【 俺の呪文 】
◆eGeAD.wPrw




29 :No.28 俺の呪文 ◇eGeAD.wPrw:07/06/17 11:36:05 ID:bcoanGxO
 「これほしい」と思ったときから俺に呪文がかかる。
友人に相談すると、友人は「ギャル男が着てそうな服だな」
「お前センスない」と必ず否定する。俺もそうだなと思い、
買うのを思い留まる。だが値が下がったり在庫が少なくなると、
俺は我慢できずに買ってしまう。その後落ち着いて買ったものを
見ると、本当にギャル男が着てそうなセンスの悪い服だと思った。
 俺はいつもこんな風に失敗して、お金を浪費する。
この系統の呪文は俺を束縛する。例えば買い物でも百円のプリンを
買うのに三時間悩む。「これ食べたいけど、間食になっちゃうかな」
「ご飯のときに食べればいいか?いやカロリーが…糖分が…」
店内を三時間ウロウロした結果、何も買わずに店を出る。
店を出た後で、コンビニで同じプリンをニ百円で買う。
つまり悩んだ挙句、結局買ってしまう。後悔してしまう。
 こんな優柔不断な俺だから、彼女選びにも困る。
この前の飲み会で可愛い子がいたんだが、みんながアドレスを聞く中、
俺は「可愛いけど、彼女としてどうなの?いや、この可愛さだと非処女」
などいろいろ考えた挙句、アドレスを聞かずに帰ってきた。
帰りの電車で後悔したが、コンビニにアドレスは売っていないから、
そのまま俺は諦めた。友達には「お前根性ない」と言われた。
 また同じ生活に戻る。つまらない悩みを持っては後悔する生活。
その度に友達は「ゲエ、なんだよその服」と俺のセンスを否定する。
だがそんなとき、いつも俺を否定し続ける友達が、あの飲み会の可愛い子
を紹介してくれた。友達とその子の三人で話して、楽しい会話はできなかった
ものの、まぁ最初はこんなものだろうと少しずつ距離を縮めていった。
 「付き合いたい」と思うと、俺にあの呪文がかかる。
今回は悩まなかった。告白して付き合うことになってから、友達に相談した。
「よかったね、いい子じゃん」と、いつも否定するアイツが俺を認めてくれた。
その夜落ち着いて考えてみると、彼女はアイツのほうがよかったんじゃないか、
と後悔した。翌日この気持ちを友達に報告すると、「お前バカだな」と否定された。
やっぱりコイツとはこの関係が一番いいかも。 ―了―



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