【 星降る夜の奇跡 】
◆SOS..QJZFc




10 :No.09 星降る夜の奇跡 ◇SOS..QJZFc:07/06/16 01:02:25 ID:j9Nnjijy
「2001年の11月に一緒にいられたらとっておきの呪文をかけてあげるね」
僕の幼馴染みの相島美香が頬を朱に染めながら話しかけてきたのは凍てつくような寒さのある日のことだった。普段から真面目なほうの美香がなぜいきなりこんなアニメのような台詞を言うのか理解出来なかったし、どう対処すればいいかも分からなかったので僕は適当に
「そうか、楽しみにしてるぞ」
と言ってお茶を濁した。美香はその返答に満足したのか早足で僕のもとを去って行った。
それから三か月ほどたった四月のある日、早くも桜が散り出したグランドで僕は美香と一緒にいた。
僕らは高校受験という関門をくぐりぬけ二人して第一志望の県立に合格したのだ。
成績がいい美香からすれば当たり前のことだが、僕の合格は模試などの成績から言えば奇跡と言っても過言では無い出来事だった。
そんなめでたい入学式であったが、高校に入ってから一つ問題が起きている。
美香が妙によそよそしくなったのだ。本人に問い詰める訳にもいかず、歯痒い思いをしていた。
美香が天文学部に入ったのさえも本人からでなく風の噂で聞いたほどだ。
そして今日、つまり2001年11月18日。僕は今携帯の画面を穴が開くほど見つめている。
『学校の屋上に今すぐ来て』
夜三時に突然、美香からメールが来たのだ。しばらくの逡巡の後、僕は家を飛び出し自転車に跨がり猛烈に漕ぎ出す。
学校までは自転車で飛ばしても20分はかかる。僕は息を弾ませながら漕ぎ続ける。
ともかく必死に漕いでやっと学校に着いた。僕は自転車を投げ校舎に入り階段を一段飛ばしに上る。
一歩また一歩と美香に近付いていく気がする。ついに最後の一段を上り切る。
一息つき屋上への扉を思いっきり開ける。
…………
息を飲んでしまうような美しい光景だった。張り詰めた夜空に次から次へと流れていく星々。その夜空の下に佇む一人の美少女……
美香は僕の姿を認めると少し泣きそうな顔をしながら近付いて来た。
「ねぇ見て、獅子座流星群だよ。」
心なしか美香は顔を赤らめている。しばらく二人で星を眺めていると美香がおもむろに僕の方に向き直る。
「今から呪文かけるから目をつむって」
僕は言われるまま目を閉じる。耳元に熱い吐息と共に美香が詠唱する呪文が流れる。

「ダイスキダヨ」

星降る夜空の下、二人は互いの感触を確かめ合うようにいつまでも抱き合っていた。



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