【 悪魔の契約 】
◆K0pP32gnP6




316 名前:【品評会】悪魔の契約 1/4  ◆K0pP32gnP6 投稿日:2007/03/04(日) 17:06:36.81 ID:9oZnApJj0
 金曜日の午後八時。自室。
 俺の目の前には幼馴染が扇情的な格好――制服のブレザーとスカートだけを脱いだ状態
でベッドに腰掛けている。
 俺はそれを椅子に座って黙って眺めている。
「ねえ、しよ?」
 これぞエロゲ、という場面。
 俺は理性の人とか呼ばれる存在では無いし、週に五日はエロゲをやる人種だ。
 しかし、今この状況に流されるわけにはいかない。
 俺の背後には悪魔がいるから。

            ◆

 前日。木曜日の午前二時。
 俺はぐっすり寝ていた。奴が夢に出てくるまでは。
『お前の願いを叶えてあげよう』
 二次元の女性に囲まれる夢に唐突に現われた痩せ型長身の不気味な眼鏡男。
 逃げていく二次元女性達。
「あー……待ってよー」
 俺は引きとめるが彼女達は走り去っていく。
『どうせあいつ等は夢の中の存在だ。諦めろ』
「夢なのは自覚済みだ。それを踏まえて楽しんでたんだぞ? ていうかお前は誰だよ」
 眼鏡男は俺の鼻先にぼんやりと青い蛍光を放つ人差し指を向け、言う。
『とりあえず、起きろ』

 目が覚めた。暗い部屋。
 途中までは一ヶ月ぶりに良い感じの夢を見ていたのに。途中で目が覚めた。我が夢な
がら不快な登場人物が出てきたものだ、と思っていると声がした。
『お、起きたな。お前の願い叶えてあげよう』
 なんとなく聞き覚えのある、声。その音源の方向を見ると、いた。眼鏡の男。
「ど、泥棒!」

319 名前:【品評会】悪魔の契約 2/4  ◆K0pP32gnP6 投稿日:2007/03/04(日) 17:07:33.45 ID:9oZnApJj0
 携帯を手にする俺を眺めながら、眼鏡男は落ちついた様子で言った。
『別に警察を読んでも良いけどな。お前以外には俺の姿は網膜に映らないし、声も聞こ
えない。頭のおかしい奴だと思われたくなければやめとけ』
 そう言って人差し指を携帯に向ける。
 その指先が青い光を放つとともに、携帯の電源が切れた。あいつは、何者だ?
 俺の心を見透かしたように眼鏡男は言う。ていうか、良く見たら床に足が着いてない。
『私は悪魔だよ』

            ◇

 金曜日、午後八時三十分。膠着状態。
 未だに幼馴染はあれから三十分、同じ格好のまま俺のベッドに座ってこっちを見ている。
『どうする? やるのか? やらないのか?』
 悪魔は半分笑いながらそう言う。
 たしかにおかしいとは思ってたんだよ。この幼馴染が急に告白してきたと思ったらその
日のうちに、えっちしよ? と言った。
 全ては悪魔の策略だったのだろう。この誘惑に負けるわけには行かない。

            ◆

 木曜日、午前二時五分。
 悪魔は淡々と話を続けた。
『私は悪魔だ。まあ、悪魔と言っても悪い存在ではない。三日限りの契約だ。これが終生
契約とかになると、人間を堕落させる結果になる事が多いけど。そこから私達は悪魔と呼
ばれるようになったそうだ』
 そこまで言うと、悪魔は息継ぎ。さらに続ける。
『さて、本題だ。君にはある事を三日間だけ我慢してもらう。それがクリアできれば、君
の願いを一つ叶えてあげよう。どうだね? 我慢するのはそんなに難しい事じゃない』
 悪魔のマシンガントークに、俺は冷静さを取り戻していた。
「で、何を我慢すればいいんだ?」

321 名前:【品評会】悪魔の契約 3/4  ◆K0pP32gnP6 投稿日:2007/03/04(日) 17:16:33.45 ID:9oZnApJj0
『おお、乗り気だね。で、契約する? しない?』
 悪魔は微笑みながら答えた。いや、答えになってないが。
「だから、何を我慢すればいいんだよ?」
『やっぱり言わなくてはならないか』
 悪魔は溜息をつく。
『禁欲。童貞を守ってもらう。童貞、というか白いのを出す事自体を我慢してもらおうか』
「そんな事で良いのか?」
 それで願いが叶うなら、安いものだろう。
 俺にも叶えたい事くらいはある。
『はい、契約成立だ。ちなみに我慢できなかったら魂を頂く』 

            ◇

 金曜日。午後八時四十分
 このまま己の欲望に身をまかせて死ぬのも、素敵な死に方ではないだろうか?
 いや、それは無い。しかし今身を任せなければ、今後この幼馴染とこんな状況になる事
は少なくとも、しばらくは無い。
『やるのか? 今日と明日さえ我慢すれば、願いが叶うんだぞ? 私は別に構わないが』
 全て悪魔の思い通り、というわけか。俺の魂が目当て、って事だ。
 それなら、意地でも我慢してやる。
 ええい、もうしばらくこの幼馴染とはお別れだ。

 金曜日。午後八時四十五分。
 俺は、パソコンの電源を切った。画面に映っていた扇情的な幼馴染は消えた。
 このエロゲ、明日返さなきゃならないんだよなぁ。
 もういいや。寝る。
 俺はベットに横たわり、電気を消した


323 名前:【品評会】悪魔の契約 4/4  ◆K0pP32gnP6 投稿日:2007/03/04(日) 17:17:44.70 ID:9oZnApJj0
 土曜日。午前三時。
 夢にはさっきの二次元幼馴染が出てきた。やはり扇情的。じわりじわりと俺に歩み寄
ってくる。夢の中だからな。
 このまま行けばエロい事が起こるのだろう。
 きっとリアルの俺は……。
 やばい、そう思った俺は意識的に目を覚ました。
 悪魔が天井に立っていて、俺を見下ろしながら言った。
『ほう、起きたか。意外にもお前が理性的だから夢魔を使ってみたのだが』
 夢精狙い、ってか。
『大正解』 
 俺の心を読み、悪魔は答えた。
 結局、俺は朝まで、というか日曜日まで起き続ける事になった。


 日曜日。午前零時五分
『おめでとう。君は私との契約を守った。夢を叶えてあげよう』
 悪魔は感心したような声で言う。
 もちろん、俺の願いは決まっている。
「例の幼馴染と……」

 ≪終わり≫



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