【 太陽と月 】
◆InwGZIAUcs




91 :No.21 太陽と月 1/2 ◇InwGZIAUcs:07/10/08 00:35:14 ID:GHgD87hW
 耀子は優等生で、私、美月は劣等性。
 貼られたレッテルは、友達、親、先生、さまざまな人に影響した。
 それも一重に、近所に住む幼馴染の友達だったからに他ならない。
 昔はそんなことどうでも良かった。馬鹿をやって、笑えていればそれでよかったのだ。
 だけど、そう思えていたのも小学校低学年のころまでだった。
 好きな人ができて、自分の容姿が気になったころ。
 テストが段々と真剣に行われ始め、自分の成績を突きつけ始められたころ。
 私は、耀子と比較されるのがすごく嫌だった。
 耀子は何を考えているのかよく分からない。
 ただ自然と、穏やかで、性格の良い、私から見てもかわいい女の子。
 しかし、月日は経ち、ようやくそのレッテルを剥がし落とせる日が来たとき、私は心のそこから嬉しかった。
 憂鬱だった耀子との学校の帰り道が楽しみだった。



「美月、どうしたの?」
「あのね耀子、私レギュラーに選ばれたんだ」
 私達はバレーボール部に所属している。同じポジションを争うことになるなんて、
つくづく運命的な皮肉を感じてしまうけど……今回はいつもと違う展開だ。
 耀子……悔しい? 悔しいよね? 私に負けるなんて今まで一回もなかったんだから? わかる?
どれだけ私が惨めだったか? 私が辛かったか? その百分の一でも味わうといい。
「本当に?」
「本当。今日先生に言われたんだ」
「おめでとう! 良かったね! 私の分も……頑張って!」
 耀子は笑った。影の無い、いつもの笑顔で。悔しさなど微塵もそこには無い。ただ、親友を祝す笑みがあるだけ。
 なんで? なんで笑っていられるの? 私……私の気持ちは分からないの? それじゃあ私の――
「う、うん……ごめん……今日はもう帰る」
「どうしたの?」
「気分が悪くて……」
 私は走り出した。

92 :No.21 太陽と月 2/2 ◇InwGZIAUcs:07/10/08 00:35:45 ID:GHgD87hW
 もう、最悪だ。私のしたことは……私を余計惨めにして……私の気持ちはどこへいけばいいの?


 美月。美月。あなたが憎くて愛おしいです。
 名前も反対ね。明るくて人が集まるあなたは太陽。私は月のようにあなたの側にいるだけ。
 あなたが一番惨めと思うことをしてきました。あなたより優位に立って、鼻にかけない態度をとりました。
 そして……あなたがやっと私を超えることが出来たと思った時……私は祝福しました。
 悔しかったでしょう? 惨めだったでしょう?
 大好きで大嫌いなあなたが壊れていく背中を見送っただけで、私は快感に浸れました。
 最後です。
 私は先生にこう言えば、きっとあなたは立てなくなる。
 それでもきっと、私は明日も明後日も……あなたの側に、月のようにいるのでしょう…tね。

――先生。足の怪我はもう大丈夫みたいです
 

 終わり



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