【 I am a woman but ……. 】
◆IPIieSiFsA




32 :No.09 I am a woman but ……. 1/5 ◇IPIieSiFsA:07/11/25 01:32:11 ID:w+IpIpqR
 ――私は夢を見る。
 唇を重ね合わせ。舌を絡ませて。お互いの口腔を犯し合う。
 首筋に舌を這わされ、キスマークをつけられる。
 胸への愛撫、舌先で転がされて乳首を尖らせる。
 おへその周り、括れた腰を指で撫で回される――。

 登校の途中、彼女はクラスメートの黒田誠一の姿を見つけた。
「せい……」
「おはよう! 誠一」
 近づいて声をかけようとしたが、彼女の声は別の声に遮られた。
「ん? おお、おはよ……」
 どこか眠たそうな声で誠一が挨拶を返した相手は新井静香。こちらも彼女のクラスメートで、誠一とは恋人同士である。
「なにー? また遅くまでパソコンしてたんでしょ」
 少し頬をふくらませて彼氏の夜更かしを咎める静香。それに対して誠一は生返事を返し、今度はそれに不満を持った静香が通学カバンで軽く叩く。そして誠一がそれに抗議する。
 端から見ても、仲の良いカップルの朝の風景。他人が声をかけるのが憚られるような雰囲気を醸し出し、じゃれ合いながら二人は学校へと向かう。
 と、たまたま後ろに視線をやった静香と彼女の目が合って、静香は二人の後ろを歩く彼女に気づいた。
「あっ、おはよう!」
 静香が声をかけたことで、誠一も彼女の方を振り向く。
「おはようございます。誠一さん、静香さん」
 彼女は深々と頭を下げて挨拶をした。
「ん。おはよう」
 静香とのやり取りで、幾分か頭をスッキリさせた誠一がハッキリした声で挨拶を返した。
「後ろにいたんなら、声をかけてくれたらよかったのに」
 三人で並んで歩きながら静香が言う。
「二人のお邪魔をするかと思いまして」
「邪魔なんてことないよ。誠一とは朝の挨拶をしてただけだし」
「カバンで殴るのがお前の挨拶か。よくわかった」
 ぶっきらぼうに言う誠一。しかしその顔はどこか笑っているようにも見える。
「愛情でしょ、愛情。愛があるからこそ、叩くんじゃない。わからない?」

33 :No.09 I am a woman but ……. 2/5 ◇IPIieSiFsA:07/11/25 01:32:34 ID:w+IpIpqR
「ハイハイ。ほら、さっさと行かないと遅刻するぞ」
 誠一は静香を適当にあしらって、少し歩調を速める。
「待ちなさいよ」
 静香も同じく、歩くスピードを上げて横に並ぶ。
 彼女は、二人のそんな姿を羨ましく想いながら後からついて行った。

 昼休み、彼女は誠一と職員室へと来ていた。
 今日の日直である二人は、担任から配布物を取りに来るように言われていた。
「これとこれ、運んだらいいの?」
 敬う気持ちがまったくうかがえない誠一の言葉にしかし、担任はにこやかに頷いた。
 二人の目の前には特別授業用の冊子と、一辺十五センチくらいの箱が一杯に詰められた段ボール箱が鎮座していた。
「箱の方はだいぶ重いから、お前じゃなくて彼女に持ってもらえ」
 担任の言葉に、彼女は段ボール箱へと手を伸ばす。が、誠一が先にそれを持ち上げた。
「……くっ」
 思わず声を漏らす誠一。
「誠一さん。私が持ちます」
 彼女は受け取るべく、段ボール箱に手を添える。しかし誠一はそれを断る。
「……別に、いい」
「ですが」
「いい、って。重い物を持つのは男って、昔から決まってるんだよ」
「けれど私は……」
「女の子は、力仕事なんてしなくていいんだ。そっちの方だけ、持ってくれ」
 彼女が何かを言いかけたのを誠一は遮って、目で冊子の方を示す。
「わかりました」
 冊子の束を両手で持つ彼女。
「無理するなよ」
 という担任の声を背に、彼女と誠一は職員室を後にした。誠一はそのまま、彼女は一礼して。
 二人は職員室のある二階から、自分たちの教室のある三階へと階段を上がる。
 彼女は少し頼りない足取りで階段を上る誠一の後について行く。万が一、誠一がふらついたりした場合にすぐに支えられるように。
 階段の中程へ来たところで、後方から男子生徒が駆けて来た。五時間目の開始が近づいていたために、急いで教室へ戻ろうとしている。

34 :No.09 I am a woman but ……. 3/5 ◇IPIieSiFsA:07/11/25 01:32:56 ID:w+IpIpqR
 普段の彼女なら、見る事無くそれがわかるのだが、誠一の歩調に集中していた所為で彼女は気づいていなかった。
 男子生徒も当然、ぶつかろうと思っているわけではない。しかし、階段を駆け上がる男子生徒は彼女や誠一に細心の注意を払っているわけではなく、彼女の脇を駆け抜けようとして、右腕を彼女の左腕にぶつけてしまった。
 運悪く次の段へと左足を浮かせていた彼女はバランスを崩す。とっさに左足を戻そうとして下ろすが、崩れたバランスがそれを許さない。元あった、右足の一段下ではなく、もう一段下へと左足を滑らせた。
「あっ」
 彼女は小さく叫んだ。
 重心が後ろにかかり、彼女は階段から落ちないように手すりに手を伸ばそうとして、抱えた冊子を思い出した。これを放り出すか、自分が落ちるか。
 彼女は、落ちる方を選択した。
 背中から階段下へと倒れ落ち行く彼女。手にした冊子は、散らばらせないように胸で抱える。視界には、その腕に向かって手を伸ばす誠一の姿が映った。
 誠一の手が彼女の腕を掴む。しかし、彼女の自重と勢いには逆らえず、誠一もろとも落下する。
 彼女は、抱えた冊子を手放し、誠一の身体を引き寄せる。落下の衝撃から護る為に。
 そして甲高い金属音とともに、彼女の身体は廊下に叩きつけられた。 
「……つぅ」
 顔をしかめて上半身を起こす誠一。そんな誠一に彼女が声をかける。
「大丈夫ですか?」
「……ああ、だいじょう……!」
 答えかけた誠一だったが、自分の右手が彼女の胸に触れているのに気づいて、慌てて彼女から離れた。
「急に動くと良くないですよ」
 彼女も上半身を起こし、誠一を気遣う。
「……あー。いや、俺は大丈夫。助けようとしたんだが、反対に俺が助けられたな」
 照れたように笑う誠一。
「私の体は重いですから」
「まあ、確かに軽いとは言えないな。……それより、こっちの方は大丈夫かな」
 誠一は優しい笑みを浮かべて先の言葉を彼女に、後の言葉で自分が放り出した段ボール箱を心配した。
 そして彼女も、自分が手放した冊子を拾い集めながら、誠一の背中を見ていた。

 ――私は夢を見る。
 膣口をなぞっていた彼の指が膣内をかき混ぜる。
 勃起したクリトリスを彼に丁寧に弄られて、愛液でしとどに濡れそぼる。
 固くいきり立った彼のペニスが挿入されて、激しく子宮を突かれる。
 そして体内に彼の精液を感じて、絶頂に達する――。

35 :No.09 I am a woman but ……. 4/5 ◇IPIieSiFsA:07/11/25 01:33:21 ID:w+IpIpqR

「……ん、……さい。……誠一さん、起きてください」
「……ん……んん」
 名前を呼ばれて目を覚ました彼は、身動ぎをしようとして、出来ないことに気づく。
 両腕は後ろ手に椅子の背もたれに縛られ、両足も椅子の左右の前脚に括られている。
「気がつかれましたか、誠一さん」
「おい! こ……れ……っ!?」
 声のした方、正面を向いて彼は驚愕の表情を顔に浮かべた。
 目の前には彼女が立っている。一糸纏わぬ姿で。
 彼は彼女を見る。いつもと同じ顔でこちらをじっと見つめている。二つの膨らみがあるだけの胸。へそのような窪みのない、なめらかな腹部。陰毛はおろか性器すらない股間。
 彼女のその裸身を見て、本当に、彼は理解した。彼女が人間ではなく、造られた存在――ロボットである事を。
「……どういうつもりだ?」
 彼女の瞳を真っ直ぐに見据えて彼が問いかける。放課後、彼女と一緒に空き教室に来た彼は、首筋に電気を感じて気を失った。そしてこの状況である。
「……私の裸を見ても、勃起しないのですね」
 彼女の視線は彼の股間に向けられており、その言葉どおり、彼の股間は膨らんでいない。
「なに言ってるんだ、お前……」
 彼女は問いに答えず、彼に近づくと腰を屈め、
「私は貴方の事が好きです」
 そう告げてから、唇を重ね合わせた。
 そしてきっちり五秒後に唇を離した彼女。
「……どうしたんだよ、一体」
 戸惑いを隠せない彼の言葉に、やはり彼女は答えることなく彼の前に跪くと、ズボンのベルトを外してチャックを下ろした。
「おい! 何するんだよ!」
 彼はジタバタと体を動かそうとするが、椅子ごとガタガタと揺れ動くだけで、彼女を止める事は出来ない。
 トランクスの隙間から彼の性器を露出させた彼女は、それを手で弄る。
「やめ……ろって……!」
 少しだけ、自身を持ち上げる彼の性器。しかし、それ以上持ち上がることも、大きくなることもなかった。
 だから、彼女は性器を咥えた。知識として知っていた上に、性器も、人が排泄をする為の穴も彼女は持っていない。彼女が彼を迎え入れる穴は、そこしかなかった。

36 :No.09 I am a woman but ……. 5/5 ◇IPIieSiFsA:07/11/25 01:33:42 ID:w+IpIpqR
 彼女の口内に舌は無く、口を窄めて頭を上下に動かすだけのフェラチオ。
「おい……ほんと、に……やめろ……!」
 しかし経験の無い彼にはそれだけでも十分で、性器は次第に固さを増して膨張していく。
 再三の彼の制止の声も彼女には届かず、快感がピークに達した彼は精子を彼女の口腔に放出した。
 口内に彼の精液を溜めた彼女は、彼の性器から顔を離し立ち上がる。
「……これで満足か?」
 彼が彼女を見る。しかしその目に侮蔑の色は無い。
 彼女は傍らの机の上に置いていた自分のスカートからティッシュを取り出し、彼の性器を丁寧に拭く。そしてそのまま、彼の戒めを解く。
 自由になった彼は、性器をしまってから立ち上がり、彼女と同じ目線で見詰め合う。
「……俺は、お前の事は好きだ。でも、それは友達としてであって、女としてじゃない。静香っていう……恋人もいるし」
 彼の言葉に彼女は僅かに瞳を大きくする。
「……これでも、私の事を女性として見てくれるのですか?」
「当たり前だろ。お前はお前。女であることに変わりはないだろ」
「……ありがとうございます。……すみませんでした」
「気にするな。俺も、できるだけ気にしないようにするから。……また明日、笑って話そうぜ」
 彼は踵を返して教室を出ようとする。
「……風邪引くから、早く服を着ろよ!」
 そう言い残して、彼は教室から出て行った。
 残された彼女はしばらく、見えない彼の後姿を見送っていたが、視線を外して下を向くと、右手を口元に当てた。
 そして離された彼女の右手には彼の精液。
 彼女には、口の中の物を嚥下する機能はついていない。彼女は食事を必要としないから。
 右手の精液を見つめ、そしてそれを自らの股間に擦り付ける。まるでそれが正しい行為であるかのように。
 だが彼女の股間には何も無く、なめらかな表面に精液が付着し、垂れるだけ。
 しかしその姿はまるで、膣内に精液を出された跡の様に見えた。

 ――私は夢を見た。
 彼との子供を抱く、女性が描くありきたりな幸せ。けれど、私は人間ではない。
 I am a woman but I am not the human.――。

                     ―完―



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