【 守るべきもの 】
◆J3NxDWiXG




36 名前:守るべきもの1/2 ◆J3NxDWiXG. 投稿日:2007/03/03(土) 23:02:35.38 ID:yWJKO80G0
お題 米粒 屋根瓦 守る

「守るものを持ちなさい」
それは父が言った言葉だった。
現在私にとって守るものと言えばこの家くらいだ。
母と二人っきりで暮らすこの家
しかしそう言い切るにはちょっと語弊がある。
この家は父が作りあげた家。父そのものでもあるからだ。
父は身の回りの人やもの全てに愛情を注ぐ人だった。
この家も庭の植木から屋根の瓦まで
たいていの場所に父の手が入っている。
父は大工に頼むまでもない簡単な家の修理なら自分でやった
雨どいが壊れれば修理し、棚がなければ材木を買ってきて作った。
壊れたものは直せばいい、あるものを大事にせにゃいかん
それが父の考えだった。
食べ物ならば米粒一つ残すこともしなかった。
御飯茶碗にこびりついたわずかなごはん粒も
熱々のお茶注ぎ、沢庵でこすりとって食べれば
残さずおいしく食べられる。
そう教えてくれた。

38 名前:守るべきもの2/2 ◆J3NxDWiXG. 投稿日:2007/03/03(土) 23:03:59.86 ID:yWJKO80G0
私は今でもごはんを食べる時はそれを欠かさずやる。
母は沢庵が苦手なので私が食べていると
「そんなのよく食べるわねえ」と言うが
私が父の真似をしてることが嬉しそうだ。
私は遅めの昼食を沢庵茶でしめ、午後の用事に取り掛かることにした。
今日は屋根の修理をしなければならない。
屋根の瓦がずれているので放っておくと雨漏りになってしまう。
倉庫の奥から脚立を取り出し、屋根の近くに置いた。
屋根の上に上るのは初めてだ。
生前なら父がやってくれたことだがこれからは自分がやらなければいけない
脚立に足をかけて上っていく、
家全体が見え
空が少し近くなる

「これからは私が守っていくよ」

私は空に向かってそうつぶやいた。



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