【 魔女の誕生 】
◆7wdOAb2gic




357 名前: 留学生(アラバマ州) 投稿日:2007/04/15(日) 20:45:07.83 ID:Erp6Ora50
 今日は月一回の集会の日だ。黒装束を身にまとい、箒を持って家から出た。
 竹でできた箒に跨ってみると、やはりしっくりしない。息子の位置がうまく
定まらないのだ。おまけに痔主の俺には、細い柄が食い込んできて大変つらい
ものがある。ようやく不本意ながらもチンポジを決めて、集会の開かれるいつ
もの公園に向け、星一つない暗い夜空に飛び立った。
 そう俺の職業は魔男なのだ。ちゃんと悪魔と契約を交わし、呪ったり、蛙に
したり、一通り魔術は使えるが、全然お客さんが来なくて困っている。
 隣町の魔女の所は大繁盛らしいが、こっちはさっぱりだ。俺の放った鼠や蝙蝠
の報告によると、俺は近所の人達から、魔女のコスプレをしている変な人だと思
われているらしい。
 こないだも町会長が家に来て、悪臭がすると苦情が出てるから気をつけてく
れと注意をされた。あと、町会費もずっと滞納しているから、払ってくれとも
言ってきたので、しっかり忘却の魔法をかけてお引取りを願った。
 なんで魔女はもてはやされて、魔男は白い目で見られるのか。悔しい。

358 名前: 留学生(アラバマ州) 投稿日:2007/04/15(日) 20:46:30.11 ID:Erp6Ora50
 そんなことを考えつつ、時速四十キロで空を飛び、尻の痛みにひーひー言い
ながら集合時間の十分前、公園に到着した。箒から降り、誰かいるかと周囲を
見渡すと、ブランコにちょこんと腰をかけている川本の姿が目に入った。あま
り親しくはないが、声をかけないのも不自然なので、近寄って挨拶をすること
にした。
「川本さんこんばんは」
「ああ、こんばんは……林さん」
 俺の名前を思い出すのに少し時間がかかったようだ。
「どうですか、景気のほうは?」
「相変わらずさっぱりですねぇ、私集会の後で新聞を配達に行かなきゃいけな
いので、早くしてほしいんですよ」
 川本は眼鏡の奥の細い目をしょぼつかせながらそう答えた。
「そういえば、今日も人数減ってるらしいですよ。内田さんと磯部さんが魔男
を廃業してしまったそうです」
「世智辛いですな」
 俺は初めて聞く話に驚きながらも平静を装った。
(川本の奴、冴えない顔しながらみんなの所にスパイを送り込んでるかもしれ
ないな、こいつには気をつけよう)
「最近私達の集会も、ネットでハッテン場の集いって言われてますから、ほら
あそこをご覧なさい」
 川本が顎で指し示した公園のベンチを見てみると、昭和風の男前が、背もた
れに両手を広げ、足を組みながら、妙な視線をこっちに向けていた。
「みんな来ましたね。行きましょうか」
 川本に促され、みんなのいる砂場へ向かった。


359 名前: 留学生(アラバマ州) 投稿日:2007/04/15(日) 20:47:32.92 ID:Erp6Ora50
 結局今日の集会にやって来たのは、たったの五人だった。我々の集会は別に
悪魔に生け贄を捧げるわけでもなく、缶コーヒーを飲みながら、だらだらとだ
べってるだけだ。
「どうしたら、魔女の所から客が奪えますかねぇ」
「あいつら色仕掛けだもんな」
「あーあ、転職しようかなー」
 いつものように結論の出ない話が延々と続けられた。
「私そろそろ新聞配達の時間なんで」
 川本のその言葉をきっかけにして、集会はお開きになった。
「途中まで一緒に帰りませんか」
 重い気分のまま、箒にまたがった時、川本に声をかけられた。
「いいですよ」
 特に断る理由もないので、承諾し、二人並んで夜空に舞い上がった。
 飛び始めるとすぐに川本が話しかけてきた。
「林さん呪文を知りませんか?」
「なんの?」
「あれですよ、唱えると、翌朝魔女に変身してるってやつですよ」
 俺はドキッとした。実は家に帰ったら唱えようと思っていたからだ。
「へー、そんなのあるの? こっちが教えてもらいたいな」
「林さんだったら知ってるかなと思いましてね、もしご存知になられたら、一人
だけいい思いせずに私にも教えて下さいよ」
 川本は狡そうな笑みを浮かべながら、それではまた来月と言い、自分の家の方角
へ去っていった。
「来月からは魔女の集会に出るから、もうお前とは会わないさ」
 小さくなっていく川本の後ろ姿に向かって俺は呟いた。

360 名前: 留学生(アラバマ州) 投稿日:2007/04/15(日) 20:48:32.18 ID:Erp6Ora50
 家に着くとすぐに身を浄めるため風呂に入った。慣れ親しんだ息子とも今日でお
別れかと思うと、自然に右手が激しく動いた。男として最後の一発を決め終わると
体を流して風呂をあがった。
 裸のまま寝床に入ると簡単な呪文を唱えた。これで目が覚めると魔女になってる
はずだ。明日からの魔女としての楽しい生活を想像しながら眠りについた。

――翌朝

 混濁した意識のまま、胸のあたりに違和感を覚えた。手を持っていくと、昨日ま
でまっ平らだった場所に二つの丘が隆起している。そろそろと下半身に手をやると
相棒はすでに去り、代わりに深い谷が出現していた。
 昨晩のうちに用意しておいた、パンティとブラをつけ、体の線がくっきりと出る
ピチピチの黒い衣装を身にまとって、鏡の前に立った。
「うーん、パンティはラインが出ちゃうからTバックに替えよう。ブラは着けない
ほうがいいわね、馬鹿な男達が寄ってくるから。魔女の生活って楽しそう!」

                  完



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