6 ：何故殺した （1/3） ◇K/2/1OIt4c：07/02/24 01:22:16 ID:65zBr7xI
たぶんストレスでしょうね。ほら、あそこの家って由緒あるじゃない。息子さんもいろ
いろ大変だったみたい。早く嫁を貰えとか、働けとか、散々言われてたみたいよ。かわい
そうにねぇ。
お父さんがやっぱり厳しかったみたい。そんな家系だったらしいわね。というか、家系
なんか気にする家はみんなそうね、きっと。
でも悲惨よねぇ。家中血だらけって聞いたわ。怖いわぁ。
また日本刀なんか置いとくからいけないのよね。大きな屋敷だからって掛け軸とか壷と
か、骨董品なんか置いたってしょうがないのにねぇ。
一番に殺されたのは次男だったかしら。たまたま近くにいたからって聞いたわ。あぁ、
かわいそうにねぇ。首を斬られてお腹を刺されて。考えるだけで気持ち悪くなるわ。
結局、一家皆殺しでしょ。お父さんもお母さんもすぐに殺されちゃったみたい。お母さ
んなんて、その三〇分前に八百屋さんで会ったわ。まさかそんなことになるなんてねぇ。
7 ：何故殺した （2/3） ◇K/2/1OIt4c：07/02/24 01:22:43 ID:65zBr7xI
呪いじゃ。あの男は馬鹿にしとった。
この土地は昔っから過疎じゃった。人はあまりおらんかった。それでも村人は、狭い土
地を苦労して耕して、食っておった。それで満足じゃった。
ある日、そこに落ち武者が来たんじゃ。十数人じゃった。村には若い男がほとんどおら
んかったからのぉ。村は落ち武者に燃やされちまった。
そのとき、若い女子が犯された。藁小屋じゃった。すぐそばに、いいなづけじゃった男
が死んでおった。女子は誓った。こいつらを呪い殺してやる、と。
犯された女子は、誰もいなくなった小屋で自害した。いいなづけの腹に刺さっていた小
刀で腹を割って。
それ以来、この村にはその刀を代代受け継ぐ家が必要になったんじゃ。その小屋のあっ
た場所に建つ家じゃ。
大きな家が建った。もちろん、この話を知っていた初代当主は、刀を大切に保管したそ
うじゃ。わしが小さい頃の当主も、その刀を大事に祀った。毎日お供え物を忘れんかった。
それに比べ、死んだ当主は全然聞く耳を持たんかった。とりあえず床の間に飾っておく
か。そんな程度の扱いじゃった。
呪いじゃ。女子の呪いじゃ。
女子が息子に憑いたのじゃ。
刀を粗末に扱った一家を滅ぼしたのじゃ。
8 ：何故殺した （3/3） ◇K/2/1OIt4c：07/02/24 01:23:03 ID:65zBr7xI
別に殺した動機なんてないですよ。まぁ、どうしても必要なのでしたら、適当にストレ
スとか呪いとか書いておいてください。かまいませんから。
そもそも、今の僕にそれを聞くことが間違ってますよ。あのときの僕が何を考えてたか
なんて、今の僕にわかるわけないじゃないですか。でもまぁ、一応考えてみますけど、期
待しないでくださいよ。
刀を見た、振り向くと弟がいた、斬った。そんな感じですよ。それが事実です。何かを
考えて斬るなんて、別に一般常識じゃないでしょう。何も考えないで斬るのが普通じゃな
いでしょうか。僕はそう思いますけど。
とにかく、僕が言える真実は、僕が彼らを殺したこと。それだけです。それをした理由
なんて知りませんよ。あなただってなんでもかんでも理由をつけて行動しないでしょうに。
完