【 今日の次の日は昨日。昨日の次も昨日 】
◆VXDElOORQI




90 :No.22 今日の次の日は昨日。昨日の次も昨日 1/2 ◇VXDElOORQI:07/06/03 23:52:47 ID:TwCBh9Ol
 ピピピ。鳴り響く電子音が俺を意識を強引に目覚めに持っていく。
 俺は体を起こすとまず、その電子音の発生源。まぁ携帯なわけだが。それを手に取り電子音を停止させる。
 俺は着替えを済ますと、洗顔をし、朝飯を食うべく食卓へとつく。
「お兄ちゃん、おっねっぼーさーん」
「うるせぇ」
 先に朝飯を食べていたまだ小学生の妹の頭をなでなでする。
「うぅ、やめろよぉ」
 俺は妹の文句も気にせず、頭をなでなでしながら、片手でトーストを口に詰め込み、牛乳でそれを一気に胃に
流し込む。妹の言うとうり俺は寝坊したのだ。ようするに遅刻しそうだ。
「ごちそうさーん」
 最後に妹の頭を乱暴グシャグシャと撫でてから、俺は急いで玄関に向かう。
「お兄ちゃーん! あたしの誕生日プレゼント忘れないでねー!」
 靴を履いていると妹が大声でそう言ってきた。
 あー、そういえば、明日は妹の誕生日だったな。
「おう! まかしとけ!」
 威勢良く言ったはいいけど金ないな。どうしよう。

 妹の誕生日プレゼントなににしよう。
 俺は窓を外をボーと眺めながら考える。
 金ないからなぁ。なんか安くて良い物ないかな。ぬいぐるみとかどうかな。あいつ可愛いもの好きだからな。
でも高そうだよなぁ。あ、そうだ。ゲーセン。確か近所のゲーセンにでかいぬいぐるみ入ったクレーンゲームが
あったな。あれでゲットすればいいじゃん。うはー俺天才。
「あーじゃあお前。ここやってみて」
 あ、でもやっぱりちゃんとしたぬいぐるみのほうがいいかな。ああいうのってやっぱ安物だよな。三千円くら
いで良いぬいぐるみどっかにないかな。
「おい、聞いてるのか。ここやってみろ」
 気付けば教師が俺の眼前で立っていた。
「一番です」
「選択問題じゃねーよ」

91 :No.22 今日の次の日は昨日。昨日の次も昨日 2/2 ◇VXDElOORQI:07/06/03 23:53:05 ID:TwCBh9Ol
 俺はそっと玄関を開けて中の様子を浮かばう。もう夜中の十二時を回っている。流石に妹はもう寝ただろう。
だが万が一妹に見つかったら面倒だ。渡すときの驚きがなくなるからな。
 俺は急いで、買ったばかりの一メートルはあろうかという巨大な熊のぬいぐるみを俺の部屋に持っていく。
 まさか三千円でこんな巨大なぬいぐるみが買えるとは思ってもみなかったね。
 ぬいぐるみを押入れに隠し、俺はやっと一息ついた。
 俺はすぐベッドに倒れこみ、朝のアラームをセットするために携帯を取り出す。
 着信が何件も入っていた。全部母さんだ。最後の着信がちょっと前だから多分、外にいるんだろう。
 とりあえず母さんに電話してみる。
「もしもーし。あ、母さん? うん。え? 嘘だろ?」

 俺が病室についたときにはすでに妹の顔には白い布がかけられていた。
「おい、嘘だろ」
 妹のそばで母さんが泣いている。
「プレゼントはどうするんだよ。有り金全部使って買ってきたんだぞ。
 妹はなにも言わない。
「熊だよ。巨大な熊のぬいぐるみだよ。お前が好きそうなやつ買ってきたんだよ」
 俺の頬に涙が伝う。
「なんだよ。あんなに今日の誕生日楽しみにしてたじゃんかよ。こんな、こんなことになるんだったら、もう今
日なんかいらねーよ。ずっと昨日でいいよ。ずっと、ずっとお前がいる昨日でいいから。だからもう一度、俺に
声聞かせてくれよ。な? 頼む……頼むよ」
 
 ピピピ。鳴り響く電子音が俺を意識を強引に目覚めに持っていく。
 俺は体を起こすとまず、その電子音の発生源。携帯を手に取り電子音を停止させる。
 寝惚け眼で日付を確認すると昨日と同じ日付だ。それにここは病院じゃない。俺の部屋だ。そうだ妹は、妹は
どうなったんだ。
 俺は急いで一階へと降りる。食卓には妹がいた。昨日と同じように妹が朝飯を食べていた。
 そして俺を見て一言こう言った。
「お兄ちゃん、おっねっぼーさーん」

おしまい



BACK−明日の約束◆InwGZIAUcs  |  INDEXへ  |  NEXT−また、明日◆D8MoDpzBRE