【 ちょっぷとばにゃにゃ 】
◆VXDElOORQI




86 :No.20 ちょっぷとばにゃにゃ 1/2 ◇VXDElOORQI:07/07/09 00:20:37 ID:iikt04n5
「明日、遠足だねー。おやつ買いに行かなくっちゃ」
 下校時間。肩まで伸びた黒髪のポニーテールを上下に揺らしながらカナは嬉しそうに、
ユミに話しかける。周りにいる他の子供たちも皆、明日に迫った遠足の話題で持ちきりだ。
「三百円って少ないよねー。せめて四百。いや五百は買いたいなー」
 カナを含め周りは遠足の待ち遠しさから楽しい雰囲気で溢れているのに、ユミだけは、
「うーん」と唸りながら眉間に皺を寄せ、茶色がかった髪の毛をガリガリとかく。
「ミーちゃん、どしたの?」
「いや、ちょっと考え事をね」
「考え事?」
 上下に揺れていたポニーテールが、カナが首をかしげたことで左右に揺れる。
「バナナはおやつに入るのかな?」
「ベタすぎだろ」
 ガシっとカナはユミの脳天に軽くチョップをする。
「いやいやカナちゃんはこれは重要にして重大な問題ですよ」
「どこが?」
「例えばさ、あるクラスで誰かが聞くわけですよ。『先生、バナナはおやつに入りますか?』って。
そして先生はこう答えるわけ。『みんなどっちだと思う?』ああ、これが悲劇の始まりだと、誰も気
付かなかったのです」
 カナは無言でもう一度ユミの脳天にチョップをしようと腕を振り下ろした。
 そのチョップをユミは真剣白羽取りの要領で受け止める。
「おー。ミーちゃんすごい」
 ユミはそんなカナのそんな驚きを気にすることなく話を続ける。
「それでクラスはおやつ派と、おやつじゃない派に分かれるわけ。『おやつだ!』『いいや! おや
つじゃない!』そんな不毛な争いはチャイムが鳴るまで続いたの。そして放課後、悲劇は起きた! 
ジャジャーン! 一旦コマーシャルー。チャンネルはそのまま!」
「おやつなに買おうかなー」
「ジャジャーン! そして放課後の校庭で悲劇は起きた! ガキ大将にしておやつ派のリーダーのマ
サルが、成績優秀スポーツ万能糞真面目なおやつじゃない派のリーダー、カケルに因縁をつけた! 
『おうおうカケル。さっきはよくも俺っちにたて突きやがったな』カケルはそんなマサルに一言! 
『バナナはおやつじゃない』ああ、その一言が、その一言がいけなかったのです。『なんだとー!』

87 :No.20 ちょっぷとばにゃにゃ 2/2 ◇VXDElOORQI:07/07/09 00:20:51 ID:iikt04n5
ついに二人は喧嘩を始めてしまいました。二人の取り巻きたちも入り混じり、そこはまるで戦場!」
「チョコはとけるからやめたほうがいいかなー」
「そしてついに起きてはならない惨劇が! ゴンと鈍い音が校庭に響く! みんなの視線が一斉に音
がしたところに集まる。そこには頭から血を流して倒れているカケルと、カチコチで釘を打てそうな
ほど凍ったバナナを持ったマサルの姿が! ジャジャーン。続く! ――どう? どうよ? バナナ
がおやつかどうかでこんな悲劇が展開されるかも知れないんだよ?」
 ユミは腕を組み満足げな顔でうんうんと頷く。
 その頭にまたカナのチョップが降ってきた。腕を組んでいたせいで受け止めることが出来ず、チョ
ップはそのまま、ユミの頭にヒットする。
「ところで続き聞きたい?」
 ユミはチョップのことなど気にしていないようだ。
「いや、聞きたくない」
「あー、言わなくてもわかってる! わかってるから! でもちょっと待ってね。完全版は明日、ゲ
リラ的に発表するから!」
「ゲリラ的? 発表?」
「うん。明日の学習発表会で」
「明日は遠足だ」
 さらにもう一発。今度は全力のチョップがユミの頭に炸裂した。

おしまい



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