【 けしからん 】
◆ZEALGBKPMA




22 :No.07 けしからん 1/4 ◇ZEALGBKPMA:07/08/26 21:14:47 ID:FkikrFkY
 時は平安、季節は夏。
 京都の街の外れに巨大な屋敷があった。無骨なたたずまいは一見すると剣術道場のようにも見える。入り口に
は「開門党」と墨で大書きされた樫の板が掲げてある。視線を道場内に転ずる。五人の男たちが武道袴を着用し、
「オンマカキャラヤソワカ」と低く唸るように真言を唱えている。道場は四方を雨戸のようなもので囲われ、日
の光が入る余地はない。光源は五人の男たちの元に置かれた五つの蝋燭のみだ。男たちの真言と蝋燭の明かりが
幻想的な空間を作り出している。
 五人の男が囲む円陣の中央には一組の男女。
 女は白袴をまくり上げ、丸出しになった尻をメス猫のごとく突き上げている。羞恥心が無いわけではなさそう
だ。その証拠に女の頬は赤く染まっている。
 ――オンマカキャラヤソワカオンマカキャラヤソワカオンマカキャラヤソワカ
 円陣内にたたずむ男の唇が動く。真言の五重奏に紛れて声は聞き取れないが、唇の動きから何かを喋っている
のは間違いない。
 突然、男が甲高い奇声を発した。腰を前後にカクカクと振り、頭上に掲げた榊を振り乱す。女の周りを三度回
り、これを置く。そして男は女の尻をぺちぺちと両の掌で叩いた。
 ――オンマカキャラヤソワカオンマカキャラヤソワカオンマカキャラヤソワカ
 ――ぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺち
 叩いては掴み、爪先でつねり、指の腹でつまみ、ひねる。男はあらゆる手技でもって女の尻を責め立てた。女
の尻は赤くはれ上がる。尻の肉を左右に開き、菊門があらわになると、女はいっそう顔を赤らめた。男は眉をぴ
くりとも動かさない。
 儀式が一段落したようだ。男は女の尻に浮かび上がった赤みを何やら観察している。そして一言。
「尻は凶相を示した。これより退魔の儀に移る」
 男は女の尻で吉凶を占っていたようだ。再び榊を取り、女の周りを腰をカクカクと振りながら回る。尻を突き
出す女に腰振る男。異様な光景である。男は六度、尻を突き上げた女の周りを回って女の尻に唇を付けた。
 女に聞こえよがしに音をたてて尻を吸う。尻の肉をべろんべろんに舐めまわす。
 舌先が菊門を解きほぐす。程なく菊門は女の意思とは無関係に男の舌と戯れだした。
 舌が根もとまでずっぽりと入り、肛門をかき回す。そのたびに尻穴は卑猥な音を立て、そのたびに女は声を押
し殺し身をよじらせる。羞恥心が快楽を欲する心に負けたのだろう、もう一つの穴からは愛液が溢れている。
 男は満足げに顔を歪めた。
「退魔の儀は終わりにてござる。腹の蟲は菊門を抜け、我の腹の中で転生した」

23 :No.07 けしからん 2/4 ◇ZEALGBKPMA:07/08/26 21:15:03 ID:FkikrFkY
 これが京の都に突如として現れた宗教団体、「開門党」の儀式である。けしからん。
 女の尻の穴を吸っていた者が開門党の開祖、博尋(はくじん)だ。
 幼少のころ幼馴染の娘の排泄を偶然見てしまったことに、博尋こと五郎兵衛の肛門性愛は端を発している。
 そのせいでいい大人になってもノーマルな性欲が沸いてこない。五郎兵衛は女の肛門にしか性欲を感じないの
だ。己の欲望をかなえるには心の広い嫁を持つか、金で解決するしかなく、下級農民である五郎兵衛はどの手段
も使えず、悶々とした日々を過ごしていた。
 日増しに募る女の菊門への想い。にっちもさっちも行かなくなった五郎兵衛は奇行に走る。
 冷静になれば愚考であるのだが、その時の五郎兵衛は我を失っていたのだ。
 まず大枚はたいて質屋から白装束を入手し、宗教者に扮した。腰を前後に振りながらがに股で往来を歩き、頭
の上で榊をぶるんぶるんに振りかざす。そして道行く若い女を呼び止めてこう言った。
「やややや! これはこれはこれは! お主の肛門から蟲の発する邪念を感じるぞ! 間違いなく腹の中に蟲が
巣食っておる。今すぐ尻を見せい!」
 と出まかせのアドリブでハッタリをかまし、女の意向を無視して肛門を舐めまわしたのだ。念願叶っての菊門
に袴の下は白いもので汚された。
 ここで五郎兵衛に一つだけ計算違いがあった。アドリブで言ったつもりのセリフを女が真に受けてしまったの
だ。女は尻穴を舐める行為を宗教的儀式と本気で勘違いした。ついでにアナルも開発された。
 噂が噂を呼び、いつしか五郎兵衛は宗教者としてまつりあげられてしまう。寄付を申し出るものや、進んで尻
を差し出す女まで現れだした。
 かくして女の菊門を開き、邪悪なる蟲を腹から追い出す「開門党」が誕生したのだ。
 五郎兵衛は名を博尋と改め、急激に増える信者に対応するべく宗旨も急ごしらえした。曰く、

「森羅万象の凶事は須く女の腹に巣食う蟲の仕業である。蟲とは魑魅魍魎の類で、強力な霊力を持っている。蟲
は女の腹を住処とし、人間界に凶事をもたらす。時には宿主自身に害が及ぶ。蟲は「邪念」という極めて特殊な
る神通力で他の魍魎や同類の蟲と交信をする。その邪念を受け取りかつ送る場所が菊門であるのだ。開門党は菊
門より邪念を発する女を見つけ、これに巣食う蟲を転生することを活動の一義とする」

 要は女のケツを舐めたいという邪念まみれのとんでもない邪宗である。けしからん。

 季節は移ろい、雲一つない秋の夜。博尋の屋敷に朝廷からの使者があった。博尋は狼狽した。粛清されるので
はないかと。

24 :No.07 けしからん 3/4 ◇ZEALGBKPMA:07/08/26 21:15:19 ID:FkikrFkY
 だが博尋の予想は覆される。
 使者は端的に用件だけを伝えた。
 ――帝の息女が原因不明の病に侵された。
 ――当代きっての陰陽師たる博尋殿の力をお借りしたい。
 噂と言うものは恐ろしいもので、人を介するほどに尾をつけひれをつけ実態とかけ離れる。帝に奏上される頃
には、博尋は当代きっての陰陽師に成り上がっていたのだ。
 それにしても妙な話になった。博尋こと農民である五郎兵衛が帝の息女の尻の穴を舐めに行くというのだから。
 息女は心の臓を患っており、まかり間違っても尻を舐められて回復するような病ではない。もっとも、尻を舐
められて回復するような病などないのだが。しかも開門党の建前は「女の腹に巣食う蟲を菊門より取り出し、凶
事の種を処分する」ことにある。病を治すのは副次的なものとしているのだ。
 博尋は使者を説得した。
「ですから、うちは病は治せないんですよ。いやホントに。しかもご息女のお尻を舐めるなんて、このご時世じ
ゃ斬首ですよマジで」
「やー、こっちも陰陽師の先生を連れてくるよって話で動いていたんで、何とか来れませんかね」
「だから俺はさー、陰陽師とかじゃねーんだよね。つか話聞いてる? 俺斬首とかやだよ」
 などと使者と化かしあっているうちに、博尋はいつの間にか帝の御前にいた。化かされた。
 博尋は必死に開門党について説明を施したが、帝直々に願い出されては退路はない。やむなく何度も確認をし
て、退魔の儀にとりかかった。
「きえ――――――――――――――――っ!!」
 淀んだ空気を切り裂く気合一発。腰を振り振り、榊をぶるんぶるん、なんちゃって宗教家はやけっぱちの博打
にでた。
 まだ幼さがのこる息女の尻をひん剥く。息女は反射的に顔を隠した。五人衆が真言を唱える中、博尋は息女の
尻をぺちぺちと叩く。
「息女の肛門から邪念を感じる! これは蟲が巣食っているに違いないっ!」
 いつもより丹念に尻を吸い、汚れを知らぬ菊門に舌をねじ込む。だが誇り高き幼女は菊門を開こうとしない。
真っ赤になった顔を着物に埋めながら必死に肛門に力をこめる。それでも鍛え抜かれた百戦錬磨の舌先に敵うも
のはいない。幼女のアナルはあっけなく開発された。
 退魔の儀は滞りなく終わり、唖然とする帝に一礼。博尋はそそくさと屋敷に戻った。
 マジで斬首だな。博尋も五人衆もそう思った。
 帝もマジで斬首にしようと思った。

25 :No.07 けしからん 4/4 ◇ZEALGBKPMA:07/08/26 21:15:32 ID:FkikrFkY
 その十四日後。儀式とは無関係に息女は病に打ち勝った。博尋以下、真言五人衆は斬首を免れたのだ。
 これを期に開門党の噂は一気に広がった。だがどの噂も開門党を正確に伝えるものではなかった。博尋は名う
ての道士であるだの、陰陽寮が獲得に名乗りをあげているだのと、根も葉もない噂ばかりである。責任の所在が
ないだけに、噂とは厄介なものだ。
 秋も深まり、紅葉が色づき始めた晩、再び博尋の屋敷を訪ねるものがあった。
 ある武家からの使いらしいのだが、それ以上を話そうとしない。仔細は屋敷にての一点張りなのだ。息女の件
以来調子付いていた博尋は「秘密なら仕方ないよね」などとして、ホイホイと使者について行った。
 博尋が予想した通り、使者は武家からの使いだった。体面を重んじる武家は家の内情を外部に知られることを
恥とする。使者が口を閉ざしていたのもこのためである、と博尋は考えたのだ。
 通された先には、恰幅のいい男が背筋を正していた。年の頃は五十を少しばかり過ぎているだろう。部屋の四
隅には物騒な格好をした武士が固めている。
「待っておったぞ、道士どの。お主のことは帝からよおく聞いておる」
 男は邪悪な笑みを見せた。病人らしきものはこの部屋にいない。他の部屋にでもいるのだろうか。
「それでな」
 ぞくり、と博尋の背中に冷たいものが走った。男は刀を置く。
「帝はな」
 しゅるしゅると衣擦れの音を立てながら、男は着物を脱ぎだした。なぜ頬を赤らめる?
「名うての、尻を舐めるのが好きな 男 色 の 道士がいると言っておった。それを聞いてついうれしくなっ
てのう」
 男は博尋に向けてメス猫のように尻を突き出した。
「さあ、思う存分舐めてくれ。弄ってくれ。汚い尻の穴を犯してくれ」
 博尋は辺りを見回すが、四隅には屈強な男が明王の如き眼光で博尋を見据えている。
 噂というものは恐ろしいもので、人を介するほどに尾をつけひれをつけ実態とかけ離れる。責任の所在が曖昧
なだけに際限なく広がって時として意図的に歪められるのだ。
 博尋は、斬首の方がマシだったかもしんねえ。と思った。



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