86 ：No.25 剣術フェミニスト (1/3) ◇/7C0zzoEsE：07/02/25 20:33:13 ID:tgfoqExp
年の流れごとに人間の嗜好は変化する。
ある芸能人がイベントの際、帯刀してきたことから始まった。
鈍く重く光を放ち、妖しく魅せる日本刀は、
性別を問わず色気を感じさせる。そう豪語した結果。
次の日からは刀匠に注文が殺到することになった。
犯罪率が高くなる一方の日本、かつての治安大国の面影も無かった。
政府は苦肉の策として、銃刀法を改正するに至った。いわゆる刃物の所持を認める。
賛否両論なこの案は、とりあえず試しにということで制定されたが、
予想以上に犯罪率は低下していった。
一般人が護衛の為にナイフ等を持てるという長所が、
犯罪の抑制力となったのだった。
それに伴い正当防衛の見直しも進められていった。
しかし、若い女性達には一つ深刻な問題があった。
あのゴツゴツしたナイフを懐にしまう女の子など可愛くない、
そういった固定観念がついてしまっているのである。
そこに今日の新ファッションが現われ、
若者達が食いつかない筈も無かった。
街中には、刀を腰に着けた人たちで溢れて、
日本刀の存在は一種の装飾品と変化した。
そして、ナイフよりもずっと威圧感があるためか、
治安さらにも増して回復していった。
日本刀店が国内で誕生し、デザインが重視され出す。
文化の後退を危ぶむ声も挙がるが、
それ以上に日本独自の文化を尊重していることに国民は満足していた。
流行語大賞は切捨御免に決定した。
87 ：No.25 剣術フェミニスト (2/3) ◇/7C0zzoEsE：07/02/25 20:33:38 ID:tgfoqExp
ある日都内で、ある犯罪者が誕生した。通称、切捨てジャック。
非力な女性を得物に狙い、彼女らの刀を折り、乱暴を働くといった次第であった。
警官を総動員して、なんとか逮捕まで至ったが、
この件をきっかけに国民は当然な事に気がついた。
帯刀では女性の護衛道具として不十分だと。
使いこなせる程の力も技術も無く、相手が男性の場合
斬り合いになって敵うわけも無い。
女性の不平等を唱えた団体、フェミニス党の功労によって、
法律はより画期的なアイデアへと変化した。
帯刀を女性のみの特権として認められたのである。
男性には昔懐かし廃刀令が命じられた。
これにて一件落着、と思いきや日本は次第に変化していく。
正当防衛の域が広がりすぎたのである。
以前の過剰防衛とほぼ変わりないと言ってもいい。
例をあげれば、夫婦間のトラブルで妻が刀を用いても良い。
つまり、洗濯物たたんでねと頼んで、夫に面倒だと断られれば、
サックリ斬っても構わないといった物である。
傷害罪の適用はまず見られなくなり、
殺人罪まで犯してようやくといった物である。
当然、男性衆が現状に納得できるはずも無く、
法律の見直しを求めている人は国民調査で過半数を超えた。
しかし、戦前の男達がやって来たことと比べれば何でも無い。
と、女性議員が日本刀を片手に述べることで、なかなか改正までには踏み切らなかった。
彼女等は着実に力を伸ばしてきていた。
そうこうしている間に、メディアでカリスマ女性と呼ばれる人たちの話が流れた。
女性が優遇される大国日本。そんな言葉に惑わされて、洗脳される女性が溢れてき始めた。
ここに、男性対女性の形が成り立ったのである。
88 ：No.25 剣術フェミニスト (3/3) ◇/7C0zzoEsE：07/02/25 20:34:03 ID:tgfoqExp
翌年の女性首相の誕生から、女性優位の日本へと完全に変化した。
日本刀を腰に差して、どことなく溢れる力や自信が彼女達を支えた。
言うことを聞かざるを得ない男達と、彼らをいいなりにする女性達。
完全な女尊男卑が生まれた頃、男達は日本に限界を感じていた。
一人、また一人と諸外国に安らぎを求めて移住し始めた。
至極冷静にこの状況を見ていた少数の女性も日本を離れ、
日本国外での日本人カップルの数の方が増えてきた頃。
気がつけば日本に残る男性は希少になっていた。
いくら女性だらけとはいえ、斬られる為に日本に残るような奇特なマゾヒストは少ない。
また、この女性優位に慣れきった女性達が他の国で生活できる筈も無い。
日本での出生率は限りなくゼロに近づいていった。
爆発少子化の為に、最低まで落ちきった日本の人口。
最後まで法律を変えようとしなかった女性首相や議員達は、
これが尊ぶべき女性の進出した社会、女性の理想郷だ、と発狂して、
きらびやかに光る名刀で切腹した。
かくいう訳で、がらんどうとなった日本は、
元の姿へ回復する前に同盟国アメリカに占領されていった。
その様を眺める日本刀が思うのは、侍達が闊歩した昔か。
何事もほどほどが一番ということ。
日本は滅んだ。
(了)