【 奇妙なテンションのお話 】
◆JjN/Hanams




21 :No.06 奇妙なテンションのお話1/2 ◇JjN/Hanams :07/12/16 22:43:33 ID:w6ZS4p/J
「テンション上がってきたー!」
 俺は自分の部屋で一人叫んだ。ここ2、3日大学の課題作成のために寝ておらず、俺のテンショ
ンは正常な領域をギリギリK点越えしていた。
「あ、あばばばば。うぼぁ! 牛乳! 牛乳! アイスクリーム!」
 既に自分が何を言っているのかも分からない。とりあえず、友人に電話をかけることにした。携
帯電話を取り出し、アドレスを調べながら、トイレのドアを何度も開けたり閉めたりする。

 スリーコールで友人が出た。俺はとりあえず、炊飯器の蓋を開け、爆弾が仕掛けられてないかチ
ェックをする。
『はい、もしもし』
 俺は友人の声を聞いて無性にテンション上がってきたー!
「あんこ、お前は俺と生き別れになったあんこじゃないか!」
『そうよ! 兄さん! バカバカ! ……会いたかった』
 普通であれば、このような電話がかかってくれば、無言で切るが。残念なことに友人も徹夜明け
だった。
『まあ、とりあえず落ち着いてだな。ヒラメとカレイの違いについて考えようぜ!』
 そう、佐藤が切り出す。望むところであるな。そう俺は考え、深い思考にいたった結果、こう結
論づけた。
「海にいるのがカレイ、山にいるのがヒラメふぁ!」
 噛んだ。
『ブブー、ハズレー。己が心の奥に眠っている物、それが答えふぁ!』
 友人も噛んだ。

22 :No.06 奇妙なテンションのお話2/2 ◇JjN/Hanams :07/12/16 22:43:44 ID:w6ZS4p/J
 それからも、相対性理論におけるもやしと牛肉のマッチングについて、超ヒモ理論を駆使したス
トッキングの製作過程について、議論は加熱し、議会は踊った。そして先日俺の叔父はリストラさ
れた。
「とりあえず、俺たちは空気中から塩を生成する方法に辿りついたわけだ」
 俺は真剣な面持ちで、炊き立てのご飯にヨーグルトとソースをかける。もう、汁を飲んでいるの
かご飯を食っているのか分からない有り様だ。とりあえず、頂く。
「美味い!」
 ねっとりとしたソースとヨーグルトが、炊き立てのご飯を侵略し、口の中は既に阿鼻叫喚だ。こ
れこそまるでこの世の地獄。
「げぼぉ……」
 思わず口から吐き出す。ちゃぶ台が、白と茶色のマーブルに染め上げられていく。
『ど、どうした? 胸が苦しいのか?』
 友人が電話口で心配する最中、オレはそのご飯のあまりのマズイさに、息を殺して鳴いた。
「う、うぅ……ホーホケキョ! ホーホケキョ!」
『カラシニコフ! カラシニコフ!』
 なに! 共鳴しているだと!? 俺はその行動に、友人の底知れぬパワーの一端を見た気分だっ
た。

 お茶を飲み、一息入れたところで、俺は本来の用件を切り出した。
「実のところ……俺はもうだめだ」
 鏡に映った虚ろな目をした自分を見て、俺はそう呟いた。
『俺もだ』
 友人も呟いた。




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