36 :No.35 のろいのことば ◇p0g6M/mPCo:07/06/17 16:50:12 ID:bcoanGxO
外が静寂に包まれている、ある真夜中のことだった。その日はなかなか眠れなかったので、
暇潰しに私は自室で本を読んでいると、突如携帯の着信音が鳴り出した。時計の針は午前二時を
指しており明日は平日で学校もある。私も私の友達も小学生なので、今まで真夜中に電話を
かけた、あるいはかけられたことは一度も無かった。なので珍しいと思いながら携帯を手にとって
みると、その着信先は相手の名前が分からない非通知電話だった。
「あたしメリー。今、あなたの家のまえにいるの」
電話の相手は私より年下の、小学校低学年ぐらいの少女を思わせる声だった。電話が切れると
私は部屋の窓を開け玄関先を確かめるが、誰もいない。すると再び着信音が鳴り出した。
「あたしメリー。今、あなたの部屋のまえにいるの」
電話がブツリと途絶える。普通の人ならここで恐怖を感じるんだろう。でも私はなぜかこの時、
気分が高まっていた、というより興奮していたのかもしれない。心臓の鼓動が高まる中、
急いで部屋のドアを開けた。やはり目の前には誰もいない。そして、また電話が鳴る。
瞬間、身体が震え、背筋にただならぬ悪寒がほどばしる。私は感じてしまったのだ。見えない
恐怖というものを。その時、触れていないドアが勝手に閉まり、背後ではまるで誰かに触れられた
ように、自身の髪が一本、はらりと床に落ちる。意を決して、私は携帯のボタンを押した。
「あたし、メリー。今、あなたのうしろにいるの」
――以上が、私が体験した出来事。読んでくれた人、どうもありがとう。この話の続きなんだけど
振り向くと確かにいたの。長いブロンドヘアをリボンで結んで深紅のドレスを着飾った、
お人形のような少女が。それが、巷で広まっている都市伝説、メリーの正体よ。その後、私は彼女
の『なかま』になったわ。私のこの長い黒髪がお人形みたい、と言って気に入ったみたい。この出
来事に遭遇した他の人達は見てないしどうなったかは知らないけど、少なくとも私は今ここにいる。
ここというのはね――『あなたの目の前よ』
あハハは。幽霊やメリーちゃんは背後に立つのを好むけど、私は違うよ。だってあなたの顔が
見えないじゃない。私の目的はね、この文章によって皆の心に何かを感じてもらいたかったの。面
白いとかつまらないとか、そんな感情をね。怖いって思ってくれるのが一番うれしいんだけど、ね。
怖い話とかじゃ、大体のオチは大元となる人物が対象者を呪い殺すとかになるけど、本当の呪い
というのは、『力強い言葉』だと思うの。言葉一つで人を傷つけたり、励ましたり出来る。それが、
呪文というものだと思う。つまり私の言いたいことは、あなたが『私』を忘れるまで、私はあなたを
見守ってる、もとい呪い続けるわ。それをね――覚えていてほしいな。