【 つくりかけのまち 】
◆hOG3FfUkhE




100 :No.27 つくりかけのまち 1/2 ◇hOG3FfUkhE:07/11/25 23:30:50 ID:X9t4Q6j+
 ようちえんののそつえん式がおわって、家にかえったボクは、うれしくてしょうがなかった。
小学校の入学いわいにと自転車(かん字もおぼえた)を父さんがプレゼントしてくれたのだ。
おともだちとお別れするのはかなしかったけど、ボクだけの自転車を手に入れたというよろこびの前では
かなしさも忘れることができてしまいそう。ボクはその日からまい日、自転車にのるれんしゅうをした。

 なんでボクがこんなにがんばって自転車のれんしゅうをするかというと、ボクにはヤボウがあるのだ。

 お母さんといっしょにまちにお買いものに行くたび、ボクはとてもふしぎにおもっていた。
こんなにたく山の人がなんでまちを歩いているんだろう?って。
本とうは、みんなあの曲がりかどを曲がったら、いなくなってるんじゃないの?
お店のおむかいのあのたてものに入った人は、そこでいなくなってしまうんじゃないの?って。
 テレビや本の中には、ボクの行ったことのないまちが、たく山でてくるけど、(ボクはもう本もよめるのだ)
ボクは、おばあちゃんの家と、ボクの家と、ちかくのこうえんと、ようちえんとほいくえんと、
お母さんといくデパートと、いつもかい水よくに行く大あらいかい水よくじょうにしか、
行ったことがないのだ。
 
 もしかしたら、ボクが行く前に、だれかがいそいでまちをつくって、たくさんのダレカがそこの人のふりを
してるんじゃないのって。
 だって、ボクがあそびに行くときは、お母さんに、ぜったいどこにいくのかをいいなさいっていわれてるし、
ひとりで知らないばしょにはぜったい行っちゃいけませんって、お母さんはとってもこわいカオでいうのだ。

101 :No.27 つくりかけのまち 2/2 ◇hOG3FfUkhE:07/11/25 23:31:25 ID:X9t4Q6j+
 だから、ボクはヤボウがあるのだ。ボクは自転車にのって、だれにも、お母さんにもいわずに、
ボクがまだ行ったことのないばしょに行くのだ。もしかしたら、作りかけのたてものがみられるかも、
まだ人のいないまちがみられるかも。

 まい日、自転車のもうれんしゅうをしたボクは、四日かんで一人でホジョリンなしで
自転車にのれるようになった。家のまどから、みていたお母さんが、手をたたいてほめてくれる。
ボクは『いまだ!!』っておもった。いまがヤボウをジツゲンするチャンスなのだ!! 
ボクはいきなりたちこぎをして、家の前のみちに出て、いつもこうえんに行くみちをもうスピードで走った。
お母さんがオニのようなカオをしておっかけてくる。「どこにいくの! ママに行き先を教えなさい!!」
やっぱり、お母さんはボクにつくりかけのまちをみせたくない、ダレカのなかまなのだ。

 いつものこうえんはすぐにみえた。自転車はやっぱりとってもとってもはやい。お母さんやおともだちと
歩いていくと、もっともっとじかんがかかるのに。このはやさだと、まだまちは作りかけにちがいない。
ケイカクドオリだとボクはおもった。あのこうえんの次のカドを、ボクはまだ行ったことがないのだ。

 ボクは、もうスピードでこうえんをとおりすぎ、次のカドを曲がった。なにか大きなおとがきこえて、
ふわぁっとカラダがかるくなった。すごい! マックラだ! やっぱりまちはつくりかけだったのだ!



BACK−Candied nights◆QIrxf/4SJM  |  INDEXへ  |  NEXT−空想少女◆7BJkZFw08A