【 変質者を撃て! 】
◆h97CRfGlsw




120 :No.30 変質者を撃て! 1/5 ◇h97CRfGlsw:07/09/24 03:25:04 ID:SCEDXoXb
 毎日毎日職場と自宅の往復をする俺だったが、半年も経てばまあそんな反復を繰り返す生活にもだんだんと慣れ始め、最近になってようやく余裕というものがでてきたように思う。徒歩での職場通いの中で、周囲の風景に目を向けることが多くなった。
 短いスカートから伸びる細い太腿。生地の薄いワンピースの隙間から覗く平らな胸板。屈託のない笑顔を振り撒く愛らしい造詣の顔。いやはや、ランドセルを背負う彼女たちの行軍は、まさに百万ドルの風景。いやそれ以上。けしからんことだ。
 こんな年端もいかない幼女たちに欲情する俺は、なにを隠そうロリータコンプレックス。略して子供好きだ。今日も今日とて翻るスカートの中とかシャツから覗く干しレーズンをどうにかして覗こうと苦心しながら、職場への道を上半身グラインドさせながらで歩いていく。
 心が洗われるとはこういうことなのだろう。幼い少女たちの姿には、感動を覚えずに入られない。無知ゆえの清廉。無邪気ゆえの潔白。大人なんかになってしまった自分にはない輝きを、彼女たちは持っている。なので今日も眺める。正直たまりません。
「あの、ちょっと」
 そんな折、不意に後ろから声をかけられた。振り返るとそこには、大名行列から抜け出してきたエンジェルの一人が腰に手をすえてこちらを半目で睨みつけていた。刺激的な視線に血が股間に集まるのを感じつつ、なにかなと返事をする。
「最近、この辺りで変質者が出るんです」
 おそらく高学年の子だろう。背がそれなりに高く、あせた色をしたランドセルが少し不釣合いだ。だがその不マッチさが逆にそそるというものだ。閉じられた蓋の隙間からリコーダーらしき突起物が生えており、俺は不意に遠き日の若さゆえの過ちを思い出した。
 視線を下げる。短めのタイトスカートから、すらりと足が伸びていた。その神秘性だけでも俺にはオーバーキルなのにもかかわらず、あろうことか黒のニーソックスを装備しており、そこに発生した絶対領域はまさにブラックホールと化していた。視線がそこから抜け出せない。
 スカートに合わせた淡い色合いのシャツを、未発達のユメノカタマリがゆるく押し上げている。小学生にしては発育がいいのか、肩の辺りに薄っすらとブラ紐が伺える。滑らかな曲線を描く鎖骨がちらと覗いており、思わず口元がにやまりと歪む。なんというけしからん。
 じっくりと足先から舐め上げるように視線を這わせ、最後に顔へと目を向ける。歳相応の丸みを感じさせながらも鋭角的に整った顔は、軽い釣り目とあわせて理知的なな印象を受ける。が、ツインテールという一見してアンバランスな髪型が、上手い具合にマーヴェラス。
 まあ、一言で言えば物凄く俺好みな少女だった。俺に社会的な立場さえなければ、今すぐにテイクオフして昇天だ。少女はそんな鼻息の荒い俺を不機嫌そうな表情で見上げ、眉根を寄せていた。どうやら俺の返答を待っているらしい。
「へえ、それは困った人もいたものだね。変質者だなんて」
「まったくですよね。それに朝っぱらから興奮してるなんて……お猿さんみたいです。正直どうかと思います」
「ほんとだね」
「しかも、その人は私たちみたいな小学生を狙ってるみたいなんです。気持ち悪いですよね。ロリコンですよ」
「ロリコンだね」
「でも幸いなことに、実害を受けた子はまだいないんです。でも、これからどうなるかわからないから、早く捕まるといいねって、皆言ってました」 
「捕まるといいね」
「というかあなたですよね。ロリコンさん」
 少女はびしっと人差し指を俺に向けると、なにを思ったか失礼極まりない言葉を口走った。鋭い子だ。……というか、全くもって無礼千万である。確かに俺はロリコン全開の童女趣味ではあるが、表向きはただの好青年なのである。
 いわれのない非難に俺は腹を立てた。善良な市民を捕まえて、あろうことか変質者などと。まったくもってその通りである。しかし俺は、かぶりを振ってそれを否定した。

121 :No.30 変質者を撃て! 2/5 ◇h97CRfGlsw:07/09/24 03:25:32 ID:SCEDXoXb
「違うよ。全然違うよ」
「そうですか。ところで、私の太腿……触ってみたくないですか?」
 少女がはにかんだような微笑みを浮かべ、スカートをするりと持ち上げた。ムチムチとはちきれんばかりにみずみずしい太腿と、下着が見えそで見えないというもどかしさに、俺はもうなんというか切なくなってしまった。息子がテントの設営をはじめる。
「物凄く触ってみたいです」
「私みたいく小さい子、好きですか?」
「大好きです」
「やっぱりロリコンですね」
「ロリコンでした」
 瞬間、俺の充血した股の間に、少女のきれいな足が猛烈な勢いでジャストフィットした。あはぁん、と素敵な悲鳴をあげて往来に倒れこむ俺。倒れて目線が下がったことにより、いい具合に少女の股の間が見える。
 それに気付いた少女の激しいスタンピングを顔面に受けながら、俺は幸せだった。感無量である。
「このっ! 変質者!」
「変質者です!」
「地球のゴミ! 屑! あなたたちみたいのがいるから、私たちは外で元気よく遊べなくなるんですよ!」
「自分も残念です!」
「あああもう! このっ、このっ!」
「ありがとうございます!」
 がしがしと、踏みつけ踏みつけられながら絶叫する少女と俺。天下の往来でなんとも無残な光景だったが、ふわふわと翻るスカートに太腿、可愛らしい縞パンを視界に納めることが出来て、俺は大満足だった。しばらくして疲れたのか、少女が俺の顔に足を置いたまま嘆息した。
「はぁ、はぁ……。ち、ちょっと取り乱しました。それより、もう私達の通学路に現われないでくださいね。どうかお願いします」
「だが断る」
「なっ!?」
 俺は怒鳴る少女の足首を引っつかむと、大人の力をもって押しのけ、ゆらりと立ち上がった。よくよく考えれば、これは不当な言いがかりであるからして。確かに俺はロリコンであるが、変質者ではない。だってまだ何もしてないもん。
 理不尽な暴力に対して今更怒りを感じ始めた俺に、少女はたじろぐように後ずさった。まったくもって最近の子供は、一体どういう躾けをなされているのか。こうなれば善良な一市民であるところの自分が、責任を持って注意をするしかあるまい。
 その崇高な考えのもと、俺は訝しげな表情をしている少女の手を掴み、裏路地へ向うべく歩き出した。必死に抵抗する少女だったが、本気を出した大人の力にかなうべくもなく、引きずられるようにして俺の後を追う。
「や、やめてください! 離して下さい! 助けて!」
「ところがどっこい……そうはいきませあはぁん!」
 角に差し掛かったところで、俺のどうしようもない部分に再び躾けがなされてしまった。ぶくぶくと泡なんか吹き出しつつ路地の中に倒れこむ。お尻を高く突き上げて股を抑えていると、そこにどかりと足を置かれた。間髪いれず、声がふってくる。
「美香になにしてんのさ、おっさん。……大丈夫か?」
「う、うん。ありがと、志保ちゃん」
 振り向けばそこにはティーンエイジャー。新参の女の子が、冷ややかな目でこちらを見下ろしていた。どうやら美香というらしい女の子の頭を、まるで妹にするように撫で回し、よしよしとあやしている。しおらしく頭を下げ、目を瞑る美香。なにその反応。

122 :No.30 変質者を撃て! 3/5 ◇h97CRfGlsw:07/09/24 03:26:23 ID:SCEDXoXb
「アンタ、最近噂の変質者の人だね」
「違うんです」
「アンタロリコンだろ」
「ロリコンでした」
 志保の拳が、倒れ伏している俺の顔を殴りつけた。なんというサディスティック。先程の美香のスタンピングが霞むほどの威力に、俺は悶絶しつつも興奮せずにはいられなかった。この歳にして新しい世界が見えそうだ。
 裏路地のひんやりとした壁に手をついて、よろよろと立ち上がる。志保が美香を庇うように立ちふさがっていた。美香よりも少し背が高い。スポーツ少女といった様相で、ショートボブの髪が少し日に焼けた顔によく似合っている。こちらもまた、なんとも愛らしい少女だ。
「おっさんさあ……私たちみたいな小さい子相手に興奮するわけ? 私たち、まだ子供だよ?」
 志保が腕を組み、呆れ声と共に訝しげな視線をこちらに向けてくる。腕を組んだせいで胸が寄って上がり、大きく胸の開いた薄手のランニングから微妙な谷間が覗いていた。扇情的に過ぎる。今からこんな状態では、果たして日本の未来はどうなってしまうのか。
「……ふーん。そっか」
 じっとりと志保の体を眺めていると、彼女は唐突に嘲笑するような笑みを浮かべた。ずずい、とこちらに近づいてきて、俺を見上げるように顔を上げた。腕を伸ばし、挑発するように人差し指で俺の胸を突いてくる。きっとこの子は将来化ける。
「おっさん、どうせモテないでしょ。彼女とかもいなさそうだしさ。いままで付き合ったこともないんじゃないの? どうせ大人の女の人じゃ相手にしてもらえないから、私たちみたいな子供に走るんだ。そうなんでしょ」
「べ、別にそんなんじゃないんだから!」
「どっちにしろ、人に言えないようなもの、私たちみたいな子供を好きになっちゃったんでしょ? そういうのって惨めだよね。どうせ現実から逃げてるだけなんでしょ? だって普通なら、小さい子供なんかを好きになったりしないもんね。好きな気がしてるだけだよ、どうせ」
 全てが全てそうというわけではないが、痛いところをついてくる。確かに俺は今まで女性と付き合ったことはないし、同年代の女友達はいない。でも、違う。俺は逃避先に幼女を選んだわけではないのだ。俺はただ純粋な気持ちで、幼女たちと戯れたいだけなのだ……!
「ま、別にどうでもいいや。とにかくおっさん、アンタは警察行きだから。これで皆喜んでくれるよ」
 志保が鼻で笑う。くるりと踵を返し、美香に行こうと促したところで、俺は咄嗟に志保の腕を掴んで止めた。驚いて振り返るクソ生意気な子供に、俺はにやりと顔をゆがめてやった。
「この状況で警察なんか呼んでみろ。俺が難癖つけられて、お前らにリンチされたようにしか見えんぞ。ククク……コココ……それに、俺が変質者という証拠もない。どうする、ためしに呼んでみるか? ん?」
「な、なに言って……」
「確かに幼女を狙う変質者というのも問題の一つだけど、ゆとり世代というカテゴリも最近はあるんだよね。さあ、この場合どっちが被害者になるでしょうか。それとも、暴力娘として学校生活を送るか? ん? フォッフォッフォッフォッ!」
「う……」 
 俺は肩の横で上に直角に曲げた腕を、わさわさと上下揺らして勝ち誇った。あまりの大人気なさに我ながら情けなくもあったが、そもそも俺は何もしてないじゃないかという考えに至っての行動だ。俺はただ、道を歩く子供たちに慈愛のまなざしを送っていただけに過ぎない。
 志保はそんな俺の脅しを真に受けたのか、難しい顔をして後ろ頭をがりがりとやっていた。実際に警察を呼ばれでもしたら、おそらく九分九厘俺が強制猥褻容疑で連行されてしまうだろう。そんな溢れんばかりの児童愛をもつ世の男性方に厳しいのが、昨今の日本だ。嘆かわしい。
「志保ちゃん」
 今まで空気に徹していた美香が唐突に声をあげると、志保の顔を寄せてごにょごにょと耳打ちをはじめた。是非俺も仲間に混ぜて欲しかったが言葉にする前に済んでしまい、志保は美香に心配そうな視線を送ってから、くるりと踵を返して走り去ってしまった。
「志保ちゃんにはちょっと聞かれたくなかったので、先に学校へ行ってもらいました」
 美香はこちらに顔を向けると、はにかんだような笑みを浮かべた。どうやら、何か話があるらしい。胸のあたりで手を合わせ、もじもじとしはじめた美香。どうやら話しにくい話題らしい、というかその仕草ツボなんですけど。正直たまらんですたい。
「私、さっきの言葉を聞いて、なんだかあなたのことが理解できるような気がしたんです」
 俺がなにもしていないのに息を荒げていると、美香が話を切り出した。さっきの言葉とはなんだろう。美香の話の内容から察するに、おそらくフォッフォッフォッフォッのことだろう。そうか、美香ちゃんもバルタンのこと――

123 :No.30 変質者を撃て! 4/5 ◇h97CRfGlsw:07/09/24 03:26:48 ID:SCEDXoXb
「違います。全然違います」
「ですよね」
「あれです、志保ちゃんの……。惨めだね、って言葉です……」
 あー、と少し前の会話を思い出してみる。そういえば、したり顔で志保が何か失礼千万なことを言っていたような気がする。モテないとか、現実から逃げているだとか。くそう、どうして俺がモテないってわかるのさ。
「よく考えてみれば、私はあなたのこと、非難する権利なんてなかったな、って。私も、あなたと同じだったから……」
「モテないの?」
「違います! ……わ、私、志保ちゃんのことが好きなんです」
 言ってから、ぼふんという効果音を伴って美香の顔が真っ赤に染まった。あまりに愛らしいそのリアクションに、思わずルパンダイブをかましそうになりつつ、割合真面目そうな会話内容に集中する。美香の言葉は、どういう意味なのだろうか。
「志保ちゃん、言ってました。人に言えないようなものを好きになって、惨めだって。私、志保ちゃんのことが好きだって、誰にも言えないから……。でも、本当に、心から好きなんです! あなたも私と同じなんじゃないですか?」
「……そうかもね」
「いけない事だってわかってます。女の子が女の子を好きになるなんて、ダメなことです。でも好きなものは好きなんだから仕方ないじゃないですか! 普通は好きになっちゃいけないものを好きになってしまったけれど、好きという気持ちは嘘なんかじゃないんです!」
 美香が目に薄っすらと涙をためて訴える。その鬼気迫る表情に、俺はずきんと胸を打たれた。つまり美香は、普通ではない、禁忌の領域に恋焦がれてしまった「同志」なのだ。俺が少女を愛するように、彼女は同性を愛してしまったということなのだろう。
 美香の言葉が痛いほど理解できる。もとい、それは同時に自分の叫びでもあるのだ。年端のいかない少女たちの姿に愛情を抱く自分は、確かにマイノリティー。普通ではない、という鎖に縛られた囚人。少数派はいつだって、異常なのだ。
 ロリコンやレズという単語で、俺たちを侮蔑混じりに見下すことは簡単に出来る。だが、俺たちが抱く感情は、決して薄汚れたものなではない。自分の異常性に悩み苦しみ、それでも残る「好き」という感情は、むしろ他の普通よりも強固なものだ。
「……そうだよね、辛いよね。そっか、美香ちゃんも俺と同じなんだ」
「はい……。このまま一生、好きな相手に好きだって言えないまま、終るんでしょうか。そんなのって、ヒドいです。あんまりです。私はただ、好きなだけなのに。……なにがいけないんですか……?」
 感極まったのか、とうとう美香の目にたまっていた涙が一筋こぼれた。後を追う感情の奔流に押し出され、どんどん涙が流れてゆく。顔を俯け歯を食いしばり、両の手を硬く握り締めて泣く美香は、迷子の子供のようだった。
「確かに理不尽だよね。俺達はただ好きなだけなんだ。別になにをするわけでもないのに、何も悪くないのに、いつのまにか悪者になってる。本当に悪いのはきっと、普通以外を認めたくない、世間なんだろうね……」
「……私は、一体どうしたらいいんですか……?」
 美香の幼い顔がすがるように上を向き、俺の顔を覗いた。涙に潤んだ瞳は一片の曇りもなく、純粋という言葉すら霞むほどの美しさだった。危なげに立ち尽くす美香にいたたまれなくなって、俺はそっと腕を掴んで引き寄せ、優しく頭を胸に抱いた。
「う、っぐ……わたし、わたし……」
「大丈夫、大丈夫だから……。いつかきっと、認められる日が来る。信じよう?」
「……はい」
 俺の胸の中で幼女が泣いている。よくよく考えればありえないほどの夢シチュエーションなわけだが、シリアスな雰囲気にあまりそういう気分にはなれなかった。出会って間もない美香の突然の告白に、頭が追いつけていないのだろう。
 自分がロリコンであること。子供しか愛せないということ。そのことを自分は今まで、何故か悪いこと、反社会的なことだと考えていた。だが、よくよく考えてみれば――まったくもってクサいが――好きであるということを悪く言われるいわれなど、なにもなかったのだ。
 好きが高じて危害を加えるようなことがあれば、それは確かに悪いことだ。だが、悪いのは行為であって、感情ではない。ロリコンである自分を羞じることなどなかったのだ。そのことを今日、美香という少女に気付かされた。
 ふ、っと自然に微笑みがこぼれる。新しい扉を開いたような、生まれ変わった心境だ。胸の中でしゃくりあげる美香に目を向ける。この少女がいなければ、自分はこの先ずっと、自己嫌悪の中で生きていったのだろう。そう考えると、いくら感謝しても――

124 :No.30 変質者を撃て! 5/5 ◇h97CRfGlsw:07/09/24 03:27:11 ID:SCEDXoXb
「こっちです」
 不意に表通りの方から声がした。そちらに顔を向けると、そこには志保の姿があった。俺の方に向けて、人さし指を向けている。何処までいっても無礼な奴だと非難しようとしたら、胸の中にいた美香が俺を押しのけて志保の方へ走っていった。志保に飛びつく美香。
「どしたの? なんかひどいことされたの?」
「あの人がー、あの人がー」
 急転回に呆然としていると、一拍置いて青いユニフォームを国家権力の犬が走りこんできた。志保と美香に話し掛け、うんうんと何度か頷くと俺に顔を向けた。なんですか、そんな変質者を見るような目で俺を見ないで下さいよ。
「童女に対する強制猥褻の現行犯で逮捕します」
「なんと」
 俺は瞬く間に二人の警官に押し倒され、後ろ手にあろう事か手錠をかけられてしまった。なんだなんだと慌てているうちに引っ立てられ、裏路地から表通りに連れて行かれる。こ、こは、こは何事か?
「違うんです、俺たちが悪いんじゃないんです。悪いのは世間です。俺たちは何も悪くないんです。寧ろ被害者です。愛の自由を。ラブアンドピースです」
「共犯がいるのか」
「あそこに!」
 俺は美香を振り返った。志保の腕に抱かれ、ぐずぐずと猫のように顔を押し付けている美香。こちらの様子に気がついたのか、半目で俺に視線を送ってくる。薄っすらと微笑みを浮かべる美香は、先程のレズビアン美香ではなかった。
「くたばれロリコン」
「ですよね」
 俺はうなだれ、とぼとぼとパトカーへの道を歩いていく。心の通い合った同志だと思っていたのはどうやら俺だけのようで、美香はそんなこと微塵にも思っていなかったらしい。つまるところ、ハメられたわけだ。シリアスな空気は何処へやら。
 ぱたりとパトカーの扉が閉じられる。外界との遮断がなされ、俺はとうとうロリコンが高じて犯罪者となってしまった。だがまあ、後悔はしていない。夢にまで見た幼女との抱擁を、最後の最後にかわすことができたのだから。
 パトカーの外で、美香がこちらを覗いていた。実際のところ、美香がレズなのかどうかは定かではない。ただの芝居だったのかもしれないし、思わず漏らしてしまった本心なのかもしれない。
 だが、彼女とのふれあいの中で、一つだけわかったことがある。俺はまだまだこれからも、ロリコンでいていいのだと。幼女を愛し続けてもいいのだと。彼女と言葉を交わす中で、俺ははっきりと自覚した。俺はロリコンだと、今なら胸をはって言えるような気がする。
 パトカーが出る。バックミラーの中で、美香が何かを言っていた。当然聞き取れるわけもなかったが、なにを言っているかは簡単にわかった。
肩の横で上に直角に曲げた腕を、わさわさと上下させて、なにかを呟いている。隣で志保が、その行動を見て引いていた。
 遠い星からきた宇宙人。決して人と交わろうとせず、己の欲求の下に断固として戦い抜いた、宇宙忍者の真似だ。
「フォッフォッフォッフォッ!」

 

 俺もやり返そうと思ったが、手錠のせいで出来なかった。

                                    (終)



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