【 回りくどい両者 】
◆XG6dfopuHc




18 :No.17 回りくどい両者 ◇XG6dfopuHc:07/06/16 21:14:00 ID:j9Nnjijy
俺は宇宙人に恋をしてしまった。そしてその宇宙人は俺の目の前で椅子に座りながら、ただただ読書にふけっている。
今日こそは今まで抱いていたこの思いを伝えるべく、遂に意を決してその宇宙人に話しかけた。
「な、長門、あ、あのさ、今度二人で映画館にでも行ってみないか?あ、長門の場合は図書館のほうがいいのかな?」
俺は心に決めていた「好き」という言葉を言い出せずに結局、告白がデートの誘いへと化けてしまった。
パタンッ、と数秒の静寂が流れた後に長門は読んでいる本を閉じ、こちらを上目遣いで覗きながらこう言い始めた。

「わい曲された表現は時として成功へとつながる機会の損失」
長門の言葉にドキリとした。俺の気持ちがすべてを見透かされていたかのような発言だった。
「大切なのは人間のみが持つ恥ずかしいという感情の放棄」
原稿用紙にして一行を超える言葉を発する事がほとんどない長門が堰を切った様に喋り始めた。
「進化した有機生命体の中でも特に人間は今後の進化方向を形成するいわゆるパイオニア」
しかし、長門の言う言葉は難解で俺は理解に苦しんだ。
「ディフェンシブな感情の存在意義はそんな人間の生み出した失敗というリスクの消失」
「・・・・すまないが、長門さ。」
「喜ぶという感情を享受したければそのリスクが生み出す恐怖を捨てて」
長門は俺の言う言葉に耳を貸さない。
「露骨な表現を使ってうまく言語化できなかったとしても率直な気持ちを伝えるか」
俺にとっては高速詠唱となんら変わりないスピードで捲し立てる。
「視覚的な自己主張を情報の伝達方法として用い本人の遺伝子情報をありのまま」
「・・・・ちょ、ちょっと待ってくれないか、長門。早口だし意味も難しいし・・。」
「掲示する事が我ら情報統合思念体の定義する意識の対話」
「・・・・お、おーい。」
「レアケースとして私という個体は特に着飾っていない様な」
ダメだ、まさにのれんに腕押し状態だ。
「場当たり的な表現方法も嫌いではない」
長門はやっと言いたい事を全て言い終わったのか、閉じていた本を再び開き読み始めた。
「あ、あのさ。俺には長門が何を言ってるのかよくわからないんだ。」
俺は困惑した様子を伝えると、長門は眼鏡ごしに見える大きな瞳をこちらに向けてこう呟いた。
「・・・・縦読み。」
「ええっ!?」



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