【 スリリングなお手紙 】
◆Lldj2dx3cc




12 名前:No.04 スリリングなお手紙 1/2 ◇Lldj2dx3cc[] 投稿日:07/07/01(日) 12:34:45 ID:+Xl9deu1
「クソっ! 僅差じゃねぇかよ!」
 私の男友達、達也がほえる。
「そういうのを、負け犬の遠吠えっていうんだよ」
 達也の握ったテスト用紙が震える。赤で書かれた点数は三十二点。一方、私は三十四点
だった。
「なにを偉そうに……お前だって赤点ギリなくせによ……」
 聞かなかったことにする。恥ずかしい遠吠えを聞かなかったことにしてあげるなんて、
私はなんて優しいのだろう。マザーテレサは愛情の反対は憎しみではなく無関心だと言っ
ていたから、真の愛情の裏返しはこうあってしかるべきだ。
「さてさて、ここからはお互いビジネスのお話をしましょうか」
 達也はいまいましそうに三十二点と三十四点を睨みつけるも、やがて観念するようにそ
れを放り投げた。
「わかったよ。負けだ負け、俺様の負ーけ。煮るなり焼くなり犯すなり、好きにしやがれ」
 そう、私たちは賭けをしていた。今回のテスト、点数で勝った者は敗者に対し、一つだ
け命令ができる権利を得る。でもさ、
「達也なんか犯して私になんの得があるかっての」
「そうか……お前の狙いははじめから俺の童貞だったのか! 渡さん、渡さんぞ! お前
ごときに俺様の純潔を汚させなどするものか!」
「うるさいよ童貞」
「天国のお父さんお母さん、ごめんなさい、この超ド級俺様が至らないばかりに、娘さん
がこんな下痢ビッチになってしまいました。本当に申し訳もございません」
 だめだ。もう色々とあれだけど、つっこんだら負けだ。さっさと要求を伝えるべく、私
は手紙を差し出した。
「おい唐変木、トリップしてる暇があれば黙ってこれを読め」
「ラブレターか?」
「ラブレターだ」
 達也がエラい顔で固まった。あえて形容するならば、眉間にしわの寄ったビーバー。
「冗談だからさっさと読めこのサノバビッチ」
 許しを請う子犬のようなおびえ方をしながら、サノバビッチは手紙を開いた。

13 名前:No.04 スリリングなお手紙 2/2 ◇Lldj2dx3cc[] 投稿日:07/07/01(日) 12:35:07 ID:+Xl9deu1
『 諸君へ

 私は甘いものが好きだ。
 はっきり言おう、私は甘いものが大好きだ。

 あんころもちが好きだ。桜餅が好きだ。大福が好きだ。
 なしのコンポートが好きだ。ムースが好きだ。スフレが好きだ。
 たい焼きが好きだ。シュークリームが好きだ。パリブレストが好きだ。

 がナッシュが。ジャンドゥーヤが。ベイクドショコラが。生チョコが。
 一気に。ちびちびと。お上品に。馬食の如く。
 番茶と。紅茶と。コーヒーと。

 好きなケーキをならべたお店のデザート・バイキング(一人千五百円也)など心がおどる。
 きちょうめんにデコレーションされたケーキが口の中でほどける時など絶頂すら覚える。

 よろしい、ならばバイキングだ。大バイキングを! 一心不乱の大バイキングを!!

                     少佐より』

「パクリじゃねーか! しかもパクリ方が中途半端すぎるわ!」
「途中で飽きたんだ。というわけで、こちらの意思は伝わったな?」
「しかもお前、ガナッシュのガの点が一つ多くて平仮名になってるし」
「男が細かいことは気にするな。で、伝わったか?」
 達也がしぶしぶと財布を覗く。
「しゃーねーな。今度からはお互い金額制限付けようぜ」
「その話は次のテストの前にしよう。さぁ、今はまず大バイキングを!」
「次こそは負けねーぞ!!」
 そうしてひそかな目的を達した私は、おまけのバイキングを堪能したのでした。
 やれやれ、また徹夜して勉強と文面を考えなきゃならないようだ。  <じゃんじゃん>




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