【 眺めるモノ 】
◆r2mFKFDrlI




420 名前:【品評会作品】眺めるモノ(1/2) ◆r2mFKFDrlI 投稿日:2007/05/20(日) 22:19:31.04 ID:CsQyJHekO
暖かく、心地よい風が吹き、気持ちよさそうに草が靡いている。
しかし、私はそれを見ているだけ。
首についた革の輪と、それについた鉄の鎖が自由を阻む。

ヒトが来て、鎖を外す。ようやく外に出られる。
だがやはり、自由は無い。ヒトが乗る、重い、腹を蹴られ仕方なく走る。
これが私の仕事。
ヒトから与えられた仕事。
強制されてる仕事。
本当はやりたくない仕事。
しかし、これが私の仕事。

また一人仲間が潰れた。
ヒトは、潰れた仲間を塵のように処理した。
逃げ出したい、しかし逃げられない。
私はどうすることもできない。

仲間がヒトに抵抗した。
ヒトはいとも簡単に死を与え抵抗を無視した。
そしてヒトは私に絶望と諦念を与えた。
ヒトはいつもいらないものばかり私に与える。
だがそれを止める術は無い。

雨が降ってきた。
隙間から冷たい雨と風が入ってくる。
しかし私に与えられたのは隙間だらけの小屋に藁だけ。
ヒトは火に当たり暖かいものを食べている。
そして私はただひたすら耐えるだけ、それがヒトから与えられた試練なのだ。

421 名前:【品評会作品】眺めるモノ(2/2) ◆r2mFKFDrlI 投稿日:2007/05/20(日) 22:21:14.48 ID:CsQyJHekO
ヒトを乗せ、ヒトがたくさんいる所へきた。
見知らぬ仲間がたくさんいる。
向こうも辛い境遇のようだ。
どうにかして、お互い自由になる方法は無いのだろうか。
だがやはり、その方法は無い。
結局私は無力なのだ。
ヒトとヒトが争っている。
同族同士、何故争うのだろうか。
私には理解できない。
これからさきも理解する事はないだろう。

どうやら、私を支配している側のヒトが負けたようだ。
もしかしたら、支配から解放されるのかもしれない。
しかし、それはただのぬか喜びだった。
所詮ヒトからしたら、私はただの物なのだ。
その認識が揺るがない限り、私がヒトの支配から逃れることは無いであろう。

私は生き物。
しかしヒトは私を物として扱う。
私は生き物ではなく、物としての生涯を送らされる。
そして今日もヒトを乗せ、物としての役目が終わるのをただ待つのだ。



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