【 考える葦 】
◆ZRkX.i5zow




30 :No.09 考える葦 1/1 ◇ZRkX.i5zow :07/09/09 10:28:28 ID:keJqF6jY
 私にはライバルという人がいません。
それは決して慢心やおごりからくるものでなく、むしろ、私がおごられるのです。慢心の対象なのです。
さして努力することなく、あれやこれやとかいつまみ、そして捨ててゆく。半端モノの結晶です。そんな者にどうしてライバルが出来まし
ょうか。もしも出来ようものなら、私からお断りしましょう。お相手に失礼です。どうぞもっと高みを目指してくださいと、生意気にも助言
いたしましょう。
しかしながら、私も下ばかり見ているわけでもありません。たまには上も見たりします。
それは、日曜日の深夜に、呆けたように口をあけながら、東京タワーを見上げているみたいなものですが、ここ長らく創作なんかやってい
ます。
今日も紙に字を並べました。足りない頭で考えながら、きどった言い回しなぞをこねくり回したりしました。なにぶん、足りない頭ですか
ら、辞書を何回もひきます。ああ、あの字はどんなだったかしら、意味は合っていたかな、なんて言いながら、書き終わる時にはスッカリ抜
けてしまう知識です。そして明日もこんな調子で書くつもりです。明後日は分かりませんが、多分一回くらいは小説の事を考えているでしょ
う。
ですが、書いている最中は、自分に出来る最大限をつくしているつもりですが、一時間も経てばあれは本当に努力だったのかと頭を抱える
ばかりです。それでも書きつづけているのは、誰にも言えない本音を少しでも、放出したいからでしょう。
そして、長く続けている創作でも、私にはライバルという人がいません。おごられるのです。嘲笑の対象も長らく続けております。

たまに、行き詰ったときなど気晴らしに外へ出かけると、今までの自分の作品がみじめに思うときがあります。それでも、ビルや、人や、
草木や、車の音、空の色に触れていると、アイディアが出てきて、嬉々としてまた紙に向かうのです。

(終)



BACK−半歩先の先々◆h1QmXsCTME  |  INDEXへ  |  NEXT−剣奴重来◆rmqyubQICI