【 蝕み 】
◆wbxs8jKEoM




9 名前:No.03 蝕み 1/3 ◇wbxs8jKEoM[] 投稿日:07/07/01(日) 12:33:35 ID:+Xl9deu1
 私は今年から大学に通い始めた女子大生です。親に無理を行ってアパートで一人暮らしをさせてもらいながら
大学へ通っています。入学してから半年以上たった現在、サークル仲間もたくさんできて中々充実した日々を
過ごせていると思います。
 私は今日もいつものように学校へ行きます。授業はノートをとるでもなく、ボーっとしながら過ごしていきました。
一通り授業をこなした後、私は帰路につきました。帰り道も特に変わったことはなく、家に着きました。
私は次の日にレポートの課題を控えていることを思い出し、急遽レポートを書き上げる作業に入りました。
三時間ほどしてようやくレポートが終わり、私は風呂に入って寝ることにしました。
今日も平和な一日でした――

 次の日の朝、私は目が覚めるといつもの様に郵便受けを確認します。郵便受けといってもアパートなのでドアについてる
タイプの郵便受けです。郵便受けを覗いてみると何やら見慣れない封筒が入っているのに気がつきました。送り主の名前も
住所も書いておらず、不審な気がしましたがとりあえず中身を見てみることにしました。
「――ッ!!」
中に入っていた手紙を見た瞬間、私は戦慄しました。その手紙には昨日の夜作り終えたばかりの私のレポートがそのまま
記されていました。そして最後にこう付け足してありました。
「私ハ全テヲ見テイルゾ」

 少しの間放心していた後、大分落ち着いてきた私は状況を整理しました。これは恐らくストーカーの仕業だろう、私のパソコンは
覗かれている? いや、私の生活事態が覗かれている……?
とりあえず、私は深く考えるのを止めて学校へ行くことにしました。学校へ向いながら私は頭を冷やし、こんなの誰かのイタズラに
違いない、深く考えてもしょうがないと考えて、このことは忘れることにしました。

 昼頃になって私はある事に気が付きました。朝あんなことがあったために(あまり思い出したくありませんが…)、弁当をもって
くるのを忘れてしまったのです。しょうがないので私はヤキソバパンを買って昼飯を済ませました。
そして午後の授業も終わり、帰路につきました。
 私は家に着くと、精神的な疲れからきたのかは分かりませんが眠気に襲われ、そのまま床に就きました。

 翌日、目が覚めると私の気分は地の底へと落とされた。なぜなら郵便受けから昨日のものと全く同じ様相の封筒が顔を覗かせている
のが目に入ってしまったから。

10 名前:No.03 蝕み 2/3 ◇wbxs8jKEoM[] 投稿日:07/07/01(日) 12:33:53 ID:+Xl9deu1
 恐る恐る中身の封筒の文面を見ました。そこには、
「ヤキソバパンハ美味シカッタカ?風呂ニハ毎日ハイレ」
と短く記されていました。もうイタズラでないことは明白でした。パソコンだけではない、この部屋、そして学校での行動まで見られて
いる。私は恐怖に震えました。私は気づけば警察署へ駆け込んでいました。

 警察に一部始終を話しましたが、現段階では警察が何かアクションをとれることはない、という冷たい反応が返ってくるのみでした。
それでも私がしつこく食い下がると、うんざりしたような様子で
「じゃぁとりあえずカメラでも仕掛けて、そのあなたがいうストーカーさんの姿を映したビデオでも持ってきてください」
と言い放ってきました。

 自分ではどうしたらいいか分からない状況だったので、少し癪に障りますが先の警察官の言うとおりカメラを仕掛けてみることに
しました。早速私は専門店へと行き、取り付けてくれるサービスがあるというのでそれを頼みました。三時間ほどで作業は終わり、
家の玄関のドアが外側から映される位置にカメラを取り付けました。この位置に取り付けておけば、ストーカーが封筒を郵便受けに
入れようとするとき、どうやってもカメラから逃れられることはできません。これで犯人の姿を映して、そのビデオを
警察にもっていけばもう大丈夫、そう自分に言い聞かせると大分心持が楽になりました。

 今日も疲れていたので眠気はすぐにきました。私は思考を止めて眠りに落ちました。
目が覚めたとき郵便受けにはやはり例の封筒がありました。もうあんな気分の悪くなる文面を読む気にもなれなかったので私は
真っ先にビデオをチェックします。昨日ビデオをセットした時刻から早送りで映像を確かめていきました。
そしてそこには……誰も移っていなかったのです。なんで、どうして? だって手紙は郵便受けに入れられていたのに…。
私は気がつけば自然と手紙を封筒から取り出して読んでいました。そこには
「監視カメラナンテ無駄ダヨ」
と記されていました。私は耐え切れずに失神してしまいました。

 意識が戻り部屋を見渡した時、私はもう声も出せませんでした。部屋中に封筒が散乱していました。部屋の足場がなくなるほどの
量の封筒が部屋を埋め尽くしていました。私はもう精神を正常に保つことなんてできませんでした。
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァッ…………アハハハハハハッ…アハハッ――」


11 名前:No.03 蝕み 3/3 ◇wbxs8jKEoM[] 投稿日:07/07/01(日) 12:34:10 ID:+Xl9deu1
――翌日
彼女は学校へと向かっていた。足取りは軽く、その様はとても上機嫌なように見えた。
彼女は小さな声で呟いていた。
「やっと彼女、精神崩壊してくれたわ。これでようやく私が表に出れる」






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