【 バラバラ死体の子守唄 】
◆DIeACV24H2




135 :No.12 1/1 バラバラ死体の子守唄:07/09/24 05:09:03 ID:rf09Swz6
 町が茜色に染まる時刻、俺は友人と自転車を漕いでいた。
「この前……親戚の叔父さんが亡くなったんだよ」
 馬鹿げた冗談の応酬が途絶えた頃、友人は突然そんな言葉を漏らした。
「……そうか、それは大変だったな」
 少し戸惑いつつも真剣な顔をして言葉を返す。
 こういう時、ご愁傷様とでも言えばいいんだろうが咄嗟に口に出せない。
 自分はまだ子供だなと妙に呑気な考えが頭をよぎった。
「脳が完全にダメになっちゃって何年も前から手遅れって言われてたからね、しょうがないさ」
「じゃあ、しばらく学校休むのか?」
 何気ない俺の問いかけに友人はふと黙り込んでしまった。
 少し気まずい雰囲気の中、自転車をぶつけないように並走させつつ返事を待つ。
「いや、葬式とかはやらないことになったから」
「え?」
 思わず眉をひそめる。
「叔父さんの死体は僕の家が引き取ることにしたのさ」
 やけに嬉しそうな顔で友人は答える。俺は頭が混乱しはじめたのを感じた。
「死体を引き取った? ……まさか病院にでも売る気か?」
 交通事故などで臓器移植が必要な人のために死体を買い取る病院があると俺は聞いた事があった。
 しかし友人は笑いながら手を振る。
「家はそこまでお金に困ってないよ。それに死体はもうバラバラさ」
 友人は何処か嬉しそうな表情でそう答えた。混乱していた頭が別の感情に支配されつつある。
「……バラバラ?」
「うん、昨日親戚が集まって皆で解体したんだ。実は叔父さんの体を使って僕の弟を作る事になってね」
 満面の笑みを浮かべて友人が答える。俺の頭から全ての疑問が消え去った。
「なんだ、そういう事か! 驚かせやがって」
「いやあ楽しみだよ、どんな弟が出来るのかな」

 幸せそうな顔をして自転車を漕ぐ友人を見てると俺も何か暖かい気持ちになってくる。
 この先の自動販売機でオイルの一本でも奢ってやろうか。



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