこと、もっと前から知ってたけどね。
私を見つめてはにこにこしながら、また私を撫で回す。私はそっと目をつぶって美紀に向かって歌う。
歌い終わると、美紀はまた私を撫で回す。くるくるくる。
「わたしのかわいいしろちゃん。かわいいかわいいしろちゃん」
そんなことを呟きながらまた、にこにこしながら撫で回わす。
その度に、私は女に向かって、同じ曲を歌い続ける。


23 名前:No.05 プレゼント 2/5 ◇atHMc.avFo 投稿日:07/12/23 01:04:34 ID:UIKf8STW
新宿。まずはベルク。とにかくベルク。ベルクはいつも俺を裏切らない。
生とソーセージとハム。
期待通りのフレッシュで甘い生。期待通りの肉質と案配の肉。
期待通りの空気、孤独、人混みの中の孤独。でもこの店の孤独は健全だ。暖かい孤独だ。
こんな店に連れてきたらどう思うかな。
さて、これから何を買えばいいのだろう。そもそも買っていいのか?今?
美紀は何が好きなのだろうか?好きなものは?好きな色は?好きなブランドは?好きな芸能人は?好きな場所は?
好きな時間は?好きなペットは?好きな国は?好きな番組は?好きな空気は?好きな絵は?好きな音楽は?
好きな心は?好きな電車の席は?好きな夕焼けのかたちは?好きな例えば渋谷の空間の人混み少ない喫茶店は?
好きなサイトは?好きな考え方は?好きな異性のタイプは?好きな下着は?好きなちんこの形は?好きなプレイは?
好きな人は?
美紀が好きなことは何一つ分からない。美紀のことは何一つ分からない。
なのに買うの?何で買うの?何で美紀と会う必要があるの?美紀とあっていいの?
俺が人に何かを求めてもいいの?

24 名前:No.05 プレゼント 3/5 ◇atHMc.avFo 投稿日:07/12/23 01:05:01 ID:UIKf8STW
店内はそろそろ混み始めている。そろそろ出なければならない。
ベルクは一瞬に意味がある。居残っても無駄。
西口へ向かう。とりあえず電機屋へ行ってみよう。

いらっしゃいませいらっしゃいませ、只今、新型のノートパソコン、W-13Oが大変お買い得となっております。
この機会に是非ごらんになってください。
これ新しいのでたんだってー。すごくない?お兄さんビーモバイルの新端末いかがですか?
はい、はい、分かりました。では後ほどまたお電話させていただきます。はい、ですからこの商品は当店でも一番お勧めして
おりまして、はい、この多機能でこのサイズはかなりお勧めです。
ねー、今日この後何たべる?はい、ですからこの商品でしたらお客様のご要望にもお応えできるかと。ねーちょっと聞いてる?
はい、ありがとうございます。ではレジの方でお支払いの方をお願い致します。
うん、うん分かった、それはもうやめる。ん、ありがとうね。


カメラ、パソコン、AV機器、家電製品、ゲーム、時計、CD、DVD、カーナビ用品、PC周辺機器、ブランド、健康器具
と羅列されたエリア案内を眺める。階段を上がり、店内を歩く。

25 名前:No.05 プレゼント 4/5 ◇atHMc.avFo 投稿日:07/12/23 01:05:22 ID:UIKf8STW
店員が近づいてくる「お客様、今日は何をお探しですか?ただいまですと、こちらの三点セットが大人気となっております」
店員を無視して階段を上がる。「お客様、只今このサイクロン掃除機が大人気となっております
「いらっしゃいませ、お探しの商品ございましたら、お気軽にお声のほう、おかけください」
「本日、vii、大量入荷しております。6Fゲーム売り場にて整理券のほう、お配りしております、お求めのお客様、
どうぞ、お早めにお越しください」
「只今、こちらの売り場にて、時間限定の大セールを実施しております!只今の時間のみMEIWAのMDコンポがこのお値段
でございます!是非ごらんになってください」
「こんばんわ、本日はどなた様へのプレゼントですか」
今日、初めて挨拶されたな。
そんなことより、この真っ白な女はどうして私が誰かに何かを買おうとしているのか分かったのだろう。
「そちらの方は貴方にとって必要な人ですか?」
はい。
「ずばり、美紀ちゃんでしょ!」
はい。
「やっぱり」
はい。
「美紀ちゃんのこと好きですか?」
                   。
「美紀ちゃんが嫌いですか?」
                   。
「美紀ちゃんはあなたのこと好きですか?」
                   。
「美紀ちゃんはあなたのこと嫌いですか?」
                   。
「美紀ちゃんに何か伝えたいですか?」
はい。
「じゃあ愛の歌を歌いなさい」
はあ。

26 名前:No.05 プレゼント 5/5 ◇atHMc.avFo 投稿日:07/12/23 01:05:50 ID:UIKf8STW
くるくるくる。また美紀は同じ曲を聴いてにこにこしている。
私は正直、あいつがここまで歌下手だとは思って無くて、心配したけど。
くるくるくる。まだ聴くのかよ。しょうがない。これでもう私も電池切れだよ。

「はっぴばぁすでいとぅーゆ〜〜〜はっぴばぁすでいとぅーゆ〜〜〜〜
はっぴばーすでぃでぃあみーき〜〜〜〜はっぴばーすでいとぅーゆ〜〜〜〜〜〜〜〜
えーー、美紀ちゃん、誕生日おめでてとうございます。
これを聴いているということは、天変地異が起こることもなく、今日も平和な日本で
23歳になったということですね。本当にめでたいことと思います。
ところで、今回は美紀ちゃんに伝えることがあります。
僕は声に出して美紀ちゃんに気持ちを伝えることが出来そうにないので、
これで伝えることにします。
僕は今までの人生でずっとひとりぼっちでした。一人で生きてきました。
一人で生きることが賢く、強い生き方だとずっと信じていました。
僕は弱かったのです。弱くて弱くて、僕が弱いことも知らなかったのです。
美紀ちゃんは僕の話や考え方を認めてくれた初めての人でした。
僕はつらい時、死にたいときに美紀ちゃんの言葉やメールを思い出しました。
それが僕を支えました。だから今度は僕が美紀ちゃんの支えになればと思います。
僕のことは心配せず、そちらでがんばってください。どこに行っても、どんな時でも僕は常に美紀ちゃんと一緒です。
ふれーふれーみっき!ふれーふれーみっき!わーーーーーーー!」



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