【 セーラー服の襟から覗く鎖骨はエロい 】
◆VXDElOORQI




92 :No.23 セーラー服の襟から覗く鎖骨はエロい 1/3 ◇VXDElOORQI:07/05/28 00:18:40 ID:PNLIE/O+
 五月最後の土曜日、昼下がり。俺は悩んでいた。
 暑い。エアコンつけたい。でもまだ五月だし。世の中エコエコ五月蝿いし。でも俺暑いの嫌いだし。
 エアコンのリモコンを握り、スイッチを入れようかどうかかれこれ小一時間ほど思案していると、
ばーんと勢い良く扉が開く音が聞こえた。
「お、お兄ちゃん!」
 なにをそんなに慌てているのか、大きな声で俺を呼ぶ妹。
 よっぽど慌てていたのか、はぁはぁと肩で息をしている。寝癖だろうか、ショートヘアの髪の毛が
ところどころ不自然にはねている。それに今日、学校は休みだというのに制服のセーラー服を着てい
る。そのセーラー服はなぜか皺だらけでヨレヨレだ。
 おかげで襟から鎖骨が見えちゃってたりする。
「あのね! あのね!」
「ちょっと待て。そのまま動くな」
 慌てた様子で俺になにかを言おうとする妹を制して、俺はリモコンを握り締めたまま、小一時間考
えている懸案事項を頭の隅に追いやり、妹を、具体的には鎖骨の辺りを重点的に見ながら考える。
「うーむ」
 妖艶、艶っぽい、色っぽい、セクシー。どれもピンと来ない。ピコーンと来ない。そんな感じじゃ
なくて、今の妹は……うん、そうだな。端的に言えば、
「健康的にエロいな」
「え?」
 妹はなにを言っているのかわからないと言った様子で、不思議そうに小首をかしげる。
「いや、なんでもない。で、なにかようか?」
 妹は俺の意味不明な言葉にすっかり気勢をそがれてしまったようで、部屋に登場したときよりずい
ぶん落ち着いた様子で話し始めた。
「あ、うん、えっとね」
 妹はそこで一度言葉を切り、すぅと深呼吸をし、次の言葉を紡ぐ。
「私、タイムリープしちゃった」

 予想の斜め上をいく妹の告白に俺は数秒固まってしまった。
「お兄ちゃん?」
 妹が目の前で手をひらひらと上下させる。それでやっと俺は解凍された。

93 :No.23 セーラー服の襟から覗く鎖骨はエロい 2/3 ◇VXDElOORQI:07/05/28 00:18:55 ID:PNLIE/O+
「タ、タイムリープ……」
 俺は確かめるように妹が口にした言葉を繰り返す。
「う、うん」
「ってなんだ? タイムトラベルとかタイムスリップとは違うのか?」
 沈黙。
 おい、なんで今、目を逸らした。
「よくわかんない」
 すっと妹のおでこの前に手を持っていき、思いっきり中指を弾く。デコピンである。
「いたっ!」
「知ったかぶりするな」
「はぅ、ごめん。この前、そんな映画見たからつい……」
 妹は涙目でおでこを擦る。
「話は終わりだな。俺は今、重要な懸案事項を抱えてるんだ。他に用がないならどっかいけ」
 妹にそう告げると、俺はもう一度エアコンのリモコンを見つめ、つけるかどうか考える作業を再開
する。
「タイムリープしたのはホントだもん!」
 が、すぐに妹が耳元でそう叫んだので、再び懸案事項は頭の隅に追いやられる。
「わかったわかった。わかったから耳元で叫ぶな」
「じゃあ話聞いてくれる?」
 妹は俺の目を覗き込んでくる。じっとじっと見つめてくる。
 妹のどアップ。間近でみるとこいつ、可愛くなったなぁ。
 んー。
 あともうちょっとで妹の唇と俺の唇がフュージョンするところで、妹が俺を力任せに引き剥がす。
「ちょっとお兄ちゃん! なにしようとしたの!」
「接吻かな」
「バカっ!」
 ばちーんと良い音が俺の頬から鳴り響いた。

「もうこんなことしようとしない?」
「はい」

94 :No.23 セーラー服の襟から覗く鎖骨はエロい 3/3 ◇VXDElOORQI:07/05/28 00:19:10 ID:PNLIE/O+
「私の話もちゃんと聞く?」
「はい。それと出来ればカーテン閉めていただけません?」
 このクソ暑いのに、日がサンサンと降り注ぐ窓辺に正座はあんまりだと思いますよ。
「私が昨日学校から帰ってきたね。五時くらいだったかな」
 あ、無視ですか。
「それで疲れてたから、ちょっとベッドに横になったの」
 暑いなぁ。エアコンつけたいなぁ。
「あ、ところで今何時?」
 俺は壁にかけてあった時計で時間を確認する。
 そういやエアコンのリモコンどこ置いたっけ。
「午後二時です」
「二時だから、えっとその間、二十時間記憶がないの!」
 二十一時間です。リモコン発見。正座したまま手届くかな。
「これっておかしいよね? 二十時間も記憶がないなんて、タイムリープしたとしか思えないよ!」
「寝てただけだろ」
 俺はエアコンのスイッチを入れてからそう答えた。

おしまい



BACK−嫉妬◆/7C0zzoEsE  |  INDEXへ  |  NEXT−時計の針が戻るまで◆NA574TSAGA