158 名前:永遠 ◆4LIvr4mdzE :2006/04/23(日) 19:31:01.90 ID:bZzRB71x0
輝く空。青い海。
僕は、泣いた。
『永遠』
君の手を握って、僕は歩く。
足元に注意しながら、ゆっくり、ゆっくり。
暗い部屋、正面には巨大なスクリーン。
映画館。
僕達は、真ん中の列の真ん中の席に陣取った。
にっこりと微笑む君。
僕は笑わない。そっと体を寄せて、離さない。
二人で始めてみた映画のリバイバル上映に行こうと言ったのは君だった。
最後の思い出にって小声で呟いた後、涙をためていた君。
何故か僕には別れが大変なことには思えなかった。
実感がわかないだけかもしれない。
ただ、漠然とひどいことなんだと言うことはわかった。
君が泣いていたから。
二人きりの映画館。
僕らだけの時間。
甘ったるい恋愛映画。
君にキスをした。
泣きながら抱きついてくる君を、僕はただ抱きしめた。
君の髪が、君の体が、君の鼓動が、
僕を侵食する。
君の香りに、酔いそうになる。
微かに上下する肩が、時折聞こえる押し殺したような嗚咽が、
僕を破壊する。
抱きしめる手に力を込めた。
159 名前:永遠 ◆4LIvr4mdzE :2006/04/23(日) 19:31:47.13 ID:bZzRB71x0
どうすればいいんだろう。何をすればいいんだろう。
僕には分からない。何もできない。
永遠だと思っていた時間。
君と一緒に過ごすはずだった未来。
全ては崩れ去った。
僕らに先は無い。
終わってしまった。
もう、元には戻らない。
どうしてだろう。こんなに好きなのに。
気持ちだけじゃどうにもならないのかな。
神様は残酷だ。
……どれくらい抱き合っていたんだろう。
気が付くと映画が終盤に差し掛かっていた。
ビーチではしゃぐ主人公とヒロイン。
去年の夏、君と行った海を思い出す。
目を閉じれば今もそこに見える。
輝く空。青い海。
僕は、泣いた。
どうしようもなく、哀しくて。
狂おしいくらい、愛しくて。
君から離れたくなかった。
もう二度と会えないなんて、思いたくなかった。
この映画が終わらないことを願った。
永遠に二人でいたい。
そう、永遠に……。
数分後、僕の世界は崩壊した。
別れのとき。
やっと僕にも分かった。
それは、やっぱりとってもひどいことだったんだ。