【 双子 】
◆wSaCDPDEl2




33 名前:No.08 双子 1/5 ◇wSaCDPDEl2[] 投稿日:07/11/18(日) 00:06:12 ID:+1QJKIZ6
僕が糖尿病ならぬ豆乳病になったのは先月のこと。
僕はそれ以来豆乳を避け続けなければならなくなったし、
精神的にもすごく参った。
だけれど――僕は思う。
豆乳は駄目だけれど、大豆は摂取できるんだ。
このことは僕にとって精神安定剤であったし、希望の光でもあった。
「で…大豆は良いんですよね」
「駄目です」
医者からの無惨な宣告。
僕はその場にしゃがみ込んで噎ぶ。
ああ、大豆は、大豆だけは良いと、思って……
「でも、おからは良いんですよね」
「論外です」
僕は椅子から立ち上がり、診察室の隅で丸くなった。
「ああ、僕はもうお終いだ」
「そんな所で延々「の」を書くのはやめて下さい」
僕にとって大豆は生き甲斐だった。
大豆と共に笑い、共に泣き、時には喧嘩し、時には励まし合い、
そういう風にして僕たちは育ってきたのに。
「それなのに……大豆と一緒にいられないなんて」
「一緒にいても構いません。ただ、食べないで下さい」
「そ、そんなの“鉛筆の後ろの消しゴム”くらい意味ありません」
そこで僕は医者の机に目を移す。
するとそこには……
「け、消しゴムを使ってるっ!!!」
信じられない、と僕は思った。こんな人間は初めてだった。
こんなの人間のすることじゃない。
いや、まてよ、もしかすると本当に人間でないのかもしれない。

34 名前:No.08 双子 2/5 ◇wSaCDPDEl2[] 投稿日:07/11/18(日) 00:06:34 ID:+1QJKIZ6
と、すれば……
「貴様は世界征服を企む悪党かっ!!!」
「何故そういう結論になるんですか」
やれやれ、と医者はため息をついた。
「とにかく、大豆を取るとアレルギー反応が出ますので、絶対食べないで下さいね」
ちきしょう。これなら奥の手だ。
「ねえねえ、おじさん?」
「……なんですか」
「どーしてもだめっ?」
「……気持ち悪いですよ」
ピキッ。
「あーそういうこと言う?いいの?俺本気出すよ」
「っ!!!髪の毛が逆立って、何っ!!髪が金色だとっ!」
「え!!それマジッスか!!!」
「嘘です。ですから早く退出して下さい」
「ちっ。覚えてろよっ!」
そうして僕は、新たな戦場へ向かった。



病院でアキラがこんな遣り取りをしていたころ、
双子の一方、ソウタはある危機に直面していた。

35 名前:No.08 双子 3/5 ◇wSaCDPDEl2[] 投稿日:07/11/18(日) 00:06:59 ID:+1QJKIZ6
「で、わたしと」
「わたし」
「「どっちと付き合うんですか!!」」
電話で―こんな誰もいないような公園に―呼び出されたと思ったら、
まったくやれやれだ、ソウタは思う。
「悪いな、俺はどっちとも付き合う気はない」
理由は簡単だった。
どちらかと付き合えば、片方がそれを妬み、二人の関係が最悪になる事は目に見えていたからだ。
「「なぜですか!!」」
二人が同時に上擦った声をあげる。
さーて、しかし、ダイレクトに言うわけにもいかんだろうな、ソウタは困った。
どうしたものか。
すると、そこにアキラが現れた。
あれ、病院終わったのか。早いな。
「よう!ソウタ……あ、修羅場だった?」
いや、むしろ助かった。何故なら良いアイディアが浮かんだからな。
「実は」
俺はアキラの肩を引き寄せて、言った。
「コイツと愛しあっているからだ」
「げっ、何言ってやがる」
アキラが気味悪がって俺を見たが気にするものか。
まってろ、後で教えてやる。
「「え!!」」
また、二人同時に叫ぶ。
そういや、こいつらも双子だった。
二人とも、いやアキラを含めると三人か、
靴下に入っていたカメムシを見るような目で俺を見ていた。
……あれ?ちょっとヤバイ雰囲気かも…。

36 名前:No.08 双子 4/5 ◇wSaCDPDEl2[] 投稿日:07/11/18(日) 00:07:16 ID:+1QJKIZ6
病院から家へ帰る途中、公園を通りかかったわけですが、
「「どっちと付き合うんですか!!」」
って声が―もう、そりゃクリアに―聞こえてきまして。
驚いて声の元を捜すと、ありゃ?ソウタ?
「よっソウタ」
あ、やばい、目が合ったから、つい言ってしまった。
「修羅場だった?」
しかし、ソウタは薄気味悪く笑って、
僕の方に近づいてくるではありませんか。
く、来るな!何か非常に嫌な予感がする!
勘が良いのか、運が悪いのか、当たった。
「実は……コイツと愛しあっているからだ」
え!!僕の事をそんな風に思っていたのか?
僕は唖然として阿呆みたいに口を開けていた。
心なしか、女の子二人も驚いているような、
え!とか言ってるし、確実に驚いているかと。
え、いや、別に嫌いとかそんなんじゃないけど…
でもでも、アキラはソウタの事好きとかそんなんじゃなくて……

37 名前:No.08 双子 5/5 ◇wSaCDPDEl2[] 投稿日:07/11/18(日) 00:08:04 ID:+1QJKIZ6
以下アキラの腕時計がお送りします。
まず、ソウタの衝撃告白後、アキラは顔を赤らめていました。
少女二人は驚いたからでしょうか、走って逃げてしまいました。
その場に残された二人。
顔を真っ赤にしたアキラ。ほっとしたソウタ。
アキラが言いました。
「僕も……愛してる」
長く葛藤した末の答えでした。
体温からそれがわかります。(私は彼の体温から心中を察する事ができます。便利ですね)
さて、動揺したのはソウタです。
「はっ?ナニイッテンノオマエ」
そう言っている間にアキラはじりじりと間を詰めます。
ソウタは後ずさります。
その後、アキラはソウタに飛びつき、日の沈みかけた公園で……家に帰って……以下略。
こほん。そういうことです。いやー、気持ち悪いですね。男同士のごほんごほん。
次の日からソウタとアキラは“そういう関係”として一気に認知されました。
めでたし。めでたし、と。



BACK−僕はシチューが食べたい◆AyeEO8H47E  |  indexへ  |  NEXT−おなら◆fQaD.U8MiU