【 世界の果てに 】
◆syOMJVYn9M




92 :時間外No.06 世界の果てに 1/1 ◇syOMJVYn9M:07/06/11 00:39:55 ID:gBATA5Kq
 かりかりかり。
 ペンを走らせる音だけが部屋中に響く。
 僕は小説家だ。
 偉大なる小説家だ。
 誰にも僕の世界の創造の邪魔はさせない。
 かりかりかり。
 原稿用紙に文字がどんどんと描かれていく。
 僕は物語の半ばまで来たところで、ペンを置いた。
 ふぅ。
 今日は少し、働きすぎたかもしれない。
 そう思い、仮眠を取ることにする。
 ここんところ、まともな睡眠などとってはいない。
 それはそうだ。
 僕は偉大なる作家様なのだから。
 寝てる時間も、食事する時間も惜しい。
 とにかく、執筆せねば。

 彼はいつの間にか、書くという過程が、目的に変わっていた。
 本来ならば、小説は趣味で書いていただけだと言うのに。
 書くことで、新たな世界を広げる。
 広げた世界で、新たな世界を構築する。
 彼は、その追求を放棄した者。
 世界の果ては、追い求めることを放棄した者の掃き溜めなのかもしれない。



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