【 忙しい魔女 】
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39 名前: ネットカフェ難民(和歌山県) 投稿日:2007/04/14(土) 19:20:27.41 ID:q7EXwg/H0
 朝、起きると左腕が無くなっていた。

昨日まではなんとも無かった 痛みも無い、怪我を負った訳では無いらしい。 ただ、
生まれつきそうであるかのように左腕が無くなっていた。

「こんな事ができるのは魔女くらいのものだろう。」

 村はずれにはいつのまにか魔女が住み着いていた。別に何か悪さをするわけでも無
し、村人に薬(少し怪しいがよく効くらしい)を売って生活しているらしいが、いつ
から住んでいるのかは誰も知らない。 きっと、誰も気づかないうちにどこかにさって
行くのだろう。
家から出て村外れへ歩いていく・・・腕を返してもらわないと・・・・。
・・・・ずいぶん歩きにくい、腕一本無くなるだけでこんなに歩きにくいなんて初めて
知った。腕が無くなったのは初めてなんだからそりゃそうか。歩くだけならいいが、食
事をトる時にもこれだとタイヘンだな。 
  広場に通りかかった広場では近所の子供達が私を見て手を振った。いつも暇な時に
遊んでやってはいるが、今は腕を返してもらう方が先だ。 後で遊んでやるからな。軽
く声をかけて歩く。 ・・・・石が飛んできた。 もう、後で遊んでやるって言ってる
じゃないか、走って逃げた、やっぱり腕が無いとバランスが悪い。 走るのは得意だけ
どこれじゃ思いっきり走れない。


40 名前: ネットカフェ難民(和歌山県) 投稿日:2007/04/14(土) 19:20:59.46 ID:q7EXwg/H0
 魔女の住んでいるあばら屋についた。煙突から怪しい色の煙が出ている。よかったど
うやら家にいるようだ。 表から声をかけると、斜めになっている扉が開き、黒いのか
紫なのかわからないような色をしたとんがり帽子を被った老婆が私を出迎えた。魔女だ。
  「おや、なんだい やっぱり返してほしかったのかい 1本くらいいいじゃないか
」と魔女は困った顔して言った。 私は魔女より困った顔してやった。実際困っている。
  「ふう、最近忙しいから アンタの手をもらったんだけどねぇ・・・約に立たなか
ったよ・・・ほら、お入り返してあげよう。」    
そして 私は左腕を返してもらった。
 魔女は「悪かったね」と悪びれた様子も無い顔で私に言い、今日はサンマをくれた 
いつもはイワシなのに・・・ ホントに悪かったと思っているらしい。 
 私の頭をなでながら魔女は言った。 
「ああ、そうか 手じゃなくて前足だったね。そりゃ約に立つハズもないか。」
と笑い始めた。そんな問題でもないだろうに! 私は少しハラが立ったが、サンマはお
いしかった。
終わり



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