【 悪魔の想いよ天使に届け 】
◆E.Iivli/9.




30 名前:No.08 悪魔の想いよ天使に届け 1/2 ◇E.Iivli/9.[] 投稿日:07/12/09(日) 00:57:23 ID:LWn13oCH
突然だけど、僕は恋をした。
恋ってのは初めてだからよくわからないけど、多分これが恋なんだと思う。
だけど、この初めての恋は、実ることなく散ってしまうんだろう。
何故かって? 僕と彼女の姿が全然違うからさ。
まず、僕の背中に生えている羽は黒く尖っていてるけど
彼女の羽は白くてふわっとしているんだ。
それに、僕には黒くてとんがった尻尾と、頭からぴょんってでている角もあるんだ。
彼女にはこんなものはついていない。
だから、この恋が実らないってわかるんだよ。
……いや、まって。この恋をこのまま終わらせない方法が一つあるじゃないか。
そうさ、僕も彼女と同じような姿になればいいんだ。簡単なことじゃないか。
そうだな、じゃあ、まず最初にこの尻尾と角を抜いちゃおう。
ブチッ。
よし、少し痛かったけど取れたぞ。次はこの羽だ。
ペンキを塗るだけじゃ、彼女の羽のようにふわってならないんだろうなぁ。
どうしよう?
……そうだ、彼女の仲間から羽を奪っちゃえ。
よし、そうしよう!
あ、丁度良いところにいるぞ。後ろからそーっと、そっとね。
えい。
ブチッ。
よし、取れた。これを背中につけてっと。
だけど、これじゃあほかの奴と一緒じゃないか。彼女、振り向いてくれるかな?
どうせなら、もっと羽をうばっちゃえ。
ブチッ。
ブチッ。
ブチッ。
よし、これぐらいで良いだろう。一枚、二枚、三枚……全部で十二枚だ!
さあ、彼女に会いに行こう。この気持ちを伝えるために。
彼女は僕を好きになってくれるかな?

31 名前:No.08 悪魔の想いよ天使に届け 2/2 ◇E.Iivli/9.[] 投稿日:07/12/09(日) 00:57:44 ID:LWn13oCH
すてきって言って、抱きついてくれるかな?
あ、彼女だ。おーい。
あれ? 何で逃げるの? 何で僕を怖がるの?
何で? 僕はこんなに羽を持ってるんだよ? 何で?
僕は、自分の体を改めて見てみた。
僕の体は、手は、真っ赤な血の赤で染まっていた――――。
僕は今気がついた。僕は間違っていた、間違っていたんだ。
彼女が僕を恐れるのは当たり前なんだ。
だって僕は真っ赤に染まってしまていたのだから。
僕は、とんでもないことをしてしまった。ここには、もういられない。
ここだけじゃない、もう、この世界の何所にも僕の居場所はないんだ……。
もうしょうがない、ただ一言、君に残して死んでしまおう。
いや、何も残さない方がいいかもしれない。
僕が悲しくなるだけだから……。
あぁ、だけど僕は君のことが本当に好きだった、大好きだった。
ただ君と仲良く暮らせればそれでよかったのに。
あぁ、僕にもう一度チャンスが与えられるのなら、今度こそ誰も傷つけずに
ありのままの姿で君にこう言うんだ。
もう遅いかもしれないけど。
好きですって……。

【完】


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