【 柔らかい肝臓 】
◆ZhTcxBoU2g




24 名前:No.6 柔らかい肝臓 1/2 ◇ZhTcxBoU2g[] 投稿日:07/12/08(土) 22:19:59 ID:lqwDWgjl
「彼女を振り向かせるには、どうすればいい?!」
 血走った目の男が、図書館で一冊の本を手に取った。
『三日でマスター! 黒魔術』
 そして破らんばかりの勢いでページをめくりはじめる。
 ビリ、と嫌な音がするのと同時に、男は手を止め
「ヤベっ」
 と小声で呟やく。そしてその破けた部分を注視した。
 七ミリほどの裂け目。男は、見なかった事にして、次のページに進もうとした。
 しかし、進まなかった。
 裂け目の下の文章に目をとめたからだ。

  恋愛の黒魔術。
  これは召喚術の一種である。
  儀式の手順を踏んだ三日後、悪魔が召喚される。
  その悪魔の要求を一つ叶えれば、悪魔は貴方の恋を成就させるだろう。
  しかしながら、悪魔の要求は命や魂を要求するものが多く――

 そこまで読んで男は本を閉じた。
 そして貸し出しの手続きをすることなく、本を持って図書館を出た。

 三日後。
 男の部屋には、髑髏だとか緑色の液体だとかが散乱していた。
「さて、私がここに召喚されたということは、分かっておるな?」
 男の顔をじっと見つめて、ファンタジックな装いの少女は言った。
「あ、ああ。そちらの要求は?」
 男は、出来るだけ冷静に答えた。
「まずは、貴様の要求からじゃ」
「恋愛成就」
 男は即答した。
 少女はすこし目をつぶってすこし考え、言う。

25 名前:No.6 柔らかい肝臓 2/2 ◇ZhTcxBoU2g[] 投稿日:07/12/08(土) 22:20:19 ID:lqwDWgjl
「じゃあ、内臓をよこせ。柔らかい肝臓が良い」
 内臓。その言葉に男は戦慄した。
 が、三十秒ほど黙り込んで、
「ここじゃ、あれだ。ちょっと場所を変えよう」

 天井に取り付けられた装置は、勢いよく煙を吸っていた。
「こちら、上レバーになります」
 店員がテーブルに上レバー一人前(六枚)を持ってきた。
「おお、美味そうな肝臓じゃ」
 少女は手馴れた手つきで網にレバーを四枚載せる。
 残りの二枚は、生食。
「よし、契約成立じゃ。そのうち向こうからお前に近づいてくる」
 言いながら生焼けレバーを二枚。
「しかし、なんで肝臓なんだ? 深い意味でもあるのか?」
 男は尋ねた。
「肝臓と言うか、柔らかい肝臓じゃ。ソフトレバー」

 Soft liver。
 並べ替えてみるとFirst love!
 つまり! 初恋とは柔らかい肝臓のことだったんだ!
「な、なんだってー!」
                          
                            <おわり>


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