【 寝る娘は育つ 】
◆ZchCtDOZtU




140 名前:No.34 寝る娘は育つ 1/4 ◇ZchCtDOZtU[] 投稿日:07/11/19(月) 00:07:28 ID:0HdUPaCf
「ねぇ、ちょっと!!」
 ドガンッ!! と教室のドアを勢い良く開けると、ブカブカになった制服の胸元を指して叫んだ。
「私のオッパイ無くなっちゃったっ!!」
 ブッーー!! っと紗枝は飲んでいたパックの牛乳を鼻から逆噴射し、智美は「……あっそ」と適
当に相槌を打った。
「ねぇ、ちょっと! どーしよ?」
「あー、そうだね〜」と鼻を押さえながら紗枝が苦笑い。
「サイズの合うブラ会に行かなくちゃね」とは智美。
「ねぇ、昨日まではあったよね? 私のDサイズのオッパイ! ねぇ、見てたでしょ?」
「う〜ん。どうでしょう?」
 そう、昨日まではあったのだ! 絶対にDサイズのオッパイが! なのに今は見事にペッタンコ。
「あぁ私のナイスバデーはどこに行ったの?」と言う私に向かって「散歩でもしてんじゃねー?」とケラ
ケラと智美が笑う。鉄拳制裁メガトンパンチ!! すると知美は海の彼方へ飛んでいってしまった。横
で紗枝は未だに牛乳を飲んでいた、と思ったら今度の場面では牛乳風呂に入っていた。
「う〜ん。やっぱ牛乳風呂は良いわ〜。肌に張りが出るもの!!」
 肌に張りが出ると聞いては居ても経ってもいられない!! 私も牛乳風呂に入らなくては!! でも
ちょっとタンマ! まずは居なくなったオッパイを探さなくっちゃ!!
 あぁ、私のオッパイはどこに行ったの!? お〜い! オッパイや〜い、出ておいで〜!!
 暫く探しても全然見つからない。智美はどっかに飛んで行っちゃったし、紗枝はまだ牛乳風呂に入っ
てる。二人とも真剣に心配してくれない。私は校舎裏の海岸に出て夕日に向かって走ってみた。

 「チクショー!! 私のオッパイ帰って来ぉ〜い!!」
 十分も海岸沿いの砂浜を走ると夕日は完全に水平線の彼方に消えていった。月明かりは出ているの
に校舎も見えない位、真っ暗。ザブンザブンと海が唸る真っ暗な世界に私一人だけ。仕方なく波打ち際
で私のオッパイを探してみるがなかなか見つからない。怖くないよ〜。帰っておいで〜。
 すると誰かが近づいて来た。スラっと伸びた手足にピンと張った背筋。そして顔には見覚えのあるオッ
パイ。目を凝らして見ると、そうそれは正しく私のオッパイだった。

141 名前:No.34 寝る娘は育つ 2/4 ◇ZchCtDOZtU[] 投稿日:07/11/19(月) 00:07:47 ID:0HdUPaCf
「やぁ。僕は貴方のオッパイです。いや、正確には貴方のオッパイだった、と言うべきかな?」
「え? それはどういう意味? 貴方は私のオッパイなのよ!? 早く帰ってらっしゃい」
 数秒黙った後、Dサイズのオッパイは悲しそうに答えた。
「いや、僕は旅に出ます」
「なぜ?」
「……それが運命だからです」
「……そっか。じゃぁ、行ってらっしゃい」運命じゃしょうがない。私は潔く諦める事にした。うん、忘れよう。
所詮はオッパイ。たかが胸の膨らみだ。何のことは無い。
 私があらゆる記憶を忘却の彼方へ消し去ろうとしているとDサイズのオッパイは語り始めた。
「……僕はオッパイです。それ以上でもそれ以下でもない。だけど、貴方方、女性はそれを大きいとか小
さいとか、張りがあるとか無いとか、形が良いとか悪いとか、散々に言う!! 時には自慢し、時には卑下
し、或いは他人のオッパイを笑い、讃え、羨ましがり、さげずむ。私たちオッパイはそれで何時傷つき、恨
み、嘆いたか判りません!! 貴方方、人間にとってオッパイとは何なのです!!」
 仕方が無いと溜息をつきながら、Dサイズのオッパイの問いに私は真正面から答えた。
「……命。あるいは自らのプライドと見栄。そして自分自身の誇り」


 Dサイズのオッパイは私の瞳を覗き込み、一息ついた。 
「……ならばあえて問おう!!」
 え、あ、ちょっと!
「……そもそも、僕は貴方のオッパイじゃありません」
 ち、ちょっとタンマ!! それは言わないで!!
「僕は貴方の理想のオッパイです。現実の貴方は僕じゃない!! 貴方はDサイズのオッパイじゃない!!」
 それ以上、言わないでください。泣いちゃうかも……。
「貴方はオッパイはAサイズだ!! それにもにも拘らず、夢の中で自分のオッパイはDサイズだと言う。変
ではありませんか!?」

142 名前:No.34 寝る娘は育つ 3/4 ◇ZchCtDOZtU[] 投稿日:07/11/19(月) 00:08:09 ID:0HdUPaCf
 泣きそうになるのを堪えながら私は震えながらも声を上げる。
「違うわ、間違っているのは貴方よ!!」
 そうだ。いくら夢の中と言ってもオッパイに言い負けるわけにはいかない!! 元来負けず嫌いなのだ、私
は! でも、もうちょっとぐらい夢の中なんだから夢を見ていたかったなぁ……。
「私は、天使のブラでAサイズよ。寄せて上げてAサイズなのよ!!」
「なっ!!」
「……私はそもそもAサイズすらない」
 泣きそうになるのを堪えながら声を振り絞る。
「……私は、……私はAAサイズよ!!」
「ま、まさかそんな! 貴方がトップとアンダーの差が殆ど無いと言う、伝説のAAサイズ……!!」
「洗濯板に梅干とは古の人はよく言ったものね……。まさに私がそれよ……」
 夢の中でとは言え、よく泣かずに言えたものだと自分を褒めてあげたくなる。自分のオッパイのサイズを口
に出すと一気に夢が醒めていくのが判る。この夢も後残りわずかだろう。
「ありがとう。貴方の答えを聞けてよかった……。貴方にとってオッパイとは命であり、見栄であり、プライドだっ
たのですね」
「……そうよ」

 私の答えに満足したのか、一人でウンウンとか唸った後、Dサイズのオッパイは私に衝撃の一言を放って
きた。
「この夢の最後になりますが、貴方は姪っこが居ますね。今年六年生になる姪っこが……」
「……そんな、まさか」
 そんなまさか、ありえない! いや、あって欲しくない。私の願望。願い。
「そうです。私が旅に出る先は、その姪っこの所です」
 絶望に打ちひしがれる私にDサイズのオッパイは続ける。
「彼女はこれからDサイズになります」
 ヘビー級のパンチを食らったようにフラフラの私に追い討ちの一言。
「申し訳ないが、すでに貴方のサイズ。……AAサイズはとっくに卒業しています」

143 名前:No.34 寝る娘は育つ 4/4 ◇ZchCtDOZtU[] 投稿日:07/11/19(月) 00:08:29 ID:0HdUPaCf
 そんな、ありえないわ。あのチビッコが……!?
「さようなら。……お元気で。AAサイズに幸あらん事を願う」
 Dサイズのオッパイに笑顔を作るも、私はどこか不自然で、投げやりで。
「えぇ、貴方もね」精一杯の強がりも、全然ダメ。マジで泣きそう……。
「ハハハハ、オッパイである私に心配はご無用!! 次の夢でもまた会いましょう!! それでは御免ッ!!」
 そう言ってDサイズのオッパイは私の前から姿を消した。最初から判っていた。コレが夢である事。現実の私
はオッパイがAAサイズしかない事。
 でも、やっぱりっ!!


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「行かないでぇーー!!」
 と自分の叫ぶ声で起きると、すでに時計の針は十一時を回っていた。「マジで……?」我に返って時計を睨み
付けながら短く呟く。胸の辺りを触ってみたけど、あるのは恨めしい程のささやかなオッパイ。
「やっぱ、夢か、夢ですか、夢だよねぇ……。つーか夢の中でも何処かに行っちゃったし……。それに姪っ娘が
Dサイズって正夢だったらどーしよ……」
 ハハハと乾いた笑いを上げつつ再び布団に潜り込み『寝る娘のオッパイは良く育つ』との貧乳の母の格言を実
行すべく、今度こそ良い夢を見れますようにと願う。
「でも、この歳で制服は無いだろ……。絶対……」
 斉藤恭子、二十五歳、姪っ娘あり、彼氏無し、ブラのサイズはやっぱりAAサイズ。「まだ、育つよね……?」と
むなしく呟く。そんな日曜日のベッドの中。

<終>




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