【 「呪文」という呪文 】
◆jhPQKqb8fo




20 :No.19 「呪文」という呪文 ◇jhPQKqb8fo:07/06/16 22:59:51 ID:j9Nnjijy
 おい、あんた。
 そうそう、あんただよあんた。何してんだい、こんな所でよ。まま、こんな所で会ったのも何かの縁だ。面白
ぇ話してやるよ。こんな所に来てるんだ、暇なんだろ? よしよし、そう来なくっちゃ。聞かなきゃ良かったっ
て思うかも知れねぇけどよ、っははっ!
 実はな、もうすぐ世界が終わるんだよ。
 ひへへ、どうした? 変な顔しやがって。信じられねーか? そうだろそうだろ、だがマジなんだなぁこれが。
人間が滅ぶとか地球が無くなるとかそんなちゃっちいもんじゃねえぜ。正真正銘「世界」の崩壊だぁ。なんだよ、
俺は正気だぜ。もっといいこと教えてやろうか? 実はこの世界が出来たのもついさっきなんだよ。
 あんたも考えたことあんだろ? この世界は誰かが見てる夢じゃないのかーとか、記憶を植えつけられてるだ
けで世界は三分前に出来たんじゃねーのかーとかよ。ピンポンピンポーン、大当たりだ! 俺だけじゃない、あ
んたもついさっき作られた存在なんだ。どうだい、ぞっとしない話だろ? おお、作られた、だ。あいつがある
呪文を核に作り上げたんだ、この世界をよ! 言ってみりゃネズミを回し車の上で走らせるようなもんだ。ネズ
ミは遠くまで走ってるつもりなんだが、その実一歩も動いてねえ。人間様の手のひらの上で、走っても走っても
逃げられねえんだ。でもよ、俺はネズミが羨ましかったりするんだよ。だってよ、ネズミは手のひらに気づかね
えで死ねるんだぜ? ぐへ、俺なんかよ、あいつに終わりを気づかされて、それでいて何も出来なくてよ、こう
やって喋くってる間にどんどん近づいてくるのに何も出来なくてよ、それ以前に、あんたにこうして話すためだ
けに俺が作られたって事までわかってて、そ、それでも恐怖だけはき、消えなくてよ、だからこうやってあんた
と喋っててもふる、震えが止まらねえんだよ、わかるだろ? あん、あんたも俺からこの話を聞くためだけに作
られて、もうすぐ消えちまうんだぜ? 信じてねぇわけじゃねえよな? なのになのになんであんたはそんな平
気な顔してられんだよっよよよぉおぉぉおぉぉおぉぉぉぉおぉおおおぉおぁああぁああっぁあっぁぁぁっぁあぁ
っぁぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ――――――――――


                                          ――――――――――あ。 あは、はは
はははははは、そういうことか。今あいつが教えてきやがったよ。あんた、この世界の奴じゃねえのか。あいつ
と同じ世界の奴かよ。んだ、そうならそうと早く言えよ畜生畜生ふざけんなよ、おい。あんたは終わらねぇで、
この世界が終わったあとも生き続けるってわけか。はは、でもよ、自分の世界は安泰だって思ってんだろうけど
よ、この世界と同じで、あんたの世界も案外いきなり終わるんじゃねえの? 作った奴の気まぐれでよ! 数十
年後か数年後か、もしかしたら今夜ベッドに入ってすぐかもな、ひゃははは! 祈ってるぜ、あんたの世界が今
すぐにでも終わることをよ! ひゃは、畜生、もう時間がねえじゃねぇかよひゃはははははははははははははは



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