【 唱えて恋の呪文 】
◆l5qwd7f.zk




33 :No.32 唱えて恋の呪文 ◇l5qwd7f.zk:07/06/17 14:58:16 ID:bcoanGxO
 私だって女の端くれ。好きな人の一人や二人。問題なのは私の、そう、素直になれないところだけ。

 みんな私の周りにいて、みんな私に好意を抱く。それが通常、それが当然。
 なのにアイツだけは違う、アイツ一人だけが違う。みんなに等しく優しくて、私に対しても等しくて。
 そこがアイツのやなところ、そこがアイツのいいところ。それがアイツが嫌いな理由、それが私が惚れた理由。
 私から告白なんてしたくない、アイツにさせたいさせてみたい

 ある日アイツと二人きり、私とアイツ二人きり。ヘラヘラ笑いを貼り付けて、ヘコヘコ私についてくる。
「もう少ししっかりしなさいよ、あなた」
「そうしたらつまらないだろう、君が」
 見透かしたような目で、子供を見守るような目で。

 私を見ないで。

 気づくと胸ぐらを掴んでて、誰にも見せたことのない表情で、噛みつきそうな勢いで、抑えてた感情が溢れそうで。
 崩れない微笑み、訪れる静寂。乱暴に手を離し、一目散に逃げ出す。
 危ない、告白するところだった。
 ありえない、私から告白なんて。

 誰でもいいからこの鼓動を止めてくれないかな。
 アイツ以外この鼓動を止める呪文を知らないけど。



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