【 私と私(アイ) 】
私と私(アイ)◆4lTwCuEYQQ




47 名前:私と私(アイ) ◆4lTwCuEYQQ [sage] 投稿日:2006/05/14(日) 18:10:56.39 ID:xdpLMSM/0
夜のいつもの時間に家を出る。
自転車で三十数キロ離れた、私のお気に入りの公園に来る。
地面は芝生で周りは木で囲まれていて公園というよりは広場な感じのする場所。
レジャーシートを敷いてその上に座って、目を閉じる。
あの日の次から今日までの一ヶ月、十何回とやってきた習慣。
木の枝、葉、草等が揺れる音に混じる小さな足音を探す。
サー。サー。ザ。サー。サー。ザ。
……見つけた。
今日で通算九回目ぐらいの出会い。
私は音のした方向に体を向けて静かな声で話しかける。
「今晩は、だよ。猫さん」
黒猫の猫さんは眠そうな欠伸で答える。
「にゃ〜」
いつも猫さんが食べる猫缶を開けて置いておく。ちゃんと食べてくれるように祈りながら。
そんなに心配する事も無くちゃんと食べてくれた。
そういえばこんなに何回も喋っているのに、名前をつけていない事に気づいたが、PiPi PiPiと一時二十五分を表す携帯のアラームがなって気にするのを中断した。
猫さんを膝に乗せ、じーっと凝視するわけでもなく、ポケーっとするわけでもなく空を見る。
今日は満月のせいか暗い星は見えにくくなっていた。
だいぶ星を見ていていつの間にか時間が過ぎたのか、携帯のアラームがなった。
二時になった事をあらわすものだ。このアラームで名前をつけていない事を思い出した。
猫さんに聞いてみる。
「猫さんの名前どんなのが良いかな?」
猫さんは投げやりに答えた。
「にゃ」
私は提案した。
「私ね、猫さんみたく気ままに暮らしてみたいんだ。だから、アイ。そして猫さんは爽やか系で黒猫だから藍色の藍。こんなのでどう?」
それで満足したのか黒猫の猫さんの藍は元気な声でにゃあ、と一声だけ鳴いた。 fin



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