【 これが私の初恋のおはなし 】
◆s8ee1DM8jQ




39 名前:No.11 これが私の初恋のおはなし 1/3 ◇s8ee1DM8jQ[] 投稿日:07/12/09(日) 17:26:36 ID:LWn13oCH

「なぁ、お前、二組のユミちゃんと仲いーんだろ?紹介してよ」

 同じクラスの佐々木に話かけられたのは、クラス替え直後の四月だった。
私は人見知りというわけではなかったけど、生徒数の多いこの学校でのクラス替えは、ちょっと不安だった。
佐々木のこの一言は、印象のいいものではなかったけれど、独特の緊張感に包まれるクラスの中で
話し相手がいるというのは、ちょっとした救いだった。

「別に…いーけど」

 佐々木と話すうち、なんだなんだと集まってきた数人の男子と気軽に話すことが出来、すぐ仲良くなれた。
そのノリで、女友達もあっという間に出来たし、私は早いうちにクラスに馴染め、内心ほっとした。

 友人作りに無意識にも貢献してくれた佐々木に、私は恩を返す、と言わんばかりに
ユミちゃんとの仲を積極的に取り持ってやった。
やれ男のタイプが知りたいだの、気になるやつはいるのかだの。
口うるさくお調子者の佐々木の注文は、嫌になるほどだったけど、ユミちゃんの返答や一挙一動に、
踊らされる佐々木が見ていて楽しかった。

「ねー、佐々木。ユミちゃんに、メアド教えて欲しいってやつがいるんだけどって聞いたら、
 教えてもいいって!」
「マジかぁー!!お前ほんっとーありがと!いい奴すぎ!」
「サーティーワンのアイスね」
「も〜おごるおごる!おごりまくる!!」


40 名前:No.11 これが私の初恋のおはなし 2/3 ◇s8ee1DM8jQ[] 投稿日:07/12/09(日) 17:27:04 ID:LWn13oCH
 だけど私は本当に馬鹿だった。毎日顔を合わせて、楽しく佐々木と過ごすうちに
佐々木に恋心を持つようになってしまったのだ。
だれが望んで泥沼に足を入れるものか、と毎日湧き出る気持ちを、かき消すように過ごした。
しかし、そんな努力も空しく、あんなに楽しくて、嬉しかった佐々木の笑顔で
私は涙を零すまでになってしまっていた。
そして佐々木とユミちゃんの関係も、私の心に平行するように大きく、大きく膨らんでいき
あと一歩、というところまで来ていた。
 そして、私の運命の日。

「ねー、佐々木。今日一緒に帰ろうよ。肉まんおごるからさ」

 佐々木と初めて会って、初めての冬。
部活が終わって帰るころには、外はもう真っ暗で、私にとって都合が良かった。
もし、…もし泣いてしまっても、気付かれないかもしれないから。
肉まんを食べながら、立ち寄った丘の上の公園で、私は佐々木に告白した。

「…何で言うかな」
「…知ってたんだ」
「…もしかして、程度だけど。知らないフリしてやってたのに」
「ごめん」
「…あのさ、俺…」
「いいよ言わなくて。わかってるから」


41 名前:No.11 これが私の初恋のおはなし 3/3 ◇s8ee1DM8jQ[] 投稿日:07/12/09(日) 17:27:31 ID:LWn13oCH
冬の夜は寒いけど、空気が澄んでいて息がしやすかった。
言葉につまるかもって思っていたけれど、割と普通に話せて、…こんなにみじめな状態なのに
なんだか安心した。
しばらく二人揃って黙っていたけれど、佐々木がふいに、その場にしゃがみこんで口を開いた。

「人間ってさぁ、上手く出来たもんだと思ってたけど、…なんかしょーもないよな」
「…何それ」
「自分の心さえ、思う通りにいかねーんだもん」
「…ああ、まあ、…そーだね」

「…何で、俺の好きな人は、お前じゃねぇんだろう」

そんなの、知らないよ。
そう言いたかったけど、私の涙腺は限界だった。
女でごめん。好きになってごめん。そう言うと、佐々木はうん、と言って立ち上がった。
今まで通り仲良くしていこう、そんな風に出来ないのは分かっていた。
それはお互い、今まで付き合って分かったこと。私も佐々木もそんなに器用じゃない。

「ばいばい、親友」

佐々木はそう言うと、私を残して一人帰っていった。
私は返事は言えなかったけど、泣きながら、佐々木っていい奴だなぁと思った。
好きになってよかった。素直にそう思えた。
 そして、その翌日、佐々木はユミちゃんについに告白したらしい。
答えはユミちゃんの可愛い笑顔を見れば、一目瞭然。私の苦労も報われるってもんだ。



おわり


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