【 夢 】
◆IsKJ.H4mOw




46 名前: ◆IsKJ.H4mOw :2006/04/23(日) 23:27:36.05 ID:bOrZoocP0

映画のような人生を送りたい。何年もそう夢見ていた。
朝、決まった時間に起き、おもしろくもない授業を受け、
部活終わりにいつもの店に寄り談笑。
帰宅、風呂、夕食、オナニー、就寝。
そしてまたいつもと同じ朝を迎える。
多少の差異はあれど、似通った毎日の繰り返し。
それが暗黙の了解? 絶対不可侵のルール? いやいや、まさかね。
しかし、いくらなんでも起伏が無さ過ぎやしないか?

よく考えれば、僕にも原因があるのかもしれない。
いつだって僕は父の敷いたレールに乗ってきた。
安全第一。冒険なんてもってのほか。
僕の意見が尊重されることなんかめったにない。
もう自立させてくれたっていい頃じゃないか。
いつまでも父の書いた脚本に従うつもりは無い。
もっと、波乱万丈な脚本の主人公になるんだ。

47 名前: ◆IsKJ.H4mOw :2006/04/23(日) 23:27:57.09 ID:bOrZoocP0

何もかも人並み。
裕福でもなく貧乏でもない。
ガリ勉でもなく不良でもない。
友達だってそうだ。一人一人の個性はあるものの、
ずば抜けて目立ったやつはいない。
それに、話すことなんかまるで定型文だ。
それを言えとでも、誰かに指示されてるのかい?
まさか、そんなことを聞けるわけないよな。

まるで作り物の日常。全てが予定調和。


ああ、映画の主人公になってみたいなあ。

48 名前: ◆IsKJ.H4mOw :2006/04/23(日) 23:28:48.54 ID:bOrZoocP0

「そうか……ちょっとやりすぎたかもな。もう少し派手な演出でも入れてみるか。」
私はそう呟いて、息子の日記を閉じた。
彼は何も知らないのだ。そして、死ぬまで知ることは無いだろう。
彼の死後、ひとつの映画が発表されるということを。
そのタイトル、『或る平凡な人生』を。

彼の夢はもう、叶っているということを。



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