【 クオリア 】
◆E6FIKaDaz6




85 :No.19 クオリア 1/2 ◇E6FIKaDaz6:07/11/11 19:27:58 ID:5abG7Ca1
私は一枚の写真を彼女に見せた。
「どう思う?」
「とても美しい写真です」
私が話し終えると同時に彼女は口を開いた。
「なぜ美しいと感じたのか、説明できるか?」
「はい、主な理由は3つあります。まず第一に緑という色は人間に安心感を与えるという効果がある、というのが確認されております。それが」
「もういい」
「はい」
少し間を置いてから私は大きく息を吐いた。
「なあ…」
「何でしょうか」
「心とは何だ?」
「明確な答えはわかりません」
「お前には感情があるのか?」
「はい、今の私には無限の感情がプログラムされており、それの強弱、割合などで無限の感情を生み出すことが可能です」
「今のお前の感情は?」
「ご主人様の質問の意図が読み取れず、不可解に思っています」
そう言って彼女は私を見つめた。
「そうだろうな…」
と静かにつぶやいた後、私は天井を見上げた。
そして彼女を見た。

86 :No.19 クオリア 2/2 ◇E6FIKaDaz6:07/11/11 19:28:25 ID:5abG7Ca1
「たとえば、私がお前を怒らすようなことをしたとしよう。するとお前は怒ったような反応をするだろう」
「はい」
「逆にお前が私を怒らせるようなことをしたら、私も怒ったような反応をする」
「はい」
「私には怒っているという実感がある。脳波が乱れる、心拍数が上がる、という外的要因はどうでもいい。実感があるんだ」
「はい」
「お前にはそれがあるのだろうか、お前も怒れば脳波は乱れるし、心拍数も上がるだろう、傍から見ればまったく同じに見える」
「はい」
「だがお前には実感があるのか、お前にも心があるのか」
しばらく考え込んでから彼女は答えた。
「私は自分で考え、行動できます。私は自分自身を成長させることができます」
私は黙ったまま彼女の話を聞いた。
「私は生まれたばかりのころは感情というものを知りませんでした。
ですがご主人様が下さった自己成長プログラムのおかげで私はさまざまな感情を知ることができました。体の素材も自分で改良しました。
鉄の塊だった私の体も今では人間そのものです、食事も可能です、排出行為も繁殖行為も可能です」
彼女は泣きながら言った。
「私には感情があります、心があります。私は…私を創ってくださったご主人様に言葉では言い表せないほどの感謝の念を抱いております」
そこまで聞いて私は彼女をリセットした。



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