【 我ら**姉妹〜百麗の長戸勇気〜 】
◆CoNgr1T30M




80 名前:No.19 我ら**姉妹〜百麗の長戸勇気〜 1/3 ◇CoNgr1T30M[] 投稿日:07/11/18(日) 19:09:04 ID:RlCAmG+9
 遠い……。人と人とはこんなにも遠い。ぽっかりと失われた心が痛む。その痛みから思わず涙が頬を伝う。
 あぁ、くすんだ空から舞い降りる白き結晶よ。私はただこう言いたかったのかもしれない。「寒い」と。

「ねぇねぇホラ積もってるわよお姉ちゃん」
きゃっきゃっとはしゃぐ妹。全くもう二つの禁忌ワードスレスレだというのに。
「ねぇ、寒いし帰ろうよ。猫の如くこたつで丸くなろうよ。ホラ、この……」
「あぁ奴隷二号の長戸君?」
こらぁー! 危ない危ない。お前確信犯だろ。
「誰が奴隷だ……」
冬の寒空、これが降ると犬がはしゃぎまわるという。公園には小学生の子供たちと我ら姉妹、そして山本に新キャラ長戸がいた。仮にも高校生、私ら場違いだろ。
「だってホラ、あの時誓ったじゃない」
と妹。私はとっさに身構えた。なんというか回想が入りそうで。
 ここで長戸という少年の容姿をチェック。まず面は及第点、髪はヤンキー漫画に出てくるようなリーゼント。そして威圧するような背丈。山本はひょろーん、長戸はがっしりという感じ。
 妹は不思議くんだけでは飽きたらず、札付きの不良さんまで調教なさったようだ。おっと、山本も妹の奴隷だぞ、と。

81 名前:No.19 我ら**姉妹〜百麗の長戸勇気〜 2/3 ◇CoNgr1T30M[] 投稿日:07/11/18(日) 19:09:28 ID:RlCAmG+9
 騒がしい夜の港。今宵、ここは奴等の楽園に、俺にとっては地獄と化す。
「おい、竹谷ぁ、お前は逃げろや」
街のアウトロー同士の抗争も佳境。形勢は圧倒的に不利。メンバーがバラバラな時を襲われ、今では俺と竹谷以外は病院のベッドの上だ。
「でも長戸さんっ」
「つべこべ言わずにさっさと行けやぁ!」
一喝、後ろ髪を引かれる風に竹谷は去って行く。
 へへ、と思わず笑みを零す。これから一人、ボコられるにも関わらず俺は笑っていた。その姿が滑稽だからか、あるいは狂ってしまったか。
「よぉ長戸、元気かぁ?」
敵リーダーの表情から余裕が感じ取れる。どこで集めたか後ろには百人程の手勢がいるのだから当然だ。
「へっ、俺一人に随分な人数じゃねぇか……でもよ殴られるだけの俺じゃあねぇぜ?」
精一杯の虚勢。全くリーダーは大変だぜ。仲間とチーム面子、両方守らねぇといけねぇ……。ここで決着しないと後々仲間が襲われるかもしれん……。
 そして敵リーダーの号令、怒号の中、百人弱の人間が俺目掛けて突進してくる。

82 名前:No.19 我ら**姉妹〜百麗の長戸勇気〜 3/3 ◇CoNgr1T30M[] 投稿日:07/11/18(日) 19:09:48 ID:RlCAmG+9
 始めはなんとかやってくる敵をねじ伏せられた。だが所詮は一人、人海戦術でだんだんと追い詰められて行く。
 唇は切れ、痣だらけになり、フクロにされる俺の意識が失くなるか失くならないかのその時、天使が舞い降りた。
 桜色の肌をした華奢な少女が屈強そうな男たちをなぎ倒す様はまさに壮観だった。

 信じられないが全ての男を倒してしまった。少女は汗を拭うと俺にこう問いかける。
「私の奴隷をやらないか」
疲弊していた俺はそのまま失神する。当たり前だ、こんな美少女がこんなセリフを吐けば気も失ったりする。

「まぁそんなこんなでな。俺は借りを返してるだけだ。奴隷では断じてない」
「えー、なんか色々命令したら奴隷の如くちゃんと従ってたケド?」
妹の言葉に長戸は羞恥からか言葉を詰まらせる。ちなみに名前は勇気というそうだ。全く危ない奴め。そして山本、小学生とじゃれるな。
「それでさマイシスター。なんでこんなところ来たのさ。寒くて敵わん」
「や、別に意味はないけど」

 その後、我ら姉妹、山本、長戸にお隣りのくろ姉を交えてなぜか人生ゲームをした。
なんというか私たちの勢力関係が如実に表れた結果だった。つーか回想長ッ!


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