【 あいつと俺と彼女 】
◆4lTwCuEYQQ




134 名前:あいつと俺と彼女 ◆4lTwCuEYQQ :2006/04/23(日) 17:33:06.67 ID:ZG/3pDtu0
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あいつが来たのは、もう5年も前になる。
あいつは俺より頭が良く、足も早く、その他色々、俺よりも一歩先を行っていた。
あいつにだけは負けない、と猛勉強したり、朝のマラソンをしたりしても、常に俺よりも一歩先を行っていた。
だが、俺にも彼女が出来た。これであいつの一歩先を行ったかと思ったが。あいつにもほぼ同時に彼女が出来たらしい。
それに、俺と話している時も彼女は楽しそうにしてくれるが、あいつと話している時の彼女はさらに楽しそうだ。
何ヶ月も付き合っていると、さらにその傾向はひどくなってきた。
俺のときは少し落胆した雰囲気を出すが、あいつのときはものすごく嬉しそうな雰囲気を出すのだ。
顔には出さないが声の調子が多少変わるのだ。

この変な嫉妬からあいつを何度も殺そうとした事があるが。
そうなったらあいつは絶対無傷で俺を殺せるだろう、といった確信がある。
最近あいつは俺を邪魔に思っているようだ。
そう思うのも当然だろう。
あいつのやることなすこと俺が邪魔しているのだから。

135 名前:あいつと俺と彼女 ◆4lTwCuEYQQ :2006/04/23(日) 17:33:28.77 ID:ZG/3pDtu0
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前の日記から5ヶ月が過ぎた。
俺はそろそろ消えるだろうという事がなんとなく分かる。
それを自覚してから色々な感覚がクリアになっている。
あいつもそれを分かっているのか、最近俺の前に出てこない。
彼女は悲しそうであり、それでいて嬉しそうな雰囲気だ。
そう喜ばれるのも悲しいが、悪くないかなとも思う。
あいつに何か書き残してやりたいが、何も思いつく事が無い。
彼女にも何か書き残してやりたいが、何も思いつく事が無い。

あいつには二つあった。「俺の研究を完成させてくれ。彼女と幸せに。それだけを頼む。」
これだけしかないというのも悲しいな。

これを書き終わったら俺はいなくなるのだろう。
これから俺は自分のやっている事なのに映画のスクリーン越しに見る観客の気分のまま生きていくのだろう。
それも楽だが一度きりの人生思い切り楽しみたかったなと思う。
一度きりの人生がこんな異常な人生だった事は、幸か不幸か。その判断はあいつに任せよう。
さようなら俺。

fin



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